レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/11/03
- 登録日時
- 2022/11/11 00:30
- 更新日時
- 2023/06/07 15:25
- 管理番号
- 茨城-2020-089
- 質問
-
解決
ふじみ野市立上福岡歴史民俗資料館に藤田東湖が書き写した「神道無念流道場壁書」が残されています。
別紙の東湖の添え書きに「猛卿金子氏に請われて その教場に掲げるために書き写した」と書かれているようです。
そこで「猛卿金子氏」とは誰で「その教場」とは何処なのか知りたいです。
- 回答
-
次のとおり調査しました。
1 猛卿金子氏についての資料を確認
当館データベース『ジャパンナレッジ』で「猛卿 金子」で検索したところ,『日本人名大事典 2』で「金子豊水」が該当しました。
(1)『日本人名大事典 2』(平凡社 1979)
p.138 「カネコホースイ 金子豊水」の項に,「徳川末期,水戸の剣客,書家。名は直通,字は猛卿,通稱健四郎。」と記されています。
2 教場についての資料を確認
(2)『日本画家大辞典』(沢田 章/編 啓成社 1913)※館内閲覧資料
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/945967/276 【国会図書館デジタルコレクション・インターネット公開】
p.414 「ホウス井 金子豊水」の項に,人となりや略歴の記述があります。「濱松に劍道指南の道場を開きしが」という記述がありますが道場名については記載がありません。
※下記資料にも,同じ内容が収録されています。
・『日本人物情報大系 62』(芳賀 登/〔ほか〕編集 皓星社 2001)
日本画家大辞典 p.411-575 p.549 「ホウス井 金子豊水」
(3)『渡邉崋山研究』(小沢 耕一/著 日本図書センター 1998)
Ⅱ 崋山の画論と画人 七.崋山をめぐる画人たち p.128-147
p.136 金子豊水 「水戸の武田耕雲斎の肝入で天保八年(一八三七)小石川に百練館という道場を開いた。」という記述があります。
(4)『新選組隊士列伝 続』(新人物往来社/編 新人物往来社 1974)
伊東甲子太郎 p.37-63
p.43-48に「北辰一刀流」の項があり,甲子太郎の剣の師の金子健四郎について説明されています。
p.44 「彼が小石川船河原橋に百練館という道場を開いたのは(中略)水戸藩士藤田東湖と武田彦九郎(正生,後に伊賀守を称し,耕雲斎と号した)の後援によるものであった。」という記述があります。
p.45 「水戸に在るときは弘道館と桜小路の居宅に設けた道場」という記述がありますが,名称については記載がありません。
(5)『茨城史林 第41号』(茨城地方史研究会/編集 筑波書林 2017)※貸出用図書あり
「剣客・金子健四郎について」(あさくら ゆう)p.72-86
金子健四郎の生涯の過程と後継について説明されています。
p.76 「「剣客」では天保八年(一八三七)に(中略)館主として招聘したとするが,田原藩雇の身分から,百練館の館主とするには無理があるようだ。」という記述があり,根拠が挙げられています。
p.80 「『水府系纂』八六巻によると,まず天保一一年(一八四〇)八月一三日に与力五〇石を与えられ,(中略)この藩士登用が剣術道場百練館の創設に繋がる。」 という記述があり,あわせて水戸上市新屋敷の拝領屋敷についても説明されていますが,道場の名称については記載がありません。
(6)『趣味の明治維新史 第1巻 金子健四郎と其時代』(弘道閣 〔1927〕)
p.1-2 「序」に,「安藤德器君其の曾祖父金子健四郎先生の傳を著はさる。(中略)明晰な理解と縝密なる思慮とを以てし且つ其の自然に出づる景慕の情に驅られて先生を傳したものが本書である。」と資料について説明されています。
第一 渡邊崋山と決別の事。健四郎水戸烈公に仕ふる事。p.1-22
p.17 「武田耕雲齊は乃ち小石川船河原橋に道場を開かしめた。水戸屋敷の手詰置。百練館と稱しましたが」という記述があります。
3 桜小路の居宅に設けた道場についての資料を確認
(7)『水戸の町名』(江原 忠昭/編集 水戸市役所 1985)※貸出用図書あり
p.168-169 新屋敷(梅小路・松小路・楓小路・柳小路・花小路・桜小路・桃小路・桐小路・柏小路・常磐小路)
金子健四郎やその道場についての記述はありません。
- 回答プロセス
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DBジャパンナレッジで検索。
グーグルブックスで「猛卿」「金子氏」「金子健四郎」を検索。
当館OPACで「金子健四郎」を検索。
〈その他確認資料〉
・『角川日本姓氏歴史人物大辞典 23』(角川書店 1991)
・『角川日本姓氏歴史人物大辞典 26』(角川書店 1997)
・『茨城の古書画人名事典』(大内 健二/著 暁印書館 1998)
・『常総古今の学と術と人』(大内 地山/著 水戸学研究会 1976)
・『大辞典 第6巻』(平凡社 1934)
・『日本名画家伝 物故篇』(佐藤 靄子/著 青蛙房 1967)
・『茨城史林 第42号』(茨城地方史研究会/編集 筑波書林 2018)
・『三百藩家臣人名事典 2』(家臣人名事典編纂委員会/編 新人物往来社 1988)
・『三百藩家臣人名事典 3』(家臣人名事典編纂委員会/編 新人物往来社 1988)
・『茨城史林 第43号』(茨城地方史研究会/編集 茨城地方史研究会 2019)
- 事前調査事項
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水戸で金子氏といえば 先ずは 金子孫二郎が思い浮かびます。
もう少し調べてみると 同時代の神道無念流の剣術家で金子健四郎という人がいたようです。
「猛卿」がもし「号」とか「字」の類であるならば調べるすべもあるかと思いました。
ここでいう「教場」が剣道場なのか 水戸でいう郷校なのかも分かるかもしれません。
- NDC
- 参考資料
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日本人名大事典 2. 平凡社, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005945606-00 , ISBN 4582122000 -
沢田章 編 , 沢田, 章, 1876-1934. 日本画家大辞典. 啓成社, 1913.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000561933-00 -
芳賀 登/[ほか]編集 , 芳賀‖登. 日本人物情報大系 26. 皓星社, 2000.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005568691-00 , ISBN 4774402745 -
小澤耕一著 , 小沢, 耕一. 渡邉崋山研究 : 三河田原藩の周辺と画論を中心に. 日本図書センター, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007111200-00 , ISBN 4820523759 -
新人物往来社 編 , 新人物往来社. 新選組隊士列伝 続. 新人物往来社, 1974.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001221141-00 -
茨城地方史研究会/編集 , 茨城地方史研究会 , 茨城地方史研究会 , 久信田 喜一 , 久信田 喜一 , 斎藤 茂 , 近江 礼子 , あさくら ゆう , 笹岡 明 , 栃木 敏男 , 坂入 正夫 , 久信田 喜一. 茨城史林 第41号. 筑波書林, 2017-06., ISSN 09137238
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I076336934-00 -
安藤‖徳器. 趣味の明治維新史 1. 弘道閣, 1927.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I023587705-00
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日本人名大事典 2. 平凡社, 1979.
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土,人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000323766