レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/07/03
- 登録日時
- 2020/09/16 00:30
- 更新日時
- 2020/09/16 00:30
- 管理番号
- 6001044971
- 質問
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解決
「てふ」と書いてなぜ「ちょう」と読むのか知りたい。
- 回答
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調査した結果、もともと「てふ」は「ちょう」とは読まなかったことが判明した。
調査した資料に書かれていたことをまとめると次の通り。
・昆虫の蝶は、昔は和語の「カハヒラコ」と呼称されていたが、平安時代、外来語の呼称「tiep」に取って代わられた。
この発音「tiep」をそのまま文字に書き写したものが「てふ」だった。
・この発音「tiep」は、時代を下るにつれて変化していく。
具体的には、平安中期以降から鎌倉時代にかけて「てう」に変化し、
江戸時代までには「ちょお」と発音するようになった。
・ところが「てふ」という表記だけは変わらずに「てふ」のまま残り続けた。
このずれのために、「てふ」と書いて「ちょう」と読むようになった。
〇調査した資料
・『国語科図説:図説全集』(石井 庄司/編著 岩崎書店 1960)
p.238-239「歴史的かなづかいは、われわれ現代人の発音を写し書くには、まことに不便なものであったが、しかし、その表記法は、もともとから不便であったのではなく、かつては、発音どおりに書いたものであった」
「ところが、文字はそのままの形で残っても、口頭の発音は時とともに時代とともに変化していく。そして、そのずれが、てふてふ(チョーチョー)となり、けふ(キョー)となってしまったのである」
・『例解古語辞典』(佐伯 梅友/[ほか]編著 三省堂 1985.1)
p.571「てふ」の項目に、「和語「カハヒラコ」にかわって、平安時代、古代中国語のtiepを語源とする外来語が定着したもの」とある。
・『古典基礎語辞典』(大野 晋/編 角川学芸出版 2011.10)
p.817-818「てふ」の項目に、「テフ(蝶)は漢語だが、外来語そのままの表記が古くから定着している」とある。
・『金田一春彦・日本語セミナー5 日本語のあゆみ』(金田一 春彦/著 筑摩書房 1983.8)
p.46-47「平安時代の発音は、根本的には歴史的な仮名遣いを、あのとおり読む発音だったと言ってよい」
・『金田一京助全集 第4巻 国語学』(金田一 京助/[著] 三省堂 1992.10)
p.234-235「今日チョーチョー(蝶々)と云っているのは平安時代はテフテフ(tefu-tefu)と発音されていた。それ故、当時の人は「てふてふ」と綴ったのである」
「平安中期以後、語中・語尾のf音がw音になってきた。即ち語中・語尾のはひふへほは、実際はワヰウヱヲと発音された。鎌倉時代から更にワイウエヲとなるから、てふてふ・けふ・ゑふが、夫々てうてう(teu-teu)けう(keu)えう(eu)の発音となって戦国末に及んだ。それが、江戸時代へかけて、すべてのeuという結語は、みなyooとなった即ちteu-teuがtyoo-tyooになり、keuがkyooになり、euがyooとなって今日の発音が生じた」
[事例作成日:2020年7月15日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本語 (810 10版)
- 参考資料
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- 国語科図説 石井/庄司∥編著 岩崎書店 1960 (p.338-339)
- 例解古語辞典 第2版 佐伯/梅友∥[ほか]編著 三省堂 1985.1 (p.571)
- 古典基礎語辞典 大野/晋∥編 角川学芸出版 2011.10 (p.817-818)
- 金田一春彦・日本語セミナー 5 金田一/春彦∥著 筑摩書房 1983.8 (p.46-47)
- 金田一京助全集 第4巻 金田一/京助∥[著] 三省堂 1992.10 (p.234-235)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000287179