レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/05/08
- 登録日時
- 2020/09/16 00:30
- 更新日時
- 2020/09/16 00:30
- 管理番号
- 6001045129
- 質問
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解決
発令から日本書紀の編纂まで70年以上も経て、「改新の詔」に修飾が加えられた理由を知りたい。
- 回答
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改新の詔については、大化改新そのものの否定説とも関連して記載されており、『日本書紀』の編者による修飾や造作については、定説といったものはなく、現在でも論争が続いています。
参考となる資料をご紹介します。
以下の2冊の資料が比較的明確に記載していました。
・『大化改新を考える(岩波新書 新赤版)』(吉村武彦/著 岩波書店 2018.10)
「一 『日本書紀』が描く「大化改新」とは」(p.21-84)に「3 「改新詔」を復元する」(p.49-72)の節があり、改新詔の構造について考察しています。その中の「改新詔の潤色とは その一」「同 その二」では、改新詔の修飾について特に触れており、その目的について「当時の制度を後代の大宝令で到達した基準のものとして書き換えることが、本質的な理由であったことが判明する」(p.58)と書かれています。また第3節最後の小見出し「原詔の想定と潤色の意図」では、原詔にある「評」「代」が、『書紀』編纂時の日本が蕃国(朝貢国)として扱っていた半島諸国の面積の単位名称で、小帝国と自認する日本が使うに好ましくないために『書紀』編纂当時に避けた、との推察を記載しています(p.71-72)。
著者は、次の資料でも同じことを書いています(p.26)。
・吉村武彦「大宝田令の復元と『日本書紀』」『明治大学人文科学研究所紀要』第80号(明治大学人文科学研究所 2017.3)。インターネットから閲覧可能です。(2020/7/17現在)
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/18844/1/jinbunkagakukiyo_80_%2817%29.pdf
・北康宏「改新詔文飾論と改新否定論の課題」『日本史研究』第662号(日本史研究会 2017.10)。
本号の特集は「大化改新否定論をめぐって」で、以下の4件の論文が掲載されており、改新詔の修飾問題も検証しながら、大化改新否定論を考察しています。
・毛利憲一「大化改新論と改新詔:造籍の問題を中心に」(p.3-28)
・北康宏「改新詔文飾論と改新否定論の課題 : 大化改新詔と甲子の宣をめぐる史学史」(p.29-62)
・石上英一「「大化改新」非実在説の提示と古代社会構造論の展開」(p.63-81)
・中村聡「日本史研究古代史部会と「改新否定論」」(p.82-96)
このなかで北氏は、「『日本書紀』だけが政治的意図や作為に満ちた古代天皇制国家の由来」を説明する(p.45)ものではなく、変更された法令を「あらためて史書編纂に再利用する場合には、後次的変更が過去に遡及されてしまうという問題が発生する」(p.46)と述べ、個別の法令や詔勅を格や式のような単行法令集にまとめる場合の整理上、編集上の理由に言及しています。
その他、以下の資料も参考になると思われます。
・中田興吉「改新詔と大化期の改革」『大阪学院大学人文自然論叢』第69・70号(大阪学院大学人文自然学会 2015)(2020/7/17現在)
https://ogu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=240&item_no=1&page_id=39&block_id=56
・『偽りの大化改新(講談社現代新書)』(中村修也/著 講談社 2006.6)
「第四章 虚構の中大兄王子」(p.185-231)の最後の節が「『日本書紀』編纂の姿勢」(p.219-231)となっています。
・『「大化改新」の史料批判』(山尾幸久/著 塙書房 2006.10)
「第三章 「大化改新の研究方法」:改新詔の史料的検討を中心に」(p.155-224)大化改新(の詔)に関する研究成果が整理されています。
・『律令国家成立過程の研究』(八木充/著 塙書房 1975)
「結論」「第一章 「大化改新詔」の史料的検討」(p.305-359)で、初出は『史学雑誌』第74編第3号(1965年)「再び大化改新詔の述作について」です。
・『井上光貞著作集 第1巻:日本古代国家の研究』(井上光貞/著 岩波書店 1985.11)
「第Ⅱ部 七世紀の国制」「第二章 大化改新とその国制」の第2節が「大化改新の詔の研究」(p.383-451)となります。初出は『史学雑誌』第73編第1、第2号(1964年)です。「改新の詔」論争上の重要な論文です。
[事例作成日:2020年7月31日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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木下正史「藤原京 よみがえる日本最初の都城」中央公論社(2003年) 読みました。
- NDC
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- 日本史 (210 10版)
- 参考資料
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- 大化改新を考える 吉村/武彦‖著 岩波書店 2018.10 (p.71-72)
- 日本史研究 日本史研究會 日本史研究会 662(2017.10) (p.46)
- 偽りの大化改新 中村/修也∥著 講談社 2006.6 (p.219-231)
- 「大化改新」の史料批判 山尾/幸久∥著 塙書房 2006.10 (p.155-p.224)
- 律令国家成立過程の研究 八木/充∥著 塙書房 1975 (p.305-359)
- 井上光貞著作集 第1巻 井上/光貞∥著 岩波書店 1985.11 (p.383-451)
- https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/18844/1/jinbunkagakukiyo_80_%2817%29.pdf (「大宝田令の復元と『日本書紀』」『明治大学人文科学研究所紀要』第80号(明治大学人文科学研究所 2017.3)(2020/7/17現在))
- https://ogu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=240&item_no=1&page_id=39&block_id=56 (中田興吉「改新詔と大化期の改革」『大阪学院大学人文自然論叢』第69・70号(大阪学院大学人文自然学会 2015)(2020/7/17現在))
- キーワード
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- 乙巳の変(いっしのへん)
- 大化の改新(たいかのかいしん)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌事項調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000287177