レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/03/24
- 登録日時
- 2018/04/03 00:30
- 更新日時
- 2018/05/16 15:17
- 管理番号
- 624183
- 質問
-
解決
国名を漢字一文字で表記する(アメリカを米、ロシアを露、インドを印)表し方について書かれた資料はないか。また、いつの時代から漢字一文字で表記するようになったのか、ということについて書かれた資料も見たい。
- 回答
-
米、英、露等の国名の略称が現われたのは、19世紀後半ということです。
また、日中で同じ略称を使う国(イギリス等)もあれば、日中で異なる国(中国ではアメリカは美国、フランスは法国と略す等、日本とは異なる)もある等、現在の略称が定着する経緯は国によって様々です(資料1~3)。
インドやオランダ等、はやくから日本と関係があった国については、漢字一文字に略して表す例は、19世紀よりはやい近世以前からみられます(資料4、5)。
旧国名の遠江を遠州、相模を相州といったかたちで略す例は中世から確認できます(資料4)。
資料6では、「略音」と説明されています。
【 】内は当館請求記号です。
資料1
王敏東「漢字による外国地名の略称について」(前田富祺 編『国語文字史の研究 3』和泉書院 1996.6 pp.153-180【KF43-E5】)
* 9つの具体例を挙げ(うち、国名は「アメリカ」、「イギリス」、「オーストラリア」、「ドイツ」、「フランス」、「メキシコ」の6つ)、略称がいつ、なぜ発生したのかといった問題について考察されています。
* 「三 終わりに」の項には、「外国地名の略称の出現した年代は中国でも日本でもいずれも十九世紀後半である」(p.161)とあります。
資料2
シャルコ アンナ「音訳地名の表記における漢字の表意性について:ロシアの国名漢字表記を例として」(『早稲田日本語研究』(25):2016.3 pp.29-42【Z13-B335】)
* ロシアについては、18世紀末頃に「魯西亜」の表記と略称として「魯国」、「魯」が定着していたのが、19世紀後半から「魯」ではなく「露」が使われるようになった理由等について考察されています。
資料3
『講座日本語の語彙』明治書院 1981-1983【KF91-52】
* 第9巻~第11巻に語誌がまとめられていて、「イギリス」の項(第9巻pp.46-50)や、「べいこく」の項(第11巻pp.199-203)があり、初出や用例等を確認できます。
* 別巻は「語彙研究文献語別目録」で、「アメリカ」「イギリス」等の言葉から関連する研究文献が調べられるようになっています。
資料4
『新編日本古典文学全集 41』小学館 2002.2【KH2-E9】
* 鎌倉時代成立とされる「保元物語」中の「中印和漢」という言葉について、「中インドと和(日本)と漢(中)」の注釈が付されています(p.216)。
資料5
『日本国語大辞典 第2版』小学館 2000-2002【KF3-G103】
* 用例の選択基準のひとつが、その意味・用法について、もっとも古いと思われるものとされている(第1巻「凡例」)ため、言葉の使用時期の目安を知ることができます。
* 「インド」(第2巻)の項では、印度の用例として『教行信証』(1224年)が挙げられています。
* 「オランダ」(第3巻)の項では、阿蘭陀の用例として近世の文献が挙げられているほか、「らんご」(蘭語、「オランダ語」の意、第13巻)、「らんしょ」(蘭書、「オランダの書物」の意、第13巻)、「らんせつ」(蘭説、「オランダの学説」の意、第13巻)の項においても近世の文献での用例が挙げられています。
* 「えんしゅう」(遠州、「遠江国の異称」の意、第2巻)の項、「そうしゅう」(相州、「相模国(神奈川県)の別称」の意、第8巻)の項では、いずれも室町時代の文献が用例として挙げられています。
資料6
松下大三郎 著『改撰標準日本文法』紀元社 昭和3【531-11イ】
「一音節以上の音の省略」が「略音」であるとし、「著しく行はれるのは地名、人名などの目立つ部分だけを取」ることで、中でも使い慣れたものは「英、佛、米、伊などの様に単独にも使はれるが、それは少ないことで他の原辞と熟合して使はれる場合が多い」と説明されています(p.184)。
* 国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開しています。
該当箇所のURL http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1225783/111
〔主な調査済み資料・ウェブサイト〕
・森岡健二「略語の条件」(『日本語学』7(10)(72) 1988.7 pp.4-12【Z13-2668】)
・山本彩加「近代日本語における外国地名の漢字表記--明治・大正期の新聞を資料として」(『千葉大学日本文化論叢』(10) 2009.7 pp.108-78【Z71-E306】)
* 参考文献に「外国地名表記に関する研究文献」(pp.87-88)の項があります。
* 千葉大学学術成果リポジトリで全文を閲覧できます。
http://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900067265/
・陳力衛「近代語と中国語」(『日本語学』23(12) (通号 284) (臨増) 2004.9 pp.106-113 【Z13-2668】)
* 日中での国名表記の違いについての説明があります。
・佐伯哲夫「維新前後の新聞に見る外国地名の漢字表記」(『国語年誌』(5) 1986.10 pp.1-16【Z13-2639】)
・西浦英之「近世に於ける外国地名称呼について」(『皇学館大学紀要』(通号 8) 1970.3 pp.227-324【Z22-157】)
・佐藤武義、前田富祺 編集代表『日本語大事典』朝倉書店 2014.11【KF2-L1~L2】
・笹原宏之 編『当て字・当て読み漢字表現辞典』三省堂 2010.11【KF45-J89】
・『近代外国地名人名呼び方書き方変遷史料集』大空社 2007.11【G88-J1~J4】
* 第1巻に「史料略年表」(pp.3-10)、「研究参考資料」(pp.11-16)が収録されています。
・日本語研究・日本語教育文献データベース(国立国語研究所)
https://bibdb.ninjal.ac.jp/bunken/
・Japan Knowledge Lib ※当館契約データベース
ウェブサイトの最終アクセスは2018年3月22日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
国名を漢字1字で表記された図書、本館所蔵なし。
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000234101