「人物辞典」や伝記・評伝を調べることのできる資料で「佐藤定吉」を当たりましたが、事前調査された『佐藤定吉追想録』以外の資料は確認できませんでした。
『伝記・評伝全情報 45/89:日本・東洋編 上』(日外アソシエーツ 1991.8)には『佐藤定吉追想録』以外に『チョークを持って40年:還暦を回顧して』(佐藤定吉/著 八戸 佐藤定吉/刊行 1965)という資料があると書かれていましたが、『チョークを持って40年』の佐藤定吉氏は「イエスの僕会」を主宰した佐藤定吉氏とは別人でした(この本を所蔵している青森県立図書館に確認しました。1904年に青森県に生まれた教師だそうです)。
『日本キリスト教歴史大事典』(日本キリスト教歴史大事典編集員会/編 教文館 1988.2)580頁に「佐藤定吉(さとうていきち)」の項目があります。
参考文献が『佐藤定吉追想録』ですので、すでにおわかりになっていることかもしれませんが、「イエスの僕会」との関わりを中心に記述を抜粋します。
1887.11.20-1960.12.23。独立伝道者。徳島県富岡町出身。東京帝国大学工科に入学後、1910(明治43)年本郷の弓町本郷教会で海老名弾正から受洗。
1912年7月の大学卒業時に銀時計を授与される。1914(大正3)年7月東北大学教授。1924(大正13)年3月に退職。
同年8月五女慈子の死によって「全東洋を基督へ」の召命を受ける。1926年に月刊誌『科学と宗教』を創刊。東京下落合に産業宗教協会を設立し、信者の企業のコンサルタントになる。1927(昭和2)年5月「イエスの僕会」運動を開始。8月軽井沢で第1回浅間山麓修養会を開いた。1928(昭和3)年から月刊誌『晩鐘』を創刊。翌年には第1回米国伝道旅行を試み、その後も数回にわたって米国、華北、満蒙に伝道旅行にでる。
太平洋戦争勃発の頃から急速に皇国主義的となり、「イエスの僕会」は解散、代わって皇国基督会を発足させた。
同じ事典には「イエスの僕会」の項目も記載されています(89頁)。参考文献は『みちびき』第1号(1981年)に収められた「イエスの僕創立当時を語る」です。以下、抜粋します。
佐藤定吉を中心とした福音的伝道団体。1927(昭和2)年5月「全東洋を基督へ」の標語の下に運動体が結成され、全国的に特に高校生・大学生の間にリヴァイヴァル的伝道を展開した。中枢は東京と京都で、特に京都大学の学生を中心とする僕会は服部新(後に治と改名)の指導下に活躍。東京では1932(昭和7)年に東洋使途神学校を開設し、無教会の指導者たちを援助したが永続しなかった。太平洋戦争勃発後は佐藤自身が日本精神に傾き、会は消滅した。
また、GeNiiという論文や本を調査できるサイトで「佐藤定吉」を検索した結果、
岩瀬誠「日本的キリスト教指導者佐藤定吉の神道理解」『国学院雑誌第93巻第1号』(国学院大学出版部 1992.1)
という論文が見つかりました(この資料は大阪府立中之島図書館の所蔵となります)。
16頁から18頁が「佐藤定吉の信仰形成」となっており、彼の死まで比較的詳しく記述されています。参考文献は『佐藤定吉追想録』が中心ですが、彼の著作『死に直面せる体験』(使途行社 1925)や『科学と宗教 第十輯』(1927.2)も参考にされています。
この記述の後、『皇国日本の信仰』(1937.2)という著作を中心に佐藤定吉氏の「日本的キリスト教信仰における神道観」について述べています。
なお、当館には以下の佐藤定吉氏の著作を所蔵しています。明確な活動履歴は記されていませんが、彼の人となりを知る資料かと思います(【 】内は当館の請求記号です)。
『自然科学と宗教』(佐藤定吉/著 厚生閣書店 1924)【604/141/#】
『科学より宗教への思索』(佐藤定吉/著 イデア書院 1924.7)【110/307/#】
『人生と宗教』(佐藤定吉/著 厚生閣書店 1924.10)【140/355/#】
『科学より観たる人生問題(科学と宗教叢書)』(佐藤定吉/著 厚生閣 1925.3)【110/359/#】
『護謨の研究』(佐藤定吉/著 森本粂逸/著 厚生閣書店 1926.6)【779/181/#】
→宗教的な記述はありません。
『全地の囁き』(佐藤定吉/著 産業宗教協会 1927.6)【147/1/#】
→「序」によると1925年5月28日から翌年6月21日までの13カ月に巡った世界旅行の記録です。
『人生を語る』(佐藤定吉/著 厚生閣書店 1935.11)【140/467/#】
→この本を読んだ後で、もっと人生を学びたい人は「私共同人の出している『晩鐘』という月刊のパンフレットを合わせて読んでいただきたい」と書かれています(2頁)。
『人生と宗教』(佐藤定吉/著 厚生閣書店 1931.12)【140/355/(2)#】
『近代科学と宗教生活』(佐藤定吉/著 厚生閣書店 1931.12)【110/429/#】
『優生学と宗教』(佐藤定吉/著 雄山閣 1933.7)【140/521/#】
『皇民信仰読本』(佐藤定吉/著 実業之日本社 1938.10)【173/1359/#】
※『佐藤定吉追想録』(佐藤先生を偲ぶ会 1970.12)【289.1/2631N/サト】