レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2007/10/31
- 登録日時
- 2009/07/07 02:10
- 更新日時
- 2009/07/07 09:34
- 管理番号
- Q2007F0108
- 質問
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解決
『ダモンとフィシアス』というお話で、子ども向けの資料があるかどうか。
・30年前に学校の先生から聞いたおはなし
・書籍となっているかは不明
・様々な困難をのりこえて、友人との約束を守るという内容
※『ソクラテス以前哲学者断片集』第3分冊 岩波書店 p.138「第55章 ダモンとピンティアス」のコピーを添付。
- 回答
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残念ながら、ご依頼内容に合致する資料は見つかりませんでした。
以下、調査内容をご報告いたします。
1.NDL-OPAC、児童書総合目録、総合目録ネットワークで『ダモン』、『フィシアス』がタイトルに含まれる資料を検索しましたが、該当する資料はヒットしませんでした。児童書総合目録では、上記キーワードの他に「友情」「人質」「身代わり」「約束」などの単語を掛け合わせてあらすじ検索も行いましたが、ヒットしませんでした。
2.お送りいただいた『ソクラテス以前哲学者断片集』のコピーから、太宰治の「走れメロス」の題材となった話ではないかと考え、太宰治関係の資料を調査したところ、次の資料で「走れメロス」の素材となった文献について論じられていました。
・『太宰治と外国文学 : 翻案小説の「原典」へのアプローチ』九頭見和夫 和泉書院 2004(国立国会図書館請求記号:KG518-H5)
この資料の、pp.2-24「太宰治のシラー受容」及びpp.25-51「太宰治とシラー」によると、「走れメロス」の末尾に太宰自身が記している「(古伝説とシルレルの詩から)」の「シルレルの詩」とは、ドイツの詩人シラーの“Die Burgschaft(Burgschaftのuにはウムラウトあり、以下同様)”(人質)であるとのことでした。
そこで、NDL-OPACで著者がシラーの国際子ども図書館資料を検索し、現物を確認しましたが、“Die Burgschaft” の翻訳が掲載された児童書は見つかりませんでした。なお、“Die Burgschaft”には二種類のテキストが残っており、シラーは最初“Die Burgschaft”(「人質」「担保」の意)だった表題を後に“Damon und Phintias”に変更し、主人公の名もMorosからDamonに変わっているようです(Morosのoにはウムラウトあり)。お探しの資料がこのテキストの翻訳である可能性は高いですが、今回は「子ども向けのお話」とのことですので、大人向けの翻訳については調査していません。ご了解ください。
また、上記『太宰治と外国文学: 翻案小説の「原典」へのアプローチ』のp.18には、太宰の言う「古伝説」は高等小学国語読本で習った『真の知己』であるという説が紹介されています。また、『真の知己』と同内容の物語が現在の小学5年の道徳の教科書『新編新しい生活5』(東京書籍)に「友の命」という題名で掲載されているとの記述もありましたが、太宰の子ども時代の高等小学国語読本も『新編新しい生活5』も国際子ども図書館では所蔵していないため、確認できませんでした。念のため、「真の知己」「友の命」で児童書総合目録を検索しましたが、該当する資料はありませんでした。
3.インターネット検索で得た情報から、鈴木三重吉の童話に「デイモンとピシアス」という作品があることがわかりました。この作品は以下の資料に収録されています。
・『鈴木三重吉童話全集』第8巻 文生堂書店 1975.9 (請求記号Y8-M99-36:国際子ども図書館所蔵)
・『赤い鳥の本』第9冊「救護隊」 ほるぷ出版 1969 (請求記号KH6-4:東京本館、国際子ども図書館所蔵)
また、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)にも収録されています。
この作品も「走れメロス」と同じ素材を扱っていますが、議政官ディオニシアスが話の中心となっていて、ディオニシアスの命を狙って捕まったピシアスと身代わりとなったデイモンの友情物語は作品の後半に出てきます。ピシアスが「様々な困難をのりこえ」る部分はほとんど描写されていません。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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『ソクラテス以前哲学者断片集』第3分冊 岩波書店
p.138「第55章 ダモンとピンティアス」
- NDC
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- 小説.物語 (913 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 児童書
- 友情
- ダモン
- フィシアス
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 公立図書館
- 登録番号
- 1000056275