レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2009/03/12
- 登録日時
- 2009/06/19 02:11
- 更新日時
- 2009/06/26 14:41
- 管理番号
- 埼熊-2009-003
- 質問
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解決
寺の名前、①「○○山」、②「○○院」の由来と名づけ方について知りたい。
- 回答
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それぞれの由来に関して記述のある資料を提供する。
①「○○山」について
『世界大百科事典』『岩波仏教辞典』に以下のような記述あり。
寺院は元来修行・祈願の道場であったため、山中の勝地を選んで建立された。「○○山」は山号と呼ばれるが、中国で、寺の所在を示すためにその寺の所在する山名を冠して呼ばれたのにはじまる。わが国では、飛鳥・奈良時代には、寺は主に平地に造られたので山号はなかった。平安時代に、山上に造られた寺は「比叡山寺」「高野山寺」など山の名を用いた寺名で、これらの寺はのちに寺号が定まっても、その所在を明瞭にするために山号を寺名に冠して使用した。
中国で禅宗の代表的寺院に「五山十刹(ゴザンジッセツ)」の制が定められ、鎌倉時代、禅宗とともにこの制がわが国に伝えられると、巨福山(コブクサン)建長寺などのように寺名の上に山号が付けられるようになり、山は鎌倉五山・京都五山などが選ばれた。その後、ほかの宗の寺院も、寺名の上に山号をつけるようになった。
宗派などによって山号の付け方等に規則があるかどうかについては不明。
②「○○院」について
『岩波仏教辞典』『例文仏教語大辞典』などに以下のような記述あり。
〈院〉は垣をめぐらした建物の意。院号は上皇の称号、天皇の追号、女院の称号でもあるが、仏教関係の施設を〈院〉と称することが中国・日本で行われ(東大寺戒壇院など)、寺で院号を称するものができた(知恩院など)。「○○院」とは通常、寺の名前そのもの(寺名)の場合や、寺内にある施設名になる。
『浄土真宗法名・院号大鑑』では、以下のような別の解釈もしている。
仏さまをおまつりしてあるところを「寺」というのに対し、僧侶などの人師の住むところを「院」と呼ぶ。
- 回答プロセス
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『古寺名刹の百科事典』
p168「人物ゆかりの寺」の凡例に「山号院号」とあり。〈山号〉〈院号〉で資料を検索する。
『岩波仏教辞典』
p81〈山号〉
「寺名の上につけられる〈山〉の称号。中国で、寺の所在を示すために用いたのにはじまる。わが国では、奈良時代には、寺は主に平地に造られたので山号はなく、平安時代、山上に造られた寺は「比叡山」「高野山」など山の名を用いたが、いわゆる山号ではなかった。中国で禅宗の代表的寺院に「五山十刹(ゴザンジッセツ)」の制が定められ、鎌倉時代、禅宗とともにこの制がわが国に伝えられると、巨福山(コブクサン)建長寺など寺名の上に山号が付けられるようになり、鎌倉五山・京都五山などが選ばれた。その後、ほかの宗の寺院も、寺名の上に山号をつけるようになった。」
p58〈院号〉
「〈院〉は垣をめぐらした建物の意。院号は上皇の称号、天皇の追号、女院の称号でもあるが、仏教関係の施設を〈院〉と称することが中国・日本で行われ(東大寺戒壇院など)、寺で院号を称するものも多く(知恩院など)、また寺内の子院や塔頭(たっちゅう)の称号でもあった。」
『世界大百科事典 11』(平凡社)
p470〈山号〉
「寺名に冠する山の称号。寺院は元来修行・祈願の道場であったから、山中の勝地を選んで建立された。中国においては五台山清涼寺、天台山国清寺の例にみられるとおり、その寺の所在の山名を冠して呼ばれた。日本では、飛鳥、藤原、平城京など都城や平地に造建された時代を経て、平安時代に入ると、入唐留学僧の見聞や、天台、真言両宗の寺院が、山中の高地を求めて建立された。たとえば延暦寺はもとは比叡山寺、金剛峯寺も高野山寺と称したように、山号をもって寺名とした。定額寺(ジョウガクジ)に認定され寺号が定まっても、その所在を明瞭にするために山号が寺名に冠して使用された。嵯峨清涼寺は五大山清涼寺によったものであるが、愛宕山を五台山に改名し山号の先駆をなしたことは有名である。鎌倉時代に至って禅宗の諸大寺が創建されると、南宋五山の制をうつし、巨福山建長寺、瑞竜山南禅寺、亀谷山寿福寺などいずれも山号を冠して呼ばれるにいたり、その影響は諸宗や平地の寺院にも及び、当初の意義を離れて用いられるようになった。」
『例文仏教語大辞典』(小学館)
p370〈山号〉
「寺院の名に冠する称号。中国では禅宗が盛んになった唐代から行われ、わが国でも禅宗渡来後に用いられるようになった。多く、寺院は山中に建てられたところから、その山の名を寺院名に冠するようになったもの。比叡山(延暦寺)、高野山(金剛峰寺)、金竜山(浅草寺)など。」
p59〈院号〉
寺の寺号に別につけた呼び名。または、寺内の小院につけた名。考信録‐二・山号寺号院号「寺に山号・寺号・院号の三を称すること、支竺には是なしと見ゆ」
『総合佛教大辞典』(法蔵館)
p466〈さん 山〉
「もともと寺院は多く山中に建てられ何々山何々寺などといったところから、平地にある寺院に山号(さんごう)をつけるようになり、山号は寺号の別称になった。」
p513〈寺院〉
「漢語で院とは、もと周囲にめぐらした垣根をいい、転じて周垣または回廊のある建物を意味し、官舎の何も用いられた。」
『望月仏教大辞典 2』
p1504-1505〈山号〉
世界大百科事典と同様の記述と「寺社裁許問答に「日本の天台眞言宗には、一寺に必寺号山号二つ無て叶はざるように心えて、市の中にある寺にも山号を作る事になり、佛寺は本と山にあるべきの故に、倭漢共に山号を假用ゆ」と云えり。以てその由来の久しきを知るべし。」とあり。
『仏教用語の基礎知識』
p261「平安時代の真言宗、天台宗といった密教系の宗派の寺院は多くの場合、山中に建てられたので、地形にしたがって不規則に建てられることが多くなった。それにともない、比叡山延暦寺、高野山金剛峯寺など、寺号のうえに山号を冠するようにもなった」
『日本国語大辞典 2 いけ-うのん』
p458〈院号〉「一般に臣下、武将、僧侶などの貴人が建立した寺院の称号。また、その貴人の別称」
『日本国語大辞典 9 ささ-しとん』
p228〈山号〉「寺院の名に冠する称号。中国では禅宗が盛んになった唐代から行われ、わが国でも禅宗渡来後に用いられるようになった。多く、寺院は山中に建てられたところから、その山の名を寺院名に冠するようになったもの。」
上記資料『例文仏教語大辞典』と同じ内容。
『浄土真宗法名・院号大鑑』
p10「仏さまをおまつりしてあるところを「寺」というのに対し、僧侶などの人師の住むところを「院」と呼ぶ。「院」とは元来建物を意味。蓮如上人の住んでいたところを信証院とよび、信証院が蓮如上人の別名として通用していたように、著名な僧侶は○○院とその人が住んでいる建物の名前すなわち院号でよばれることが多かった。ですから「院号」というのは一寺をになうような有徳の僧侶、一寺を建立するほどに仏教に大きな貢献をした人、寺を維持するためにさまざまな寄進をした人に対する称号。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 仏教 (180 9版)
- 参考資料
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- 『古寺名刹の百科事典』(歴史百科編集部 新人物往来社 1988)
- 『岩波仏教辞典』(中村元 岩波書店 2002)
- 『世界大百科事典 11』(平凡社 2006)
- 『例文仏教語大辞典』(石田瑞麿 小学館 1997)
- 『望月仏教大辞典 2』(世界聖典刊行協会 1980)
- 『仏教用語の基礎知識』(山折哲雄 角川書店 2000)
- 『日本国語大辞典』(小学館 1982)
- 『浄土真宗法名・院号大鑑』(真宗仏事研究会 法蔵館 1999)
- キーワード
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- 山号
- 寺院-名称
- 仏教
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000055806