探し方ガイド:シューマン「詩人の恋」関係の資料を探し、調べるには?
1.探すときのキーワード(例)
「詩人の恋」 "Dichterliebe" 「シューマン」 "Schumann" 「ハイネ」 "Heine"
当館OPAC
→タイトル に 「詩人の恋」又は"Dichterliebe” と 入力し、フレーズ検索
*原語による検索の方が検索数は多くなります。(2012.2.8現在)
*更に、件名 に Schumann, Robert, 1810-1856-Manuscripts-Facsimilesと入力し、
掛け合わせ検索すると、"Dichterliebe"の自筆譜・ファクシミリを探すことができます。なお、
この検索は、”Schumann Manuscripts”キーワード検索との掛け合わせ検索でも代替できます。
*別途、"Urtext”と入力、注記のフレーズ検索と”Dichterliebe” の掛け合わせ検索により、
"Dichterliebe” の原典版を探すことができます。
→人名・団体名 に 「シューマン」 "Schumann""Heine" 「ハイネ」 と 入力し、各々検索
*作曲者からの検索では、例えば『シューマン』といった大題のついた図書の中に含まれている
「詩人の恋」についての記事や、シューマンの声楽作品での位置付け等がのりそうな文献(主に図書
、CDの解説等にも役に立つものはあります。)を目で探します。ポイントは著作者名や出版社名、シリ
ーズ名になります。
*詩人からの検索では、テキスト研究に必要な文献を探しますが、詩人研究や、詩作品の領域になる
と当館所蔵分では、足りないので、GeNiiやWebで検索し、文献閲覧やコピー依頼をします。(学内利
用者はレファレンスがサポートしますので、ご相談ください。)
全集楽譜
〔旧全集リプリント版〕
"Robert Schumann's Werke." 〔xiii/2〕 Hrsg. von Clara Schumann, Leipzig,
Breitkopf & Härtel Reprint:Farnbrouch, Gregg Press 1968
GeNii等、検索
→「シューマン 詩人の恋」
で、GeNiiを検索すると、かなりの数のヒットが見られます。
これは他のドイツ歌曲の作品に比べても多い方と思われます。(2013)
→Schumann Dichiterliebe
で、主に、ネット上の外国資料(情報)を調べます。
2.調べるときのキーワード(例)
「詩人の恋」 歌曲集中の「曲名」
①" Robert Schumann neue Ausgabe sämtlicher Werke : thematisch-bibliographisches Werkverzeichnis /
von Margit L. McCorkle ; unter Mitwirkung von Akio Mayeda und der Robert-Schumann-Forschungsstelle ;
herausgegeben von der Robert-Schumann-Gesellschaft, Düsseldorf "
*シューマン作品研究の起点ともいうべきレファレンスツールです。本文は、Opus順に並べられ、"Opus 48"が
Dichterliebeになります。16曲、各曲のインチピットが掲載され、各曲の同定と全曲俯瞰を助けます。これらの
インチピットを見るだけで、前奏何小節、全体何小節、楽譜冒頭の演奏記号(ex:Langsam, zart)が分かります。
又、インチピット以外の主な記載内容は以下の通りとなります。AGA XXXIII(131)[ シューマン旧全集収載巻、
収載ページ]、Text[:Heinrichi Heine(1797-1856, Buch der Lieder, 1827…)]、Zur Geschite[Entstehung,
Erste nachgewiesenne öffentliche Aufführungen, Vollsändig(postum), Herausugabe -
Erstaugabe etc, ] Quellen[Autograph, Abshcrift, Stichvorlage?, Korrekuturabzüge, Erstausgabe,
Weitere Ausgabe…] 特に、Quellenは、楽譜調査の重要起点となります。巻末にある各種索引は、Opus
番号が分からないとき[ex:Verzeichnis der Titel und Textanfänge]など、様々な検索の手助けになります。
②『シューマン / 音楽之友社編』
*解説は、学習、鑑賞、演奏等の参考になります。
③『シューマンの歌曲集 ; 詩人の恋』 アーサー・コーマー編 ; 寺本まりこ訳 東京 : 東海大学出版会, 1980
*ノートン・クリティカル・スコア・シリーズの一冊。各曲毎に綿密な分析がつく他、原典資料に関する注釈、
アナーリーゼに関するエッセイ、論評、文献が収載される「詩人の恋」演奏、研究にとって重要な一冊。
④『シューマンの音符たち ; 池辺晋一郎の「新シューマン考」 』 池辺晋一郎著 東京 : 音楽之友社, 2010
*「詩人の恋」や声楽曲だけではないシューマンの諸作品についての短いアナリーゼが載ります。軽い筆致な
がら勘所を押さえた著者一流の鋭い分析力が光ります。「ミルテの花」「流浪の民」「女の愛と生涯」と言った声
楽作品や、器楽作品のアナリーゼと比較して読むことによって見えてくる「詩人の恋」の特徴。そう言った点が
この本ならではの長所です。詳細よりは要点という趣きがあるので、①に比べより実践向きと言えます。
CiNii Articlesの検索では、主に演奏論〔演奏法〕の立場からの、紀要論文等が目につきます。(2013)
中でも、
・泉恵得「R・シュ-マンの歌曲集「詩人の恋」に於ける演奏法の研究」『琉球大学教育学部紀要 第一部・第二部 』
no.36 p.153 -167 の 6.おおライン、清き流れ Im Rhein, im Heiligen Strome で、
「マリア像を自分の恋人に擬えるのは、中世以来、民間に流行った信仰の1つである。因に、この絵は
シュテファン・ロヒナーという15世紀中葉の画家の作で、ハイネは実際に此の絵を知っていて、-時、
それに夢中になった事もある」という記述 と 更に(↓)
・三原重行「R.シューマンの「詩人の恋」作品48 : 演奏法に関する研究」『島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学』
32, 55-66, 1998-12-01 の 6.おおライン,清き流れ でも、「自分の恋人になぞらえるのは,中世以来,
民間に流行した信仰の1つである。故にこの絵はシュテファン・ロヒナーという15世紀半ばの画家の作で,
ハイネは実際にこの絵を知っていて,一時,それに夢中になった事もある。」という記述 は、絵と詩、そし
て音楽との関係の観点から大変重要な指摘と言えます。[←これらの指摘については、今後典拠等を確
認する必要がありますが、ネット検索からは、ケルン大聖堂のロッホナーの祭壇画 「東方三博士の礼拝」
(マギの礼拝)中のマリア像との何等かの関連性が推測できます。]
[インターネットで Heinrich Heine Stefan Lochner の検索をすると、上記推測を裏付けるデータを
見ることができます。 2014.12.25現在]
・内之倉勝哉 「R.シューマン《詩人の恋》No.7〈Ich grolle nicht〉への一考察 : H.ハイネ『抒情挿曲』
との関連性」 国立音楽大学 音楽研究 : 大学院研究年報 21, 33-48, 2009-00-00
この論文は、「原詩となったハイネ『抒情挿曲』に焦点を当て、第7曲「Ich grolle nicht」についての研究
を進めることとした」と抄録にあるように、原詩との関連性から第7曲に焦点をあて、比較、作品分析を試
みている点がユニークです。参考文献には、レファレンス調査に役に立ちそうな資料が挙げられています。
・若山 俊介「シューマンの歌曲集『詩人の恋』にみる詩と音楽の融合」『宇都宮大学国際学部研究論集』
13, 187-212, 2002-03-01 は、「詩と音楽の融合」の立場からの論究。原詩との関係や、韻、旋律、
リズム分析が興味深く、演奏の参考にもなります。
ネット検索
・『ハイネ「歌の本」』(桐朋学園大学音楽学部附属図書館ホームページ 展示スクエア<詩と音楽>)
http://www.tohomusic.ac.jp/librarySite/tenji/heine_main.html*「詩人の恋」だけではなく、詩と音楽から見たハイネとその作品について記された必見サイト。
「詩人の恋」をハイネ詩作品全体から見る場合には、大変便利で重宝します。
◆当然のことながら、楽譜諸版は、歌詞等細部に異同があり、各版には各々根拠や理由があります。
従って、調査・研究に際しては、 主要な諸版(自筆譜ファクシミリ、全集楽譜、重要原典版)は、見
ておく必要があります。学習や演奏に際しても、最終的に(多くのCD等で録音されているような)伝
統的な演奏や歌唱スタイルを選択するにしても、できる限り重要諸版を見ておく必要があります。
又、サポートする音楽大学の図書館員にも、これらは必須知識となります。ただし、調査・研究・学
習において、図書館員が前もって学習しておくべき、主題目録(作品目録)、楽譜諸版サポートの基
本構造は、どの作曲家、作品においても余り変わりがありません。ただ、有力なドイツ系の作曲家、
作品を除くと、レファレンス・ツールを含め、全ての関連資料が揃う方が珍しいというだけで、おさえる
べきポイントはほぼ決まっています。しかしながら、具体的な調査になれば、個々の作曲家の主題
目録(作品目録)や全集楽譜の作成方法等は、作曲家毎に違っているので、主要な作曲家について
は、そうしたものが揃っているのか?実際調査でどのように活用できるのか?普段から目を通してお
く必要はあります。理由は、クラシック音楽の場合、主要作品になればなるほど、調査・研究・学習の
頻度が多く、しかも、毎年毎年繰り返される傾向があり、トップクラス調査・研究の質は徐々に深化・
向上するが、一方では、毎年初心者からの質問も絶えないという点が挙げられます。よって、どちら
の期待も裏切らないよう、主要作品の利用サポートのために、作品目録類と楽譜諸版への目配りを
常に行っておく必要があるのです。