レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2007/08/22
- 登録日時
- 2007/10/31 02:10
- 更新日時
- 2012/03/21 14:17
- 管理番号
- C2007M1069
- 質問
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解決
①震災直後の家賃徴収状況家賃徴収不可の状況が実際あったのかどうか?もしあったのならば、どのような措置をとったか?
②震災後、家賃相場下落に伴う家賃改定の必要はあったか?
③震災後、必要修繕等の規模は?また、それに伴う、借主への配慮があったのかどうか?
④震災前後での不動産業界全体、家賃・土地、その他の相違は?
⑤大震災に被災する可能性のある地域にある不動産賃貸業者へのアドバイスは?
- 回答
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ご照会の事項に関しまして、以下の通り回答いたします(【】内は当館請求記号です)。
①1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災の際、「賃貸住宅の家賃徴収不可の状況が実際あった
か、もしあったのならば、どのような措置をとったか」についてですが、『全国賃貸住宅新聞』(全国賃貸住宅 新聞社 週刊 【Z87-531】)1995年3月8日号4ページにはニチモ賃貸センター西川徹氏のインタビューがあり、震災後の家賃徴収状況に言及していましたので、ご参考までに引用します。
「当社では、震災後の2~3日で、阪神間にある40棟の管理物件を全て調査しました。その結果、倒壊は1棟もなかったことを確認しています。ただ、ライフラインの損傷によって生活環境が十全ではない物件もあ
ります。ですから、住居から避難している人もいます。
そのような状況を考慮し、西宮以西の地域に限って、現在まで2月分の家賃は請求していません。当社の
場合、振り込み期限は毎月23日にしているので、期限は過ぎています。オーナーの承認を得ずに家賃請
求を停止しているので、オーナーからは苦情が寄せられています。「ローンの返済ができなくなる」と、切々
と訴えるオーナーもいます。当社としては2月分の家賃を無料にする、というのではありません。とりあえ
ず延期しているというのが現状です。オーナーの方々には、被災地における事情を説明し、説得している
最中です。」
阪神・淡路大震災の際には、「とりあえず延期」という形で家賃を請求しなかった事例が存在するようです。
また、当館で契約しているオンラインデータベース「日経テレコン21」を検索したところ、1995年1月
27日の『日本経済新聞. [東京]』(日本経済新聞社 日刊 【YB-14】)朝刊38ページに「阪神大震災、賃貸トラブル急増―西宮市でも相談殺到」という記事があり、貸家2棟
が半壊して家賃を入れてもらえない家主の談話が記されていました。
なお、『全国賃貸住宅新聞』【Z87-531】)1995年3月18日号7ページには、阪神・淡路大震災の際、2月6日付で政府が「罹災都市借地借家臨時処理法」を適用したことが記されており、同法の簡潔な解説が掲載されています。これによれば、貸家・貸室が滅失した場合には借家の法律関係は消滅し、家賃の請求権も消滅しますが、半壊・半焼の場合は借家関係が存在し、家賃の問題を含めいろいろな問題が生じうるとのことです。ご参考までに、「罹災都市借地借家臨時処理法」関係の主要な資料を次に記します。
●『詳細不動産六法. 平成18年版』(東京法経学院出版 2006 【CZ-821-H5】)
164~167ページに「罹災都市借地借家臨時処理法」を記載しています。
●『罹災都市借地借家臨時処理法非訟事件決定例集』
(神戸弁護士会 1999 【AZ-852-G79】)
●『神戸弁護士会震災復興対策本部法制度専門部会借地借家法及び
罹災都市借地借家臨時処理法関係小委員会検討の結果』
(神戸弁護士会 1996 【AZ-852-G45】)
また、「罹災都市借地借家臨時処理法」は「法令データ検索システム」(http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/strsearch.cgi )で全文を参照することができます。
②震災後の家賃相場の変化と家賃改定についてですが、『日本不動産学会誌』(日本不動産学会
季刊 【Z4-786】)12巻2号(1997年10月)の特集「阪神・淡路大震災復興の不動産学的研究」に収録される生田目裕氏の論文「阪神・淡路大震災が中古住宅の取引価格に及ぼした影響」(38~42ページ)では、40~42ページで民間住宅における震災後の賃料の動きについて記述しています。
これによれば、阪神間のワンルームと1DK、5DK以上の住宅の賃料は、震災2ヶ月後から上昇をはじめた
が11ヶ月後には下がり始め、震災2年後には震災前の水準に戻ったとのことです。また、3DK・4DKの住宅
の賃料は震災後3ヶ月で上昇を始めて7ヵ月後に下がっており、2DKの住宅の賃料は震災3ヵ月後から上昇を始めて1年後に下がったとのことです。この記述によれば、震災後の賃料は一時期上昇し、その後に元の水準に戻るという変化をしているようです。
この値動きに関連した賃料改定に言及した資料としては、『日本経済新聞. [東京]』(日本経済新聞社 日刊 【YB-14】)1995年1月27日の朝刊38ページに掲載された記事「阪神大震災、賃貸トラブル急増―「全壊、家賃どうなる」、目立つ便乗値上げ」があります。この記事では、震災による物件不足につけこんだ民間賃貸住宅の便乗値上げに関する相談が大阪府の住宅相談窓口に寄せられ、同府などからの報告を受けた建設省が便乗値上げの防止に関する通達を出したことが記されています。
また、『全国賃貸住宅新聞』【Z87-531】1995年2月18日号の8ページに掲載される兵庫宝不動産社長の葉山敬三氏に対する「被災地業者緊急インタビュー」にも、震災後の便乗値上げに関する記述がありますので、ご参考までに、次に関連箇所を抜粋して記します(はじめの「―」以降の台詞はインタビュアーによるものです)。
「―そうすると、巷で報道されているような家賃の便乗値上げや手数料割り増しどころではありませんね。
地元新聞では家賃5~6万円の物件を一気に8~10万円に値上げし、その上敷引き70万円なんていうむちゃくちゃな条件をつけたK産業のケースなどを報じていましたが、どうですか。
葉山 それは自社物件ですから、つまり家主であって、仲介・管理業者では考えられないことです。ウチの
家主さんの中にも値上げを考えた人もいましたが、実際に値上げした人はいません。それに大体、そうい
うことをやるのは大阪とか他県の人です。地元業者や家主はそんなこととてもできませんよ。」
このほか、『全国賃貸住宅新聞』 【Z87-531】1995年4月8日号の4ページには住管協大阪地区交流会による震災後の市場動向に関する記事が掲載されていますが、賃料については次のように記載されています。
「また、一部報道機関で取り上げられた賃料値上げの問題については、特に目立った動きはなかったとの
こと。 むしろ賃料アップを主張するオーナーに正確な情報と見通しを伝え、新たに生じた状況に対応して
いこうという姿勢が目立った。」
③震災後の必要修繕等についてですが、賃貸住宅に特化して震災後の必要修繕について概説した資料は見つかりませんでした。しかし、一事例に過ぎないものの、当館で契約しているオンラインデータベース「聞蔵Ⅱ」を検索しましたところ、『朝日新聞. [大阪]』(朝日新聞大阪本社 日刊 【YB-3】)1995年10月17日の朝刊3面に「兵庫・大阪の公団賃貸住宅、震災被害250億円 支社調べ」という記事
が掲載されていることが分かりました。この記事によれば、住宅・都市整備公団関西支社が管理する住宅の被害は、解体が必要なものが3棟、柱など構造体が損傷したものが21棟であり、総被害額は250億円に上ったとのことです。また、外壁の亀裂や窓ガラスの破損などは約1700棟あり、その修繕費は137億円だったようです。このような被害に対して、同公団関西支社は、定期的な建物修繕の費用を効率的に運用することで、家賃アップなどの住民負担を避ける方針を取るとのことです。
なお、阪神・淡路大震災における住宅一般の復興に関しては、次の資料にまとめられています。
●『阪神・淡路大震災復興誌』第1~10巻
(21世紀ひょうご創造協会 1997~2006 【EG77-G340】ほか)
※第3巻以降の出版者は阪神・淡路大震災記念協会です。
●『阪神・淡路大震災からの住宅復興』
(東京市政調査会 1997 【EF52-G137】)
●『阪神・淡路大震災による住宅被災の実態並びに住宅復興問題調査報告』
(住宅総合研究財団 1996 【EF52-G78】)
●『震災復興の理論と実践』
(神戸都市問題研究所 1996 【DD83-G49】)
④震災前後での不動産産業全体、家賃・土地、その他の相違についてですが、阪神大震災前後の不
動産関係の統計データについては、『不動産業統計集』平成6年度版(建設省建設経済局 年刊 【Z3-B458】)と『不動産業統計集』平成7年度版(建設省建設経済局監修 不動産流通近代化センター 年刊 【Z71-N60】)で比較することができます。
また、阪神・淡路大震災前後の家賃については『Chintai. 近畿圏版 : 賃貸住宅ニュース 近畿圏版』(Chintai 週刊 【Z6-3410】)、『週刊賃貸住宅ニュース. 首都圏版 : Chintai首都圏版』(Chintai 週刊 【Z6-3396】)など(『Chintai.』・『週刊賃貸住宅ニュース』は各地域・県版が刊行されています)、土地の価格については『地価公示』(国土交通省土地鑑定委員会編 国立印刷局 年刊 【Z41-235】)等で比較することができます。
さらに、阪神・淡路大震災前後の不動産業界の業界動向については、『月刊不動産流通』(不動産流通研究所 月刊 【Z4-624】)、『日刊不動産経済通信』(不動産経済研究所 日刊 【Z38-54】)、『不動産研究』(日本不動産研究所 年4回刊 【Z2-67】)、『日本不動産学会誌』(日本不動産学会 季刊 【Z4-786】)等で調べることができます。なお、『月刊不動産流通』(不動産流通研究所 月刊 【Z4-624】)は1998年4月から、『不動産研究』(日本不動産研究所 年4回刊 【Z2-67】)は1966年1月から、『日本不動産学会誌』(日本不動産学会 季刊 【Z4-786】)は1996年8月から当館「NDL-OPAC」(http://opac.ndl.go.jp/index.html )の「雑誌記事索引」に採録されており、掲載記事のタイトルを検索することができます。
⑤大震災に被災する可能性のある地域の不動産賃貸業者へのアドバイスについてですが、国会図書館の資料の検索を、「阪神大震災」でタイトル検索したところ、該当するような書籍は見つかりませんでした。
賃貸業者に限定しているわけではありませんが、次のような雑誌記事がありましたので、ご参考までに紹
介いたします。
●「特集 阪神・淡路大震災から10年 今、住宅・不動産業に求められる防災対策とは」
(『月刊不動産流通』 23巻8号 (通号 273) 2005年2月 10~37ページ 【Z4-624】)
なお、震災に対する賃貸業者の対策等の詳細に関しましては、日本賃貸住宅管理協会(http://www.jpm.jp/ )という協会があります。同協会HPのご相談コーナー(http://www.jpm.jp/consultation/index.html )によれば、同協会は書面による相談を受け付けているようです。
(インターネットの最終アクセス:2007年8月17日)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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国会図書館の資料の検索を、「阪神大震災」でタイトル検索したところ、該当するような書籍は見つかりませんでした。
- NDC
-
- 民法.民事法 (324 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 借地借家法
- 阪神・淡路大震災
- 住宅問題
- 災害復興
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 専門図書館
- 登録番号
- 1000038544