レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2008/11/28 02:10
- 更新日時
- 2008/11/28 02:10
- 管理番号
- B2008F0143
- 質問
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解決
人工(合成)エメラルドと人工オパールの詳しい作り方(合成方法ごとの成分、量など)を調べています。
- 回答
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ご照会の事項について、NDL-OPAC(http://opac.ndl.go.jp/index.html)を「結晶学」や「宝石」などの件名で検索してヒットした資料を調査しました。調査した資料のうち、エメラルドやオパールの合成法に関する記述があったものをご紹介します。
※【 】内は当館請求記号です。
(1)『結晶成長ハンドブック』(共立出版 1995.9 【MC2-G1】)
pp.636-639にエメラルドの合成法が紹介されています。エメラルドは、フラックス法、水熱法、ベルヌーイ法などの手法を用いて合成できることや、エメラルドは合成過程で割れ目や残留歪みなどの問題が生じやすいこと、これを解決する上での技術的な問題点などが指摘されています。
また、p.640にオパールの合成法が紹介されています。オパールの合成のためには「目的の大きさの粒の揃ったシリカ球を作る」、「最密充填構造に並べる」、「構造を固化させる」の3つの過程が必要であることや、そのやり方としてアルコールと水の混合液に[C2H5O]4Siなどのシリコンエステルを分散し、pHを制御しながらアンモニアで加水分解するのが一般的であることなどが記述されています。
(2)『宝石は語る: 地下からの手紙』(砂川一郎著 岩波書店 1983.11 【ME474-10】)
pp.81-82とpp.91-97にエメラルドの合成法が紹介されています。p.81にはフラックス法が紹介されており、「酸化鉛やフッ化鉛などの無機塩類とエメラルドの組成(酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、珪酸)の原料をまぜて白金るつぼの中に入れ、これを電気炉中で加熱して全成分を完全に溶かして高温の溶液をつくり、それをゆっくり冷却して溶液中でエメラルドの結晶を成長させ、ある温度に達したら、エメラルドだけをとりだす」という記述があります。p.92-93では、熱水合成法も紹介されており、「薄い板状の種子結晶(天然の緑柱石の結晶から切りだしたもの)を使って、その上に厚いエメラルドを育成するのに成功した。」などの記述があります。また、p.96掲載の図21では、(a)フラックス法と(b)熱水合成法の二種類の合成法が模式的に示されており、それぞれの合成法の長所と短所などが解説されています。
pp.115-116には、オパールの合成法が紹介されています。オパールを合成するコツや合成オパールの一種であるプラスチック・オパールの合成法が紹介されています。p.115にはプラスチック・オパールの合成法について、「プラスチックで、ラテックスと呼ばれる球状粒子をつくることができる。これを液中でゆっくり沈澱させ、密充填構造をつくる。ついでそれを別のプラスチックを使って凝固させる」などの手順が書かれています。
(3)『宝石をつくる : 人工宝石手帖』(広瀬三夫著 全国加除法令出版 1980.12 【PA251-3】)
pp.97-118に合成エメラルドに関する記述があります。pp.99-107ではフラックス法による生成技術の発展の経緯が、pp.111-112には火炎融解法による合成が解説されており、成分の分量や比率、手順が比較的詳細に解説されています。また、それぞれの製法の特許情報も紹介されています。一例として、pp.103-104に掲載されている、工業技術院の方法(特公昭48-023278)による成分の配合例をご紹介します。「最も好ましい使用例は、SiO2 58%、Al2O3 27.43%、BeO 10.29% Cr2O3 4.39% この組成の出発原料に対し、酸化リチウムと酸化モリブデン(Li2O-MoO3)系フラックスを添加混合するのだが、出発原料をフラックスで割った値をRとすると、0.2>R>0.1の範囲が最もよい結晶が得られる」などの記述があります。なお、この方法を掲載している特許はインターネット上で閲覧可能です。特許電子図書館の特許・実用新案公報DB
( http://www.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjsogodb.ipdl?N0000=101 )にアクセスし、文献種別を「B」、文献番号を「S48-023278」と入力して、「文献番号照会」のボタンをクリックしてください。全文閲覧することが可能です。この資料に紹介されている他の特許も同様に閲覧可能です。
一方、pp.125-133には人工オパールについて紹介されており、pp.128にはコモンウエルスらが特許(出願公告番号 昭43-30067号)を出願した製法が紹介されており、「この無定形のシリカは、珪酸ナトリウム溶液からイオン交換樹脂でナトリウムを取り除いて造るが、その時の溶液の温度、濃度、水素イオン濃度や脱水速度などの条件を変化させて、できてくる無定形シリカの直径を調整する。」との記述があります。
(4)『結晶工学ハンドブック』(共立出版 1971 【MC2-4】)
pp.1415-1416にエメラルドの合成法が紹介されています。アメリカのC.Chatham氏らが合成に成功した手法であると考えられるフラックス法や、アメリカLinde社による手法である熱水合成法などが紹介されています。それぞれの合成法で作られたエメラルドの表面構造などの特徴が紹介されています。
以上のほか、当館で契約している科学技術文献データベースであるJDreamⅡで、宝石の人工的な合成に関する文献を調査したところ、次の文献にエメラルドやオパールの合成法に関する記述がありましたのでご紹介します。エメラルドに関しては成分ごとの分量を詳細に示した文献がありましたが、オパールに関してはそこまで詳細な文献は見当たりませんでした。
(5) 和文標題:人工宝石の科学
著者名:磯上峯男
資料名:Journal of the Society of Inorganic Materials Japan
巻号ページ(発行年月日):Vol.19 No.298 Page.167-173 (2002.05.01)
当館請求記号:Z17-B79
各種宝石の合成技術の沿革を紹介しています。エメラルドの合成方法については、p.170に記述があり、フラックス法の特徴が述べられています。p.171にはオパール合成法の記述がありますが、「オパールの合成方法はノウハウの塊といってよく、その詳細な製造方法は特許にも出されていないのが実情である」との記述があり、詳しい製造方法には触れられていません。
(6) 和文標題:最近の合成宝石
著者名:中住譲秀
資料名:素形材
巻号ページ(発行年月日):Vol.29 No.9 Page.23-28 (1988.09)
当館請求記号:Z17-338
1988年当時の合成宝石の技術動向や特徴を紹介しています。p.26にエメラルドの合成方法が紹介されており、フラックス法による合成エメラルドの合成法概略図が示されています。p.27にはオパールについての記述があります。「オパールの製造方法に関しては勿論秘密のベールに包まれている」との記述がありますが、類推による合成方法は示されています。この類推によると、合成方法はアルコオキシド法と呼ばれる方法で、「エチールシリケートの懸濁液を加水分解して、アモルファス球状シリカを析出させ、それを長い時間をかけておだやかに沈降させる」というような手順が書かれています。
(7) 和文標題:特集2 結晶育成 エメラルド結晶のやさしい作り方
著者名:大石修治
資料名:セラミックス
巻号ページ(発行年月日):Vol.29 No.5 Page.417-420 (1994.05)
当館請求記号:Z17-206
フラックスを蒸発させてエメラルド結晶を作る方法を紹介しています。まず、「2. 結晶作りの準備」でフラックス法の概要やフラックス法に必要な装置などを紹介しています。「3. エメラルドの結晶作り」では、MoO3フラックス、MoO3-Li2O系フラックス、MoO3-B2O3系フラックスの3つのフラックスからの結晶育成方法をそれぞれ解説しています。実験の際に使用した各成分の分量と詳しい作成方法が記述されています。概要は以下のようになっています。
・MoO3フラックスからの結晶育成
粉末試薬
BeO 1.25g
AL2O3 1.7g
SiO2 6.02g
着色剤
Cr2O3 0.09g
上記を加えた混合物に、フラックスのMoO3(30.0g)を加え、再びよく混合し、その調合物を白金つるぼ(容量30.0cm3)に入れ、ふたをしたそのるつぼを電気炉に入れ、約45℃/hで1100℃まで加熱し、その温度で20時間保持し、その後冷却して生成した結晶を取り出す。
・MoO3-Li2O系フラックスからの結晶育成
3BeO・Al2O3・6SiO2組成(8.91g)にCr2O3(0.09g)を加えたものを溶質とし、MoO3(30.0g)にLi2O(2.25g)を加えてフラックスとする。両者を混合した調合物を白金るつぼに入れ、約45℃/hで1100℃まで加熱し、その温度で40時間保持し、その後冷却する。
・MoO3-B2O3系フラックスからの結晶育成
3BeO・Al2O3・6SiO2組成(8.91g)とCr2O3(0.09g)に、更にMoO3(30.0g)とB2O3(0.09g)を加えた調合物を白金るつぼに入れ、約45℃/hで1100℃まで加熱して30時間保持し、その後冷却する。
(8) 和文標題:宝石って、セラミックス!?京セラの宝石事業の展開
著者名:町田尚
資料名:セラミックス
巻号ページ(発行年月日):Vol.31 No.6 Page.498-500 (1996.06)
当館請求記号:Z17-206
京セラが手がけた再結晶宝石や人工オパールについて紹介しています。再結晶宝石については、エメラルドを例にとって、ベリル原鉱石を使用した製法が概説されています。また、人工オパールについても簡単に説明があります。しかし、いずれも説明は簡易なもので、詳細な製法については触れられていません。
(9) 和文標題:宝石って、セラミックス!?焼結法による宝石の合成と特性
著者名:中住譲秀
資料名:セラミックス
巻号ページ(発行年月日):Vol.31 No.6 Page.498-500 (1996.06)
当館請求記号:Z17-206
オパールその他の非単結晶宝石について解説されています。オパールの合成法についても記述があります。合成法であるアルコキシド法の簡単な手順が書かれています。
(10)和文標題:人工宝石の育成―エメラルドからオパールまで―
著者名:磯上峯男
資料名:材料の科学と工学
巻号ページ(発行年月日):Vol.44 No.3 Page.89-94 (2007.06.20)
当館請求記号:Z14-778
京セラで開発している人工宝石の概要を紹介しています。冒頭に「商品の性格上、製法に関して詳細を開示できないことをお許し願いたい」とあり、詳細な説明はありませんが、エメラルドとトパーズの人工育成に関する記述があります。エメラルドについては、フラックス法で約1400℃の高温域からベリル生成温度の下限である900℃以下に冷却し、続いてベリル生成温度上限の1150℃に加熱するなどの過程により、良質なエメラルドが合成できたとの記述があり、合成できたエメラルド結晶のカラー写真が掲載されています。一方、オパールについては、非晶質の珪酸球を水溶液中で自然沈降させ、規則正しく積層配列した珪酸球を自然乾燥させた後、この乾燥物を高温で焼結し珪酸球の3次元配列構造体を得るという、従来の作成方法の欠点を補うために、珪酸球の粒径のばらつきを調整し、3次元配列させた非晶質珪酸球間の空孔に、特殊な材料を充填させたことなどが記述されています。
※インターネットの最終アクセス日は2008年3月7日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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『ダイアモンド博物館』アグネ技術センター
『ワインと宝石』山梨日日新聞社出版局
『窯業の事典』朝倉書店
- NDC
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- セラミックス.窯業.珪酸塩化学工業 (573 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 人造石
- 宝石
- 人工エメラルド
- 人工オパール
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- NDC副出:459
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000049318