レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/02/09
- 登録日時
- 2021/03/10 00:30
- 更新日時
- 2021/03/10 00:30
- 管理番号
- 6001048556
- 質問
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解決
明治時代にあった有楽園という遊園地について知りたい。
- 回答
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有楽園については、次の資料に記載がある。
■『キタ 中之島・堂島・曽根崎・梅田 風土記大阪』(宮本又次/著 ミネルヴァ書房 1964)
「鶴の茶屋と九階」の項(p.352-354)に次の記述がある。
「北野茶屋町、いまの梅田小学校のあたりに九階、凌雲閣が明治22年に落成した。(中略)二百坪ばかりの地にはボート・温泉場・大弓場・料理屋などがあり、都人士の遊楽場であった。『大阪繁昌誌』下巻(明治31年6月)には凌雲閣について次の如くのべている。『北郊に聳ゆる九層の楼閣なり、一名を有楽園といふ。(後略)』」(p.352-353)
引用されている『大阪繁昌誌』は、次の資料で確認できる。
■『大阪繁昌誌 復刻版』(宇田川文海,長谷川金次郎/編[著] 新和出版社 1975)
明治31年刊の上・下合冊本の複製。p.230-231「凌雲閣」の項に次の記述がある。
「凌雲閣 北郊に聳ゆる九層の楼閣なり、一名を有楽園といふ、堂島の人檀重三氏が、明治廿一年三月上棟式を行ひ、粗落成するに及びて現今の所有者、鷲尾宇兵衛氏に譲る、九階の第一層は百坪にして、高さ廿三間なり、苑内広く、四時の花木を栽て人目を楽ましむ、縦覧人一ヶ月平均五百人に上るといふ」
■『倶楽部と日本人 人が集まる空間の文化史』(橋爪紳也/著 学芸出版社 1989.3)
p.126で有楽園について触れられている。
「明治二二年、北野村車茶屋に造られたのが『北の九階』凌雲閣である。(中略)この高楼も有楽園と称する遊園地の一施設として建てられたものであって、複合的な娯楽センターとでもいうべき構成をとっていた。」
これらの記述から、「有楽園」の中心的な施設が「北の九階」と呼ばれた凌雲閣であったことがわかる。「北の九階」凌雲閣については、次の資料にも記述があった。
■『大阪の世相(毎日放送文化双書)』(岡本良一/著 毎日放送 1973.11)
「近代・現代(明治・大正・昭和)」に「北の九階『鷲乃家』の出現」(p.313-318)の項があり、大阪城天守閣が所蔵する、北の九階の全景図をもとに次の記述がある。
「この絵図は水彩で彩色も美しく、軽妙闊達な筆致でいわゆる北の九階を詳細に鳥瞰図として描いたもので(中略)、これによって、北の九階として知られる凌雲閣が、じつはそれだけ単独に建っていたのではなくて、『鷲乃家』と名のる遊園地ふうの広大な施設の中心にそびえる一つの塔のことだったのだということがはっきりする。」(p.315-316)
なお、この絵は、次の資料に掲載されている。
■『明治大正図誌 11 大阪』(筑摩書房 1978.9)
p.54に「[図版]190 北の九階(橋爪京二筆)」とのキャプションがある絵が掲載されている。巻末の「収録図版一覧」には「190 橋爪京二 北の九階 大阪城天守閣」との記載がある。
■『明治の迷宮都市 東京・大阪の遊楽空間 イメージ・リーディング叢書』(橋爪紳也/著 平凡社 1990.5)
「第三章 世俗の塔の誕生」(p.61-96)に凌雲閣について触れた箇所があり、次の記述がある。
「おそらく『南の五階』の人気に便乗しようとしたのであろう。翌明治二二年、堂島浜通りの壇重三という人物によって、北野村車茶屋に『北の九階』と通称される九層楼凌雲閣が建設された。」(p.85)
■岩井正也/著「画家や文士が集った町 茶屋町界隈の昔」『大阪春秋』35(4)<129>(新風書房 2008.1)p.84-88
凌雲閣についての次のような記述がある。
「全体の面積は三千九百坪とあり、NU茶屋町の南側通りから梅田東生涯学習ルームにかけての区画ほぼ全体に広がっていた。」(p.87)
「雑誌『上方趣味』は編集兼発行人渡邊亮が、江戸趣味に対する上方趣味の気炎を上げたいという熱い思いから創り出した雑誌である。その編集部はもとの凌雲閣の地にあった。創刊号大正四年四月の『春の巻』から大正五年一月の『新春の巻』まで、編集兼発行人は『大阪市北区茶屋町二百四十三番地 渡邊亮』、発行所は『大阪市北区茶屋町二百四十三番地(旧九階内) 上方趣味社』であった。」
「旧九階内」とあることから、大正4年にはすでに凌雲閣は営業を終えていたのかもしれない。
■『おおさかタイムトンネル 浪速写真館』(読売新聞大阪社会部/編 朋興社 1985)
p.21-24に「キタの九階 今風レジャー施設 相通じる遊びの心」の項があり、凌雲閣の写真が掲載されている(p.23)。
[事例作成日:2021年2月9日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 観光事業 (689 10版)
- 参考資料
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- キタ 宮本/又次∥著 ミネルヴァ書房 1964 (352-353)
- 大阪繁昌誌 宇田川文海,長谷川金次郎編[著] 新和出版社 1975 (230-231)
- 倶楽部と日本人 橋爪/紳也∥著 学芸出版社 1989.3 (126)
- 大阪の世相 岡本/良一∥著 毎日放送 1973.11 (315-316)
- 明治大正図誌 11 筑摩書房 1978.9 (54)
- 明治の迷宮都市 橋爪/紳也∥著 平凡社 1990.5 (85)
- 大阪春秋 新風書房 新風書房 35(1-4)<126-129>
- おおさかタイムトンネル 浪速写真館 読売新聞大阪社会部∥編 朋興社 1985 (23)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 大阪
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000294980