レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年7月8日
- 登録日時
- 2022/07/20 13:42
- 更新日時
- 2024/03/21 17:02
- 管理番号
- 吹-40-2023-003
- 質問
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解決
大阪土(おおさかつち)を使用した土壁の色がわかるカラー写真が見たい。
- 回答
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大阪土を使用した土壁の写真が載った下記資料(1)~(4)を提供した。
(1)『左官超実用テクニック読本』(浅井健治/[ほか]著 エクスナレッジ 2001.9)
大阪土を使用した壁の一部分だけを写した写真あり。
桂離宮・中書院(かつらりきゅう・ちゅうしょいん)ニノ間北側小壁 p4
大徳寺玉林院・茶室蓑庵(だいとくじぎょくりんいん・ちゃしつさあん)床ノ間 p4
二条城・本丸御常御殿(にじょうじょう・ほんまるおつねごてん)内壁 p5
大阪土の説明あり。p32
「大阪天王寺付近より産出した土の名称で、天王寺壁の異称があるが、現在では採取ができなくなった。京都では伏見大亀谷付近よりよく似た土が産出したので、それを大阪土として使用している。じゅらく土と同様水ごね上塗り、糊ごね上塗りに使用される」
大阪土の色土の写真と説明あり。 p110
「色土は、粘板岩、泥板岩、泥岩などが風化してできる、さまざまな色彩をもつ土で、日本壁の上塗りに使われる。」
(2)『日本の壁』(山田幸一/編著、井上博道/写真 駸々堂出版 1982)
大阪土を使用した壁の写真がp9からの図版にあり。
●桂離宮
中書院 図版15~図版17
古書院囲炉裡ノ間(こしょいんいろりのま) 図版18
笑意軒(しょういけん) 図版19~22
松琴亭(しょうきんてい) 図版23
賞花亭(しょうかてい) 図版24
月波楼(げっぱろう) 図版25~26
図版解説 桂離宮p223~p224
「1 殿舎群の壁」に「中書院と新御殿が大阪土切返しである。」「古書院に含まれる「囲炉裡ノ間」は大阪土切返し」、」との記述あり。
切返しについてはp186「切返し壁」によると、木造の高級建築の左官工事では、壁の上塗り前に養生期間をとるが、見た目が悪いときに「一時的にかりの上塗として塗られるのが切返し壁」で仕上げが良いものは上塗をしない場合もあり、「桂離宮の中書院と新御殿の壁は、あたかも現行の切返し仕舞に相当する仕上げであるが(図版15~17参照)、この場合は江戸時代までの材料・工具などの水準からいって、これが当時最高上塗と考えられていたのであろう。」という記述あり。
「2 茶亭の壁」に「庭園の点在する茶亭笑意軒・松琴亭・賞花亭・月波楼でも、内外壁に豊富な土壁が用いられている。」「茶亭の壁は大阪土系の仕上がほとんどである。」との記述あり。
●玉林院茶室 図版29~図版31
図版解説 大徳寺玉林院p226
蓑庵の茶室について「三畳中板の平面を持つ規矩(きく)にかなった草庵茶室であるが、その壁は長苆(ながすさ)を扱って無双の逸品である。すなわち、赤褐色大阪土系の引摺り状粗面を地として、その上に長さ一〇センチ内外の藁を置いたものであるが、その藁は床ノ間内部も含めて内壁にくまなく分布し、あたかも全面に松葉を散らしたかの感がある。」との記述あり。
●角屋・緞子ノ間(すみや・どんすのま) 図版51
図版解説 角屋p232
「「緞子の間」は大阪土水ごねの典型で、ここに見る上塗は昭和四六年に塗替えられたものである。」との記述あり。
(3)『日本の壁』(Inax 1985)
桂離宮/中書院ニノ間北側小壁 「大阪土の切返し仕舞」との記述あり。p17
桂離宮/笑意軒外壁 「大阪水ごね仕上げ」との記述あり。p17
大徳寺玉林院茶室/蓑庵/床の間 「赤褐色大阪土系」との記述あり。p18
(4)『角屋』(西川孟/[ほか]著 中央公論社 1983.2)
「角屋-図版冊」に写真あり。「角屋 付録2 角屋の研究 解説・資料」に写真の解説あり。
●緞子の間の写真 写真59~71
緞子の間以外で、大阪土使用の記述のあった写真
●門口より中戸口望見(なかどぐちぼうけん) 写真2
解説p136に「俗に大坂(阪)土といわれる錆土真壁の丁寧な仕様は、派手さをおさえた粋の構え」との記述あり。
●二階囲正面内観(にかいかこいしょうめんないかん) 写真115
解説p184に「全面大坂土水鏝(こて)仕上げの派手な錆色で意匠された小座敷」との記述あり。
- 回答プロセス
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はじめに大阪土について辞典で調査した。『日本国語大辞典 第2巻(第2版)』(小学館国語辞典編集部/編集 小学館 2001.2)p928には「壁の上塗りに用いる赤みを帯びた黄色の土。これで壁を塗ることが、大阪地方から起こったところからいう。」との記述あり。当館の有料データベース「ジャパンナレッジ」では「壁の上塗りに使う、赤みを帯びた黄色い土。大坂の四天王寺付近のものが上等とされた。」とあった。
当館の検索機で、キーワード「大阪土」で検索したが、該当資料がなかったので、キーワードを変更して探した。
「土壁」のキーワードと「52」(NDC建築学)の分類をかけあわせて検索し、回答欄(1)で大阪土を使用した桂離宮、大徳寺玉林院と二条城の土壁の写真を見つけた。(以下、( )付き数字は回答欄に挙げた資料の通し番号)
「左官」のキーワードと「52」(NDC建築学)の分類をかけあわせて検索し、(2)で大阪土を使用した桂離宮と玉林院、角屋の壁の写真を見つけた。
「壁」のキーワードと「524」(NDC建築構造)の分類をかけあわせて検索し、(3)で大阪土を使用した桂離宮と大徳寺玉林院の写真を見つけた。
「角屋」のキーワードで検索したところ、(4)に(2)にも掲載があった緞子の間を複数撮影した図版が掲載されているのを見つけた。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本の建築 (521 7版)
- 建築構造 (524 10版)
- 建築計画.施工 (525 10版)
- 参考資料
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浅井賢治 [ほか] 著 , 浅井, 賢治. 左官超実用テクニック読本. エクスナレッジ, 2001. (建築知識「超実用」シリーズ, 1)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I004825399-00 , ISBN 4767801117 -
山田幸一 編著 , 井上博道 写真 , 山田, 幸一, 1925-1992 , 井上, 博道, 1931-2012. 日本の壁. 駸々堂出版, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001561183-00 -
伊奈ギャラリー企画委員会 企画 , 伊奈製陶株式会社. 日本の壁 : 鏝は生きている. INAX東京ショールーム, 1985. (Ina booklet ; vol.5 no.2)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001763151-00 -
西川孟写真 ; 内藤昌解説 , 西川, 孟 , 内藤, 昌. 角屋 [本編],付録 1,付録 2. 中央公論社, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007490095-00 -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第2巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002966612-00 , ISBN 4095210028
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浅井賢治 [ほか] 著 , 浅井, 賢治. 左官超実用テクニック読本. エクスナレッジ, 2001. (建築知識「超実用」シリーズ, 1)
- キーワード
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- 大阪土
- 大坂土
- 土壁
- 左官
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000319005