①『いくらかな?社会がみえるねだんのはなし 2 いのちと福祉のねだん』には、AEDについて、「自動体外式除細動器のことで、Automated(自動化された)、External(体外式の)、Defibrillator(除細動器)の頭文字をならべ、略してAED(エー・イー・ディー)と呼んでいる。心臓がけいれんすると、全身に血液を送りだせなくなり、そのままにしておくと死んでしまう。AEDはいのちを救うために、心臓に電気ショックを与えて心臓の動きをいったんとめて、正常なリズムにもどすための機械だ。」と説明がある。
AEDの救命率については、「日本では、年間約7万人(学校では約15人)、1日200人、7.5分に1人が心臓突然死で亡くなっている。たおれてから何もしないと、1分ごとに救命率は10%ずつ下がっていく。救急車がくるまでそのままにしておくと、9.2%の人しか助からないが、心臓マッサージをすると1.8倍の16.1%、さらにAEDを使うと約6倍の54.0%と半数以上の人が助かるようになる。」と記載されている。
AEDの普及状況については、「駅や学校、電車、飛行機、公共施設、マンションの入り口など、日本国内には約65万台(2015年)のAEDが設置されている。1平方キロメートルあたり1.7台、1000人あたり5.1台という割合になる。設置場所はインターネットの「日本救急医療財団AEDマップ」で検索できる。日本は世界でもAEDを多く設置しているほうだが、都道府県別の設置割合をみると自治体によって2倍以上の差がある。」と記載されている。
AEDの使用率については、「実際に電気ショックが行われたのはAEDが必要な場合の4%にすぎない。使い方がわからない、電池交換ができていないなども、使用率が低い原因だ。設置するだけでなく、講習会などで使い方を知っておくことも大切だ。AEDは、すぐに使えてこそいのちを救う。」と記載されている。また、「AEDの都道府県別普及率(1000人あたりの台数・2014年・日本心臓財団)」が掲載されている。
②『いざというとき使えるために緊急のものトリセツ図鑑 3 まちのなか』には、心臓が止まった人が助かる可能性を示す救命率の時間ごとの変化を表したグラフが掲載されている。そして、「胸骨圧迫やAEDの使用が1分遅れるごとに、救命率は約10%ずつ低下していきます。119番通報をしてから救急車が到着するまでの平均時間は、8.6分。交通渋滞によっては、もっと遅れる可能性もあります。」、「救急車が病院に到着するころには、助かる可能性がとても低くなっています。」と解説があり、「何もせずに待っているのと比べ、胸骨圧迫を行うことで約2倍、さらにAEDも使用することで約6倍、救命率が上がるというデータもあります。」と記載がある。
③『いのちを救いたい救急救命24時 3 最先端!救命の技術と装備』には、②と同様の、救命率の時間ごとの変化を表したグラフが掲載されている。
そのほか、④『子どもの救急大事典』、⑤『ぱっと見てわかる!はじめての応急手当 3 命をまもる応急手当』、⑥『すぐに役立つ救急手当 3 災害編』、⑦『分解する図鑑』、⑧『みんなで防災アクション! 3 けがや熱中症から身を守ろう』、⑨『子どもがかかりやすい病気とけがの大事典』のAEDに関する項目を確認したが、AEDの救命率、普及状況、使用率について、①~③以上に詳しく記載されている資料は見つからなかった。
なお、児童書ではないが、国立国会図書館のレファレンス協同データベースでキーワードを「AED」と入力して検索したところ、国立国会図書館の事例(作成日:2018年04月12日 管理番号C2018口頭0404 )がヒットする。これを参考に、⑩『災害と防災・防犯統計データ集 2020-2021』を確認したところ、p.346に、「一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者のうち、除細動実施の有無別の生存率(2006年~2017年)」という表が掲載されている。
さらに、この事例を参考にして、総務省消防庁のサイトの中の⑪「平成30年版救急・救助の現況」の「救急編」を確認すると、前述の表がp.99に掲載されている。p.98にはその表の解説があり、「平成29年中に一般市民が心原性心肺機能停止の時点を目撃した傷病者2万5,538人のうち、一般市民により除細動が実施された傷病者の1ヵ月後生存率は53.5%となっており、一般市民による除細動が実施されなかった傷病者(適応でなかった傷病者含む。)の1ヵ月後生存率11.4%と比較して約4.7 倍高くなっている。また、一般市民により除細動が実施された傷病者の1ヵ月後社会復帰率は45.7%であり、一般市民による除細動が実施されなかった傷病者(適応でなかった傷病者含む。)の1ヵ月後社会復帰率6.8%と比較して約6.7 倍高くなっている。さらに平成20年と比較すると、一般市民により除細動が実施された傷病者の1ヵ月後生存率、1ヵ月後社会復帰率は、それぞれ9.7%、7.5%上昇している。」という、救命率に関連する統計が記載されている。
⑫児童書ではないが、公益財団法人日本心臓財団のサイトの中の「AEDの普及状況」には、「AEDの販売台数の累計(平成16~28年)」が記載されている。「本調査はAED製造販売業者の協力による、AEDの販売(出荷)台数の調査であり、設置台数とは異なる。AED製造販売業者の把握するPADの廃棄台数は累計97,370台(実際の廃棄台数と異なる)であり、上記PAD販売累計台数688,329台から廃棄台数を引いた590,959台が、より設置台数に近い数値となる。」という、解説がある(→「PAD」とは「公共施設など一般市民が使用できるAED」のこと)。この統計の参考文献は、「田邉晴山・横田裕行:AEDの販売台数と設置台数の調査に関する研究。平成28年度厚生労働科学研究費補助金研究報告書「心臓突然死の生命予後・機能予後を改善させるための一般市民によるAEDの有効活用に関する研究」(研究代表者:坂本哲也 帝京大学救急医学講座教授)より作成。」と記載されている。
⑬児童書ではないが、公益財団法人AED財団のサイトの中の「AEDの知識」にも、資料②と同様の、救命率の時間ごとの変化を表したグラフが掲載されている。
また、胸骨圧迫とAEDの効果を表す救命率のグラフ(総務省消防庁「令和2年版救急・救助の現況」)も掲載されていて、「119番通報をして救急隊の到着を待っていたのでは9.3%の人しか救命できません。しかし、胸骨圧迫をすることで2倍、さらにAEDを用いた電気ショックが行われることで、突然の心停止の半数以上の人を救えます。」と掲載されている。
さらに、AEDの使用率のグラフ(総務省消防庁「令和2年版救急・救助の現況」)も掲載されていて、「倒れる瞬間を目撃された心停止の中でも、約半数は心肺蘇生を受けておらず、更に、AEDによる電気ショックが行われたのはたった5.1%です。」と記載されている。