レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2008年10月03日
- 登録日時
- 2023/05/04 17:12
- 更新日時
- 2023/05/17 09:07
- 管理番号
- 遠野-2008-03
- 質問
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解決
遠野の蛇の生態や信仰、伝承について書かれている資料はあるか。
- 回答
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遠野の蛇の生態については『民話の里遠野の動物300態』を、信仰や伝承については『遠野物語』『遠野物語拾遺』『遠野物語辞典』を紹介。
- 回答プロセス
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<所蔵資料からの調査>
【生態】
『民話の里遠野の動物300態』(時田克夫 岩手日報社 1997)p200に「シマヘビ」の欄があり、シマヘビの解説の中に「ヤマカガシ」の記述もある。
【信仰】
蛇の信仰については『遠野物語辞典』(石井正巳 岩田書院 1997)に説明がある。
『遠野物語辞典』(石井正巳 岩田書院 1997)p42の「蛇」の項より
「蛇は『遠野物語』のなかで、殺すと祟ると畏れられながらも、殺されることが多い。蛇を恐れるあまり殺すのだろうか、それによって祟られて死ぬという話は見られるが、噛まれてその毒によって死ぬという話は見られない。この蛇という生き物への畏れが、祟りや具体的な恐怖として現れ、時には転じて神となり吉兆にもなるのであろう。また、「大蛇」「蛇」「小蛇」と区別して認識されているが、大蛇だから祟りが恐ろしいと言うことはないようで、蛇の種類と大きさは問題とされていない。」
【伝承】
『遠野物語辞典』p42~p44の「蛇」の項によると、蛇または蛇に関連する話が『遠野物語』の第20話と第69話に『遠野物語拾遺』では複数ある。(遠野物語拾遺の30話、31話、32話、34話、44話、46話、105話、124話、125話、142話、143話、144話、179話、180話、181話、182話、228話、251話、255話、290話、297話)
≪蛇の話の主なもの≫
<祟りの話>
『遠野物語』より
第20話
凶変の前兆として、秣(まぐさ、馬・牛などの飼料とする草)の下にいた蛇を「殺すな」という主人の言いつけを聞かずに男たちが蛇を殺してしまい、そのあと秣の下から無数の蛇がわいてきたという話が書かれている。
『遠野物語拾遺』より
第181話 先祖の霊
「家のあたりにでる蛇は殺してはならぬ。それはその家の先祖の人だからと言う。」とあり、家の辺りにでた蛇を殺してしまって祟られた話が書かれている。
第182話 ノズチ
馬沓ほどもある胴の蛇が、片沢というところに草刈りに入ってきた男を睨んだため、決して草刈りに入らないで祠も建てるから祟らないでくださいと言って帰り、その後の祟りはなかったが、その男の何代かあとの子孫が、この話を馬鹿にして、片沢に草刈りに入ったところ、この蛇に遭遇し祟られてしまい、すぐに病んで死んでしまった。という話が書かれている。
<名刀の話>
『遠野物語拾遺』より
第143話
小友村のきわめて富貴の家の主人が、ある時で家伝来の刀をさして遠野町へ出かけその帰りに小友峠の休石に腰をかけて休み、その後出発したところ、刀を忘れて家に帰ってきた。それに気づいた主人は、下人に刀を取りに行かせたところ、見るも恐ろしい大蛇がいて近寄ることもできず帰り、下人は大蛇のことを主人に伝えた。それで主人自ら行ってみると蛇と見えたのは置き忘れた名刀だった。という話が書かれている。
第144話
遠野の藩士に大酒のみで酔うと所かまわず寝てしまう者がいた。あるとき猿ヶ石川の岸の近くで例の如く酔い伏していたところ、悪戯しようと近づく者がいて、近づいたところ赤い蛇がそこら中這いまわり恐ろしくて近づけなかった。そのうち侍が目を覚ますと蛇はたちまち刀となって腰に佩かれていったという話が書かれている。
<幸運な話>
『遠野物語拾遺』より
第228話
爺が仕事に出かけた際、大蛇に体ごとを呑まれたが、腰に差していた鎌のために蛇は唇を切られ死んでしまい、爺は蛇の腹から這い出すことができて助かったという話が書かれている。
第255話
「(前略)蛇に逢えばその日は吉、またその蛇が道切りであって、右手から出て来た時は懐入りといって、金が入るという。」という話が書かれている。
- 事前調査事項
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388 8版)
- 参考資料
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時田克夫 写真・文 , 岩手日報社出版部 企画・編集 , 時田, 克夫, 1931- , 岩手日報社. 民話の里遠野の動物300態. 岩手日報社, 1997.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002638949-00 , ISBN 4872012178 -
石井正己 監修 , 青木俊明 [ほか]編 , 石井, 正己, 1958- , 青木, 俊明, 1977-. 遠野物語辞典. 岩田書院, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004226872-00 , ISBN 4872942892 -
柳田国男 著 , 柳田, 国男, 1875-1962. 遠野物語. 大和書房, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002010946-00 , ISBN 4479880127 -
柳田国男 原著 , 佐藤誠輔 訳 , 柳田, 国男, 1875-1962 , 佐藤, 誠輔, 1928-. 遠野物語拾遺 : 新訳. 佐藤誠輔, 2017.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028736517-00 -
柳田国男 [著] , 佐藤誠輔 口語訳 , 柳田, 国男, 1875-1962 , 佐藤, 誠輔, 1928-. 遠野物語 : 口語訳. 河出書房新社, 1992.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002191980-00 , ISBN 4309007678
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時田克夫 写真・文 , 岩手日報社出版部 企画・編集 , 時田, 克夫, 1931- , 岩手日報社. 民話の里遠野の動物300態. 岩手日報社, 1997.
- キーワード
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- 蛇
- 遠野物語
- 遠野物語拾遺
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000332860