レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/06/06
- 登録日時
- 2023/07/30 00:30
- 更新日時
- 2023/07/30 00:30
- 管理番号
- 6001061115
- 質問
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解決
平安時代中期において、天皇の政治的な権力は絶対的であったことを示す文献や法律を知りたい。
- 回答
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平安時代中期とは、貴族が力を持つ摂関時代、10世紀から11世紀中頃までと捉え、「平安時代」「古代」「摂関」「天皇」等のキーワードで検索した本や論文を中心に調査。
天皇の政治的な権力は絶対的であったことは次の資料に書かれている。
・『天皇と古代国家(講談社学術文庫1418)』(早川庄八/[著] 講談社 2000.2)
p.129-130 第三章 天皇と太政官の権能 「日本の律令には、天皇の意志あるいは行為を制約ないし拘束するような条文は、まったく存在しない。それどころか逆に、天皇の権限は無制限であるとする字句と条文が、律と令にそれぞれ一つずつ、それとなく配されている。名例律18除名条疏文の「非常の断は、人主これを専らにす」という字句と、考課令64官人犯罪条の「凡そ官人罪を犯して、勅断軽重あらば、みな勅断によりて殿につけよ」という条文がそれである。ともに犯罪の処罰についていうものであるが、前者では、律の規定に拘束されない非常の断を行なうことができるのは、人主すなわち天皇のみであるとし、後者では、そうした天皇の裁断すなわち勅断に軽重のあるときも、あくまでも勅断にしたがわなければならないとする。天皇の権限は絶対であり、律令を超越しているのである。そしてこれが、律令法上の天皇の位置づけであった。」
・『岩波講座日本通史 第6巻 古代5』(朝尾直弘/[ほか]編集委員 岩波書店 1995.4)
玉井力「通史 10-11世紀の日本-摂関政治」(p.[1]-72)の「四 政務の様相 5議定について」(p.46-47)に次の記載がある。
p.46「重大なことには議定を行うという意識は当時の公卿に浸透していた。しかし決定権は常に天皇または摂政にあり、彼らが議定の結果を拒否することも皆無ではなかった(『小右記』寛仁三年七月一五日条)。制度的には九世紀以来、後三条朝まで変化がない。」
・坂本 祐里「平安時代中期の国家意思決定と権力構造」『市大日本史』12 (大阪市立大学日本史学会 2009.5)p.86-117
https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/il/meta_pub/G0000438repository_111E0000017-12-4(2023/6/6現在)
p.95 「国家に関することを決定するには、議題提出権者[天皇]による議題の提出を待たなければならず、基本的には天皇がいなければ国家は運営されないということになるのである。」
p.114 「制度的側面で中心的な役割を担っているのは、やはり天皇である。天皇は議題提出権と国家意思の最終決定権という二つの独自の権力を有しており、これらの権力を、基本的には天皇自らが実質的に行使しているからである。」
・今 正秀「摂関政治と天皇―円融天皇期を事例に―」『高円史学』巻 16(高円史学会 2000.10.1)p.1-14
http://hdl.handle.net/10105/8774(2023/6/6現在)
p.3 叙位・除目を含む人事に関する事例では、「天皇が候補者名を示し、関白の意見を聞くというものが多い。ただし、関白の意見はあくまで天皇の決裁のための参考意見なのであって、最終的決定権は天皇が有していることはいうまでもない。」
p.9 「これまでは、天皇が政務を決裁するために関白に諮問し、それをもふまえて政務を決裁し、それに基づいた具体的処置を上卿に命じるという場合を見てきた。『小右記』の当該箇所からは、天皇自身が発意したり、あるいは、対応を迫られた事態について関白に相談することなく、独自に判断を下すなど、政務に取り組んでいる様子をうかがうことができる。」
平安時代中期における法律、養老律令について書かれた資料は次のとおり。
<条文>
・『日本思想大系 3 律令』(井上光貞/[ほか]校注 岩波書店 1976)
・『国史大系 [10] 律 新訂増補 普及版 』(黒板勝美/編 国史大系編修会/編 吉川弘文館 1974)
・『国史大系 [11] 令義解 新訂増補 普及版』(黒板勝美/編 国史大系編修会/編 吉川弘文館 1976)
『養老令』の公的な注釈書
・『国史大系 [12] 令集解 第1 新訂増補 普及版』(黒板勝美/編 国史大系編修会/編 吉川弘文館 1976)
『養老令』の私的な注釈書集成
・『国史大系 [13] 令集解 第2 新訂増補 普及版』(黒板勝美/編 国史大系編修会/編 吉川弘文館 1974)
・『国史大系 [14] 令集解 第3 新訂増補 普及版』(黒板勝美/編 国史大系編修会/編 吉川弘文館 1974)
・『国史大系 [15] 令集解 第4 新訂増補 普及版』(黒板勝美/編 国史大系編修会/編 吉川弘文館 1974)
<周辺情報>
・『律令政治の諸様相(塙選書64)』(野村忠夫/著 塙書房 1968)
p.17-76「序章 養老律令の編纂」
・『日本古代史の基礎的研究 下 制度篇』(坂本太郎/著 東京大学出版会 1964)
p.20-40 「養老律令の施行について」
・『律令の研究』(滝川政次郎/著 刀江書院 1966)
p.194-248 「第五章 養老律令」
・『律令制とその周辺 続(慶応義塾大学法学研究会叢書 35)』(利光三津夫/著 慶応通信 1973)
・『日本の歴史 4 律令国家』(小学館 1978)
[事例作成日:2023年6月6日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 10版)
- 参考資料
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- 天皇と古代国家 早川/庄八∥[著] 講談社 2000.2 (129-130)
- 岩波講座日本通史 第6巻 朝尾/直弘‖[ほか]編集委員 岩波書店 1995.4 (46)
- 日本思想大系 3 岩波書店 1976
- 国史大系 [10] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1974
- 国史大系 [11] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1976
- 国史大系 [12] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1976
- 国史大系 [13] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1974
- 国史大系 [14] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1974
- 国史大系 [15] 新訂増補 普及版 黒板/勝美∥編 吉川弘文館 1974
- 律令政治の諸様相 野村/忠夫∥著 塙書房 1968 (17-76)
- 日本古代史の基礎的研究 下 坂本/太郎∥著 東京大学出版会 1964 (20-40)
- 律令の研究 滝川/政次郎∥著 刀江書院 1966 (194-248)
- 律令制とその周辺 続 利光/三津夫∥著 慶応通信 1973
- 日本の歴史 4 小学館 1978
- https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/il/meta_pub/G0000438repository_111E0000017-12-4 (平安時代中期の国家意思決定と権力構造『市大日本史』12 (2023/6/6現在))
- http://hdl.handle.net/10105/8774 (摂関政治と天皇―円融天皇期を事例に―『高円史学』巻 16(2023/6/6現在))
- キーワード
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- 平安時代(ヘイアンジダイ)
- 天皇(テンノウ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000336564