レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年03月07日
- 登録日時
- 2023/03/07 17:50
- 更新日時
- 2023/11/12 10:21
- 管理番号
- 岐市図-033
- 質問
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未解決
『歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語』イヴァン・ジャプロンカ著に出てくる言葉「火吹き人」「小天使」「小都市圏」の読み方を教えてほしい。
- 回答
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正確な読み方は分からなかった。
質問者には、調査に使用した資料を基に「このような読み方をすることもできる」と参考程度にお伝えした。
① 火吹人について
国語辞典、漢字辞典等を確認したが「火吹き人」の読み方、意味は記載されていなかった。
従って、「火吹き人」は造語であると考えられる。
造語における「人」の読み方について調べたところ以下の記述があった。
『造語成分「人(ニン)」と「人(ジン)」の特徴と熟語の意味』大槻美智子/2014より引用
(https://osakaohtani.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=189&file_id=22&file_no=1)
1. ニンは和語とも結合するが、ジンは結合しない
2. ニンは用言類の語基としか結合せず、ジンは体言類および相言類の語基としか結合しない。
3. ニンと結合する語基はすべて〈動作〉をあらわし、ジンと結合する語基は、〈場所〉、〈時〉、〈活動〉、〈精神〉をあらわす語基および相言類の状態をあらわす語基としか結合しない。
4. ニンは〈数詞〉と結合し、ジンは〈地名〉と結合する。その逆はない。
「火吹き」はヒフキと読む。
名詞であり、意味は火を吹きおこすのに用いる道具。
『日本国語大辞典 第11巻』(小学館国語辞典編集部/編集/2001年)
「火」は音読みではカ(漢呉)、訓読みではヒ・ホ
「吹」は音読みではスイ(漢呉)訓読みではフク
『角川新字源』(小川 環樹/編/2017年)
「火吹」は「火」「吹」どちらも訓読みであるため、和語だといえる。
「火吹」の意味は「火を吹きおこすのに用いる道具」である、動作をあらわす語基だといえる。
→従って「火吹」は1、3に該当すると考えられ、これらを踏まえると「火吹人」はヒフキニンと読めると考えられる。
②小天使、③小都市圏について
国語辞典、漢字辞典等を確認したが「小天使」「小都市圏」の読み方、意味は記載されていなかった。
従って、造語であると考えられる。
造語における「小」の読み方の違いについて調べたが、「小」の読み方について言及されている資料は見つからなかった。
しかし、「小」の対義語である「大」の読み方の違いについて記載されている資料があった。
「原則として、「大」のあとに漢語(音読み)がくると、[ダイ]、和語(訓読み)がくると[オー]だとされている。」
『NHKことばのハンドブック』(NHK放送文化研究所/編/第2版/2005年)
対義語である「小」にも同様の方法が当てはめられると考えると、
小天使
「天」は音読みではテン(漢呉)、訓読みではアメ・アマ
「使」は音読みではシ(漢呉)、訓読みではツカう
→「天使」テンシは音読みであるため漢語といえる。
小都市圏
「都」音読みでト(漢呉)ツ(呉)、訓読みではミヤコ
「市」音読みではシ(漢)、訓読みではイチ
「圏」音読みではケン(漢)
→「都市圏」は音読みであるため漢語といえる。
上記に従って「小天使」は「ショウテンシ」、「小都市圏」は「ショウトシケン」と読むことができると考えられる。
しかし、「小」の読み方の違いについて記載された資料はなく「大」の読み方の方法を引用して考えられる読み方であるため、正確な答えとは言えない。
利用者には参考程度に伝えた。
その他、「小都市圏」や「小天使」を書名とする資料はどのような読みで登録しているのか確認したところ、「小都市圏」は「ショウトシケン」と表記していた。
「小天使」は「ショウテンシ」「コテンシ」「エンゼル」「プチ・アンジェ」など様々な読み方で表記がされていた。
- 回答プロセス
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国語辞典、漢字辞典の813の棚をブラウジングして確認したが、「火吹き人」「小都市圏」「小天使」が記載されている辞書はなかった。
『点訳ナビゲーター 点訳者のための点字表記検索システム』(https://ten-navi.naiiv.net)で検索をしたがヒットしなかった。
これらを踏まえて、造語であると考えられるため「人」「小」の読み方について調べた。
『日本語文法百科』(沖森 卓也/編/2021年)で「小」は接頭語であることが分かったが、「小」の読み方については記載がなかった。
その他、日本語に関する810の棚、文法に関する815の棚をブラウジングして接頭語に関する記述や「人」「小」の読み方について確認したが、記載されている資料は見つからなかった。
レファレンス協働データベースで「点訳 読み方」でキーワード検索をしたところ、『「分限者」(ぶげんしゃ/ぶんげんしゃ)という言葉があるが「大分限者」は何と読むか。』(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000066569)の事例に「大」の読み方について記載があった。
この事例に使用された参考資料『NHKことばのハンドブック』に当たった。
「人」の読み方については、Googleで「人 ジン ニン 読み方」で検索したところ、参考資料記載の論文と、外国人向け日本語教育に関する株式会社のwebコラムがヒットした。
内容を確認し、『造語成分「人(ニン)」と「人(ジン)」の特徴と熟語の意味』の記載事項が今回の事例に当てはまると判断し、質問者へ回答した。
「小」の読み方について正確な回答を出せなかったため、参考程度に書名ではどのような読みで登録されているのかTool-iで「小都市圏」「小天使」を検索した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本語 (810)
- 辞典 (813)
- 文法.語法 (815)
- 参考資料
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NHK放送文化研究所 編 , 日本放送協会放送文化研究所. NHKことばのハンドブック 第2版. 日本放送出版協会, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008009070-00 , ISBN 4140112182 -
日本大辞典刊行会/編 , 日本大辞典刊行会. 日本国語大辞典 第11巻. 小学館.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I020958137-00 -
沖森卓也 編 , 沖森, 卓也, 1952-. 日本語文法百科. 朝倉書店, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031630131-00 , ISBN 9784254510669 - 人を表す名詞を派生する造語成分について(https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00029617)
- 造語成分「人(ニン)」と「人(ジン)」の特徴と熟語の意味(https://osakaohtani.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=189&file_id=22&file_no=1)
- 「人」:「ひと」、「ニン」、「ジン」の読み分けのルール(https://www.nihongo-c.jp/blog/blog-entry-116.html)
- 「分限者」(ぶげんしゃ/ぶんげんしゃ)という言葉があるが「大分限者」は何と読むか。(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000066569)
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NHK放送文化研究所 編 , 日本放送協会放送文化研究所. NHKことばのハンドブック 第2版. 日本放送出版協会, 2005.
- キーワード
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- 日本語
- 文法
- 漢字
- 接頭語
- 読み方
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000329939