レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/10/28
- 登録日時
- 2023/12/13 00:30
- 更新日時
- 2023/12/13 00:30
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-230042
- 質問
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解決
アメリカの美術館に「Utagawa, Kokunimasa」の作品が所蔵されている。日清戦争などの戦争画を手がけており、「歌川小国政」もしくは「歌川国政」のことだと推察する。この人物に関する資料を探している。
- 回答
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(1)国内資料について
下記の当館資料でお調べました。※【 】内は当館の請求記号です。
資料1 国際浮世絵学会 編『浮世絵大事典』東京堂出版, 2008年【721.8/ウキ2008.6/R】
資料2 日本浮世絵協会 編『原色 浮世絵大百科事典』第2巻 浮世絵師, 大修館書店, 1982年【721.8/ウ6/2タ】
資料3 浅井勇助 著『近世錦絵世相史』第8巻 ; 明治28年~昭和7年, 平凡社, 1936年【721.8/ア3/8タ】
・資料1, p.57 「歌川国政」の項に、「(前略)【五代】(中略)梅堂小国政と同一人物かとされるが別人説も唱えられる(後略)」とありました。
また、p.389 「梅堂小国政」の項に、「(前略)五代歌川国政と同一人物かとされるが、五代目国政と小国政の落款が同時期に確認でき別人説も唱えられる。(後略)」とありました。
・資料2, p.42 「浮世絵師」-「小国政」の項に、「こくにまさ ばいどう 梅堂 小国政 〔1家系〕 国貞3の長男。竹内氏。大震災(大正十二)前に死去(中略)〔4画号他〕 小国政・梅堂・楳堂・柳蛙(飯島光蛾入門後、明治三七年頃より)(後略)」とあり、代表的な作品名も記載されています。
また、「(前略)国政5と同一人物と思われるが、「五代目国政筆」と款された作品以後も「小国政」と落款した作品を多数発表しており、このことから七戸氏の別人説も唱えられ、同一人物とするにはなお疑問が残る。(後略)」とありました。
・資料3には小国政の明治28年(1895年)から明治29年(1896年)の作品が所収されています。
pp.1-57 「明治二十八年」の項
p.4 小国政 画「登洲府降雪激戦図」
p.19 小国政 画「威海衛占領図」
p.20 小国政 画「威海衛占領図」
p.34 小国政 画「牛荘占領図」
p.37 小国政 画「清国媾和来朝談判図」
p.43 小国政 画「新橋驛の着御」
pp.58-63 「明治二十九年」の項
p.60 小国政 画「三陸大海瀟の實況」
また、下記のデータベースでもお調べしました。
・国立国会図書館デジタルコレクションを確認したとろ、以下の資料に「梅堂小国政」に関する記述がありました。なお、インターネット公開資料です。
資料4 梅本鐘太郎 (塵山) 編『浮世絵備考』東陽堂, 1898年
(URL https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/850008/90 最終アクセス日:2023/10/27)
90コマ「梅堂小国政」の項に、「梅堂國政の男、豊原国周を師とす、日清戦争画数百番を描きて、一時大に行はる。」とありました。
・佛教大学論文目録リポジトリ(https://archives.bukkyo-u.ac.jp/repository/baker/ 最終検索日:2023/10/27)でお調べしたところ、下記論文に関連する記載がありましたので御紹介します。なお、当該論文はPDFでインターネット公開されています。
資料5 原田敬一「戦争を伝えた人びと:日清戦争と錦絵をめぐって」『文学部論集』84号, 佛教大学文学部, 2000年
(https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/BO/0084/BO00840R001.pdf 最終アクセス日:2023/10/27)
p.5 「第一章 日清戦争報道と錦絵」-「(2)錦絵版画の盛行」の項の「第2表 日清戦争を描いた錦絵作家系譜図」に、歌川国政(4代目)と小国政(5代目)が掲載されています。
p.9 「第二章 錦絵の中の日清戦争」-「(1)清国と戦うこと」の項に、小国政 画『清国降和使談判之図』(1895年)が掲載されており、絵図に関する解説があります。ここでは「(前略)筆者「小国政」は、五代国政のことである。(後略)」と記述されていました。
pp.10-11 「第二章 錦絵の中の日清戦争」-「(2)七月二三日の衝突をめぐって」の項に1894年7月23日の事件を描いた作品として小国政 画『朝鮮京城之小戦』が紹介されています。
・函館市中央図書館デジタル資料館(http://archives.c.fun.ac.jp/ 最終アクセス日:2023/10/27)で「歌川国政」をキーワードに検索したところ、12作品がヒットしました。
そのうち、資料6 歌川国政 画『日露旅順口海戦帝国海軍大勝利万歳』(資料番号:1114234279)の内容説明に、「楳堂小国政は歌川国政(5代目)の画号。」と記載されていました。
・国際日本文化研究センターのサイト内検索で「歌川小国政」をキーワードに検索したところ、以下の資料がヒットしました。(https://www.nichibun.ac.jp/pc1/ja/ 最終検索日:2023/10/27)
資料7 歌川小国政『川上音二郎戦地見聞日記』福田熊次郎, 1894年
※この資料は国際日本文化研究センターのデータベースに収録されており、書誌詳細のURLから確認することができます。
また、「歌川国政五代」をキーワードに検索すると「歌川国政(5代目)の作品が1件ヒットします。
また、「小国政」をキーワードに検索すると、「梅堂小国政」の作品が14件ヒットします。
・ADEAC(アデアック)のデータベース資料(https://trc-adeac.trc.co.jp/ 最終検索日:2023/10/27)で「小国政」をキーワードに検索したところ、船橋市西図書館の資料1件がヒットしました。
・アジア歴史資料センター、インターネット特別展「描かれた日清戦争 錦絵・年画と公文書」(https://www.jacar.go.jp/jacarbl-fsjwar-j/smart/index.html 最終アクセス日:2023/10/27)
アジア歴史資料センターが公開している日清戦争の関係資料と大英図書館が所蔵する日清戦争関係の版画コレクションが閲覧可能です。
サイト内検索で「小国政」をキーワードに検索したところ、「梅堂(楳堂)小国政」の作品が8件ヒットしました。
資料8 (梅堂)小国政『大日本大勝利分捕品縦覧之図』高橋友三郎, 1894年【大英図書館請求記号: 16126.d.2(47)】をはじめ、すべての作品に「絵師: (梅堂)小国政 (五代目歌川国政) (?-1923以前)」または「絵師: 楳堂小国政 (五代目歌川国政) (?-1923以前)」と記載がありました。
(2)海外資料について
・アメリカ議会図書館(https://www.loc.gov/ 最終アクセス日:2023/10/27)の検索結果
Library of Congress(アメリカ議会図書館) で「Utagawa, Kokunimasa」をキーワードに検索したところ、11作品がヒットしました。日清戦争や日露戦争を題材にした作品のデジタル画像が公開されています。
資料9 Utagawa Kokunimasa『Nisshin sens? e』1894年, (管理番号:2008660127)
Namesに「Utagawa, Kokunimasa, 1874-1944, artist」と記載がありました。
また、「歌川小国政」と「歌川国政」の表記揺れを確認するために、「Utagawa, Kunimasa」をキーワードに検索し、1900年前後の作品を調べたところ下記資料が該当しました。
資料10 Utagawa Kunimasa『Toridori no uwasa』1904年, (管理番号:2009615032)
Namesには「Utagawa, Kunimasa, 1848-1920, artist」と記載されており、生没年が1848年~1920年であることから、資料9の「Utagawa, Kokunimasa(生没年1874~1944年)」と別の人物であることが分かりました。
・ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション(https://digitalcollections.nypl.org/ 最終アクセス日:2023/10/26)の検索結果
THE NEW YORK PUBLIC LIBRARY DIGITAL COLLECTIONS(ニューヨーク公共図書館デジタルコレクション) で「Utagawa,Kokunimasa」をキーワードに検索したところ、5作品がヒットしました。各作品のデジタル画像が公開されています。
資料11 Kokunimasa Utagawa『Banzai! for the great victory of the Imperial Navy in the Russo-Japanese naval battle at Port Arthur』1904年, (TMS ID:165213)
NAMESに「Kokunimasa, Utagawa (Japanese printmaker, 1874-1944) (Printmaker)」と記載がありました。
また、「歌川小国政」と「歌川国政」の表記揺れを確認するために、「Utagawa, Kunimasa」をキーワードに検索し、1900年前後の作品を調べたところ、下記資料などが該当しました。
資料12 Utagawa Kunimasa『Japanese new selectedthoughts: A Parody of Korea』1895年,(TMS ID:159017)
NAMESには「Utagawa, Kunimasa, 1848-1920(Photographer)」と記載されており、生没年が1848年~1920年であることから、資料11の「Utagawa, Kokunimasa(生没年1874~1944年)」と別の人物であることが分かりました。
よって、アメリカで「Utagawa, Kokunimasa」の生没年が1874年~1944年、「Utagawa, Kunimasa」の生没年が1848年~1920年と表記されている一方で、日本国内の資料では「歌川(梅堂)小国政」及び「5代目歌川国政」の生没年が不明とされていることが分かりました。
- 回答プロセス
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1 まず、NDLサーチで「歌川国政」が戦争画を手がけていることを確認した。「Utagawa, Kokunimasa」は「歌川国政」であると当たりを付けた。
2 各データベースで「国政」の錦絵を検索したところ、歌川国政(4代目)と歌川国政(5代目)は2人とも日清戦争の戦争画を発表していることが分かった。更に、2人とも「梅堂」を使用したことがある。ゆえに「小国政(Kokunimasa)」や「歌川国政」を款した錦絵が4代目のものか5代目のものか分からず混乱した。
3 歌川国政(4代目)は明治22年(1889年)に歌川国貞(3代目)の名を継いだことから、日清戦争(1894年)や日露戦争(1904年)を描いた「Utagawa,Kokunimasa」の作品は、歌川国政(5代目)の作品だと推察した。
4 アメリカの2つの図書館で「Utagawa, Kokunimasa」の没年を1944年と表記しているが、アジア歴史資料センター公開の資料では歌川国政(5代目)は1923年以前に亡くなったと表記している。明治期の浮世絵資料、事典などを当たったが、歌川国政(5代目)の生没年を明確に記した資料は見当たらなかった。
5 太田記念美術館で2019年11月2日(土)から12月22日(日)に「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち ―悳俊彦コレクション」が開催された。(http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/lastukiyoe 最終アクセス日:2023/10/28)
作品リストの、『日露旅順口海戦帝国海軍大勝利』(1904年)は作者は「竹内柳蛙(りょうあ)」とあり、「小国政」は使われていない。
6 所蔵資料と各データベースを案内して終了。
- 事前調査事項
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利用者が見た作品に、Kokunimasa Utagawaは1944年没と記載があったとのこと。
- NDC
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- 日本画 (721 9版)
- 参考資料
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- 国際浮世絵学会?編. 浮世絵大事典. 東京堂出版, 2008.6【721.8/ウキ2008.6/R】:
- 日本浮世絵協会/編. 原色 浮世絵大百科事典 第2巻. 大修館書店, 1982.8【721.8/ウ6/2タ】:
- 浅井 勇助/著. 近世錦絵世相史 第8巻. 平凡社, 1936【721.8/ア3/8タ】:
- キーワード
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- 歌川, 国政 5世(ウタガワ, クニマサ 5セイ)
- 歌川, 小国政 5世(ウタガワ, コクニマサ 5セイ)
- 梅堂, 小国政(バイドウ, コクニマサ)
- 楳堂, 小国政(バイドウ, コクニマサ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000343370