レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021.11.16
- 登録日時
- 2021/11/16 13:12
- 更新日時
- 2022/01/05 15:55
- 管理番号
- 2021-002
- 質問
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解決
大阪商業大学の旧正門門柱に「泰西学館」の石札がある。この泰西学館について、大阪の近代教育史との関わりも含めて詳しく知りたい。
- 回答
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■「泰西学館」について
◆参考資料1.によれば、p.162に次の記述あり。
学園とのかかわりを持ってから統合されるまでの公文書綴を中心に一部分を紹介。
・明治18年5月に創立した名門塾。
・昭和9年9月の室戸台風による被害で“名のみ”の状態に衰微。
・昭和14年に当時の大阪城東商業学校(現在の大阪商業学校)の実践教育の各種学校として再建。
・昭和19年に軍部と文部省による理科系でない各種学校の整理統合から、大阪城東商業学校に統合。
◆参考資料2.のp.137-160に所収の 井上琢智「大阪泰西学館小史―大阪における明治教育史の一齣」に次の記述あり。
・明治18年頃から安藤乙三郎氏が私塾として自宅で開いていたとされるものを拡張のうえ明治19年9月に開校。
・明治19年8月26日および28日の『大阪朝日新聞』紙上に生徒募集広告が掲載される。
・明治30年4月始業(学期変更)。
・昭和9年の第一室戸台風による校舎倒壊によりその再建が谷岡登氏にゆだねられる。
・昭和14年以降19年に廃校になるまでは、谷岡登氏の経営する城東商業学校内に校舎があった。
・昭和18年から始まった文科系各種学校の整理・統合政策により、昭和18年12月15日に学校廃止の許可がおり、昭和19年3月31日限りで廃校となった。
・『大阪府統計書』(明治41年版)によれば創立以降の卒業生は392名に及ぶ。
◆参考資料3.のp.99-112に所収の 田崎公司「泰西学館に関する一考察:谷岡学園・大阪商業大学一二〇年の地下水脈」に次の記述あり。
・昭和10年4月になり大阪城東商業学校理事長兼校長の谷岡登氏、実弟の谷岡琢磨氏、守金司理事の3人が経営を引き継ぐ。
・翌昭和11年4月から実践教育を中心とする各種学校としての授業を再開する。
・昼夜三年制のタイプ科・英語科・珠算科をおく実践実業学校として存続。
・昭和14年4月には布施市御厨町(現東大阪市御厨栄町)に移転し、城東商業と同居し、東館(研究棟)の三階を泰西学館の教室としていた。
・泰西学館卒業生は大阪城東商業学校の第一本科四年生に編入学することができた。
・昭和19年3月末、戦時学校統合令によって泰西学館は大阪城東商業学校へ統合され、大阪城東商業学校は、その校名を石札に示すだけのものになった。
◆参考資料4.に、泰西学館講師時代(1892.9.-1893.4.)の内村鑑三について記述あり。
・評論家でキリスト教無教会主義の創始者でもある内村鑑三は1892年9月から1893年4月まで泰西学館において教職に就いていた。
◆参考資料5.の「大阪之部」「各種私立學校之部」に、泰西学館について学校紹介の記述あり(p.35-38.)。
・所在地は西区靭上通二丁目。
・館長は西岡哲夫。
・学科は本科、英語専修科、受験豫備科、撰科、夜学科とする。
・修業年限は本科普通科3年、高等科1年。英語専修科は昼部夜部共普通科2年、高等科1年。受験豫備科は6か月以上3年以内。夜学部数学科漢学科は各2年、簿記科は一科2か月以上6か月以内。
・生徒募集は階学期(1、5、9月)の始めとす。修学社は十二年以上にして高等商学二年生以上の者及びこれと同等の学力を有する者。但し夜学生はこれに限らない。
・分校は南区竹屋町にあり。
◆参考資料6.に、泰西学館について学校紹介の記述あり(p.55-57.)。
・卒業後直ちに業務に就こうとする者又は高等の諸学校に入ろうとする者に対し必須な教育を施す。
・授業時間は本科並びに受験豫備科は午前7時から午後2時、夜科は午後6時から9時、撰科は午後2時から5時。
・本科並びに受験豫備科は入学金壱円五十銭、授業料一期分(三か月)四円五十銭、校費九十銭。夜科は入学金壱円、授業料一か月壱円弐十銭、校費弐十銭。撰科は入学金壱円五十銭、授業料一か月八十銭、校費弐十銭。
・寄宿舎あり。一か月舎費壱円、食費四円八十銭。
■大阪の近代教育史との関わりについて
◆本学が所蔵する、明治以降の私立学校や各種学校の変遷を含む近代教育史に関する資料としては、参考資料7.~9.などを紹介。
- 回答プロセス
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■「泰西学館」について
・本学所蔵資料の中で、下記の参考資料1,2,3に記述を確認。
・国立国会図書館デジタルコレクションの中で、下記の参考資料4,5,6に記述を確認。
https://www.dl.ndl.go.jp/search/searchResult?featureCode=all&searchWord=%E6%B3%B0%E8%A5%BF%E5%AD%A6%E9%A4%A8&fulltext=1&viewRestricted=0
■大阪の近代教育史との関わりについて
・本学所蔵資料の中で、大阪を含む近代教育史をたどることのできる資料として、参考資料7.~9.等を確認。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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資料1.
谷岡学園年史編纂委員会 編, 谷岡学園. 谷岡学園五十年史. 谷岡学園, 1978, 1125p.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001413015-00 -
資料2.
大阪商業大学商経学会 編, 大阪商業大学商経学会. 大阪商業大学論集 (67). 大阪商業大学商経学会, 1983-11., ISSN 02870959
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001060107-00 -
資料3.
大阪商業大学商業史博物館紀要 第3号. 大阪商業大学商業史博物館, 2002-12., ISSN 13461508
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I084667781-00 -
資料4.
住家 正芳 , 住家 正芳. 内村鑑三はベンジャミン・キッドをどう読んだか : 社会進化論の影響の一断面. 2013-03. 立命館産業社會論集 48(4) p. 85-101
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000024-I004903068-00 -
資料5.
西原実光 編 , 西原, 実光. 近畿遊学便覧 大阪之部. 近畿遊学便覧発行所, 1902.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000458686-00 -
資料6.
河村繁由 編 , 河村, 繁由. 最新大阪遊学案内. 野島明文堂, 1906.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000458626-00 -
資料7.
土屋忠雄, 木下法也, 渡部晶 編. 近代教育史. 増補版. 小学館, 1959, 279p. (教育学全集 3)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I078349690-00 -
資料8.
鈴木博雄. 日本近代教育史の研究. 振学出版, 1990, 695p.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002070850-00 , ISBN 978-4795285880 -
資料9.
梅溪昇編著 , 梅渓, 昇. 大阪府の教育史. 思文閣出版, 1998. (都道府県教育史,)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I003144294-00 , ISBN 4784209557
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資料1.
- キーワード
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- 泰西学館
- 大阪商業大学
- 近代教育史
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000307675