レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年04月30日
- 登録日時
- 2020/05/13 13:00
- 更新日時
- 2020/06/19 14:49
- 管理番号
- 県立長野-20-011
- 質問
-
解決
大正-昭和初期に日本で公開されたアメリカ映画について知りたい
1.この時期に、外国映画が日本でどれくらい人気であったのか
2.どんな外国映画が公開されていたのか
3.当時の日本人は外国映画をどう受け止めていたのか
- 回答
-
1.この時期に、外国映画が日本でどれくらい人気であったのか
具体的なタイトルや映画フィルムの輸入先ごとの興行収入、そのランキング等については資料を見つけることができなかった。
ただし、第一次世界大戦勃発(1914年)頃の日本の映画業者の事業について、『日本映画発達史1』の中では「自社映画は二次的となり、興行映画の七十パーセント以上を、輸入映画でまかなうという現象を呈した」とあり。
また、昭和4年(1929年)の全国の映画館数を上映映画ごとに、「邦画」、「外画」、「混合」と分けて掲載している統計を参考に紹介した。
・「日本映画事業総覧 昭和5年版」(『コレクション・モダン都市文化 19映画館』に所収)
「日本映画事業興行統計 全国各府県別映画館其他入場者数及入場料金比較」(p.154-156)で「上映別映画館数」の記述があり、「邦画」「外画」「混合」と、分けられており、外国映画の上映を行っていた映画館の数を確認できる。
昭和4年のデータでは、全国の合計で「邦画」が807館、「外画」52館、「混合」401館となっており、「外画」と「混合」を合わせた外国映画を上映していた映画館数は453館。
都市部にあたる東京の状況を見てみても、「邦画」が172館、「外画」20館、「混合」16館となっており、「外画」と「混合」を合わせた外国映画を上映していた映画館数は36館であった。
ただし、この表の備考欄には、内務省警保局調査に依る統計であり、「興行場の警察申告は普通七掛乃至六掛になっている」とあり、正確な数とは言いきれない数字であることも添えた。
2.どんな外国映画が公開されていたのか
タイトルの羅列が多かったため、参考資料を提供した。
<当館資料>
・「昭和四年外国映画輸入表(各社別)」
『コレクション・モダン都市文化 19映画館』所収「日本映画事業総覧 昭和5年版」(p.136-138)
各社ごと、昭和4年(1929年)に輸入した映画フィルムの本数とタイトルが羅列されています。
・「昭和三年外国映画輸入表(各社別)」
『コレクション・モダン都市文化 19映画館』所収「日本映画事業総覧 昭和5年版」(p.138-140)
各社ごと、昭和3年(1928年)に輸入した映画フィルム本数とタイトルが羅列されています。
・『キネマ旬報1-4』(復刻版)1919-
「優秀映画批評」に挙げられているタイトルが参考になると思われます。
<国会図書館デジタルコレクション 図書館向けデジタル化資料送信サービスで利用できるもの>
『キネマ旬報』創刊以前の映画雑誌では、以下の通り。
・『フィルム・レコード』(大正2年創刊、大正2年末5号から『キネマ・レコード』に改題)
2巻8号(大正3年2月下旬) - 4巻24号(1915年6月)欠: 2巻9号-3巻12号
・『活動写真雑誌』(大正4年)
2巻5(1920年)-12号(1920年)
・『活動之世界』(1次大正5年、発売当初は映画専門雑誌ではない)
1巻2(1916年),3,6-8,11-12号、2巻2-3,9-10号、3巻4,6-7,9,11-12号、4巻1,3-4号(1919.4)
・『活動画報』(大正6年)
1巻9号(1917)-4巻12号(1920)(欠号多数)
<当館の所蔵はないが、県内図書館で所蔵しているもの>
・『日本映画初期資料集成1-14』三一書房 1990-1992年
以下の雑誌の復刻版が収められています。
・「活動写真雑誌」第1巻第1号-第7号
・「活動之世界」第1巻第1号-第12号
・「活動画報」第1巻第1号-第12号
・「活動評論」第1巻第1号-第2巻第7号
・「活動倶楽部」第2巻第8号-第3巻第12号
3.当時の日本人は外国映画をどう受け止めていたのか
当時の映画の受け止められ方について、洋画を観る客層と日本映画を観る客層が違っており、受け止められ方にも差があったよう。
・『戦時下の日本映画 人々は国策映画を観たか』
「洋画は高学歴者、具体的には上級学校(中学・高等女学校・高校・大学・師範学校・高等師範)の学生やそれらを卒業したサラリーマンが観るものとみられていた」(p.24)
・『ドキュメント昭和4 トーキーは世界をめざす』
内田岐三雄「映画の興行」(『英語日本年鑑』発行年不明)の記述を次のように翻訳、引用の部分において、「さらにある人々などは、外国映画を見る人々と日本映画を見る人々は、ハッキリ区別して考えることが出来るとさえいっている」と記述されている。
・『日本映画史 1』
「一九一〇年代にすでに、イタリア、スウェーデン、デンマーク、アメリカなどでは今日でも古典として尊重されるすぐれた映画が作られ、日本にも輸入されて知識層には歓迎されていたが、日本映画は当時はまだ水準が低く」(p.68)とあり、知識層が外国映画を高く評価し、それを中心観ていたことが推察される。
以上より、1919年創刊の映画雑誌『キネマ旬報』に外国語映画が多いのも、編集にあたっていたのが知識層にあたる、工業高校の学生であった(『キネマ旬報1』(復刻版)p.11)ことが一つの要因として挙げられます。
『キネマ旬報1』(復刻版)冒頭の解説部分における、岩本憲児「草創期の『キネマ旬報』と映画雑誌の黄金時代」では、『キネマ旬報』の姿勢を本数の多かったアメリカを中心とした欧米映画の紹介と批評に勢力を注いでいたとみている一方、この状況は「編集部や読者が日本映画を無視していたから」ではなく、「彼らの意に叶う日本映画がなかなか誕生しなかったからである」(p.13)と分析している。
また、調査希望のあった『日本映画における外国映画の影響』で参考になりそうな章は以下の通り。
第1部 日本映画の誕生・成長と外国語映画 ―1899-1920年代―
第4章 ブルー・バード映画(p.48-66)
第5章 日本におけるアメリカ連続映画(1)(p.67-82)
特に、第5章では、2反響の項(p.73-82)では、アメリカ映画『名金』への雑誌上での反響について、引用を交えながら紹介している(p.73-76)。
第6章 日本におけるアメリカ連続映画(2)(p.83-100)
第7章 『イントレランス』と『路上の霊魂』
第2部 日本映画の形成とアメリカ映画 ―1920年代を中心に―
この章では「母性愛映画」や「学生スポーツ映画」のようにテーマごとに代表的なアメリカ映画の作品を挙げ、そのテーマが日本で受け入れられていく過程や、影響をうけたとみられる日本映画を紹介している。
<調査済み資料>
・『日本映画における外国映画の影響』山本 喜久男著 早稲田大学出版部 1983【778/182】
・『キネマ旬報1-4』雄松堂出版 1993【778/277/1-4】
早稲田大学演劇博物館所蔵の『キネマ旬報』創刊号-146号(1919-1923年発行)までが収められた復刻版。
・『コレクション・モダン都市文化 19映画館』十重田裕一編 ゆまに書房 2006【213.6/コレ/19】
『日本映画事業総覧 昭和5年版』国際映画通信社1930年の復刻が掲載されている。
『日本映画事業総覧』については、大正15年(昭和元年)版、昭和2年版、昭和3・4年版、5年版が出版されており、このうち、昭和2年版、昭和3・4年版、5年版は自宅のパソコン・スマートフォンから国立国会図書館デジタルコレクション【最終確認日2020/5/13】で見ることができる。
・『ドキュメント昭和4 トーキーは世界をめざす』NHK“ドキュメント昭和”取材班編 角川書店 1986【210/ど/4】
・『戦時下の日本映画 人々は国策映画を観たか』吉川隆久 吉川弘文館 2003【778.21/フタ】
・北村 洋、笹川 慶子著「日本におけるアメリカ映画の受容」【最終確認日2020/5/13】『超域的日本文化研究』 9号 2018 p.132-146
・『日本映画史 1』佐藤忠男著 岩波書店 2006【778.21/サタ/1】
・『日本映画文献史』今村三四夫著 鏡浦書房 1967【778/74】
日本の映画に関する文献を年代順にまとめています。
- 回答プロセス
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1.調査希望のあった図書『日本映画における外国映画の影響』を参照
第1部、第2部が同時代にあたる部分であることを確認した。
2.レファレンス協同データベースで先行事例を検索
東京都立中央図書館 (2110013)「日本の映画雑誌の変遷や歴史がわかる文献はあるか。」【最終確認2020/5/13】より、当館に所蔵のあった資料をあたる。
・『日本映画文献史』今村三四夫著 鏡浦書房 1967【778/74】
当館に所蔵のあるものが複数確認できたものの、参照した資料の中では質問内容にこたえ得る資料はほとんど見つけられなかった。
3.778映画の書架をブラウジングする
・『日本映画史 1』佐藤忠男著 岩波書店 2006【778.21/サタ/1】
「一九一〇年代にすでに、イタリア、スウェーデン、デンマーク、アメリカなどでは今日でも古典として尊重されるすぐれた映画が作られ、日本にも輸入されて知識層には歓迎されていたが、日本映画は当時はまだ水準が低く」(p.68)とあり。
・『戦時下の日本映画 人々は国策映画を観たか』吉川隆久 吉川弘文館 2003【778.21/フタ】
「洋画は高学歴者、具体的には上級学校(中学・高等女学校・高校・大学・師範学校・高等師範)の学生やそれらを卒業したサラリーマンが観るものとみられていた」(p.24)とあり。
4.3『戦時下の日本映画 人々は国策映画を観たか』の参考文献より以下の文献にあたる
・『ドキュメント昭和4 トーキーは世界をめざす』NHK“ドキュメント昭和”取材班編 角川書店 1986【210/ど/4】
「さらにある人々などは、外国映画を見る人々と日本映画を見る人々は、ハッキリ区別して考えることが出来るとさえいっている」(内田岐三雄「映画の興行」(『英語日本年鑑』発行年不明)の記述を次のように翻訳、引用)と記述あり。
5.「CiNii Articles」で「アメリカ映画」「日本」で検索
・北村 洋、笹川 慶子著「日本におけるアメリカ映画の受容」【最終確認日2020/5/13】『超域的日本文化研究』 9号 2018 p.132-146
6.5の参考文献中の「日本映画事業総覧」について探す
・『コレクション・モダン都市文化 19映画館』十重田裕一編 ゆまに書房 2006【213.6/コレ/19】
『日本映画事業総覧 昭和5年版』国際映画通信社1930年の復刻が掲載されている。
「日本映画事業興行統計 全国各府県別映画館其他入場者数及入場料金比較」(p.154-156)で「上映別映画館数」を確認。
「昭和四年外国映画輸入表(各社別)」(p.136-138)、「昭和三年外国映画輸入表(各社別)」(p.138-140)では、輸入映画のタイトルが掲載されていた。
・『日本映画事業総覧』
発行:大正15年(昭和元年)版、昭和2年版、昭和3・4年版、5年版が出版
国立国会図書館デジタルコレクション【最終確認日2020/5/13】では、昭和2年版、昭和3・4年版、5年版を見ることができる。
7.2で探した文献より、『キネマ旬報1』(復刻版)1919-にあたる
当時の誌面中の映画の解説のほか、雑誌についての解説があり、回答の参考にした。
- 事前調査事項
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当館OPACより検索した以下の資料も調査に入れてほしいとのこと
・『日本映画における外国映画の影響』山本 喜久男著 早稲田大学出版部 1983【778/182】
- NDC
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- 映画 (778)
- 参考資料
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山本喜久男著 , 山本, 喜久男. 日本映画における外国映画の影響 : 比較映画史研究. 早稲田大学出版部, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I010045677-00 , ISBN 4657830082 -
キネマ旬報社 [編] , 黒甕社 , 雄松堂出版. キネマ旬報 復刻版. 雄松堂出版, 1993.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000090451-00 -
和田博文 監修 , 和田, 博文, 1954-. コレクション・モダン都市文化 第19巻. ゆまに書房, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008210048-00 , ISBN 4843315478 -
NHK“ドキュメント”昭和取材班/編 , NHK“ドキュメント”昭和取材班. ドキュメント昭和 4 トーキーは世界をめざす : 国策としての映画. 角川書店, 1986.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I013725255-00 -
古川隆久 著 , 古川, 隆久, 1962-. 戦時下の日本映画 : 人々は国策映画を観たか. 吉川弘文館, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004025329-00 , ISBN 4642077952 -
佐藤忠男 著 , 佐藤, 忠男, 1930-. 日本映画史 1(1896-1940) 増補版. 岩波書店, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008347558-00 , ISBN 4000265776 -
今村三四夫 著 , 今村, 三四夫, 1906-. 日本映画文献史. 鏡浦書房, 1967.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001096746-00 -
日本の映画雑誌の変遷や歴史がわかる文献はあるか。(東京都立中央図書館).
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000006-I000322920-00
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山本喜久男著 , 山本, 喜久男. 日本映画における外国映画の影響 : 比較映画史研究. 早稲田大学出版部, 1983.
- キーワード
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- 映画
- アメリカ映画
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000282071