レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/08/30
- 登録日時
- 2023/11/22 00:30
- 更新日時
- 2023/11/22 00:30
- 管理番号
- 6001062432
- 質問
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解決
「サロメ」に対する評価の変遷が知りたい。特に19世紀になって発表されたギュスターヴ・モローの「出現」が「サロメ」像に与えた影響の大きさがわかる資料はあるか。
- 回答
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1.ギュスターヴ・モローの「出現」が「サロメ」像に与えた影響について
モローの「出現」以降のサロメ像の特徴として、以下の2点が挙げられる模様。
1)サロメの図像史においてサロメは裸で踊るようになったこと
2)19世紀の世紀末においては画家のみならず詩人や作家などに「ファム・ファタル」のテーマが流行するようになったこと
紹介した資料は以下のとおり。
・『ギュスターヴ・モロー展:サロメと宿命の女たち』(ギュスターヴ・モロー/[画] パナソニック汐留美術館/編集 あべのハルカス美術館/編集 NHKプロモーション/編集 マリー=セシル・フォレスト/監修 パナソニック汐留美術館 2019.4)
p.26-31「聖遺物匣としての装飾-ギュスターヴ・モローの《出現》の線描」
「2 サロメの画家」(p.26-27)の中で「サロメの図像史においてモローが決定的ともいえる新しい解釈を提示」した例として「ヘロデの前で踊るサロメ」と「出現」を取り上げている。
特に《出現》の特異性として、サロメが裸体で踊っていることとヨハネの首の幻視を見ていることを指摘し、モローの《出現》がサロメが裸体で踊るイメージを決定づけ、またサロメが「自らヨハネの首を求めるファム・ファタルへと決定的な変貌を遂げ」たとしている。
・『ギュスターヴ・モローの世界』(ギュスターヴ・モロー/[作] 新人物往来社/編 新人物往来社 2012.4)
p.120「『サロメ』の中の日本」
「男を破滅させる魔性の女「ファム・ファタール」の典型として、ユイスマンスをはじめ、ワイルドやマラルメ、ビアズリーといった世紀末の芸術家たちに決定的な影響を与えた」作品に「ヘロデの前で踊るサロメ」と「出現」とを挙げている。
・『ギュスターヴ・モロー:世紀末パリの異郷幻想(ToBi selection)』(ギュスターヴ・モロー/[画] 隠岐由紀子/著 東京美術 2019.5)
p.22-53「CHAPTER1 誘惑する女」
CHAPTER1の冒頭で「19世紀の世紀末には、男の命取りになる女「ファム・ファタル」という危険な美女のテーマが流行する。モローが1876年のサロンで発表した油彩と水彩のサロメ像は、その発端ともなった。」(p.22)と指摘している。
・『ギュスターヴ・モロー』(ギュスターヴ・モロー/[画] 国立西洋美術館/編集 NHK c1995)
p.28-36「コピーするモロー、コピーされるモロー」
「5.コピーされるモロー」(p.33-34)のなかで、モローの作品に「触発され、あるいは影響されて自分の芸術を育んでいった芸術家たち」が登場した結果、モローが「世紀末の「ファム・ファタル」のテーマ流行の火付け役」(p.33)となったと指摘し、モローに影響を受けた作品としてステファーヌ・マラルメやオスカー・ワイルド、オーブリー・ビアズレー、ロイ・フラー、リヒァルト・シュトラウスなどを挙げている。
・『ウィンスロップ・コレクション:フォッグ美術館所蔵19世紀イギリス・フランス絵画』(東京新聞 c2002)
p.120「26|ギュスターヴ・モロー 出現」
「さらにモローの作品が独創的なのは、裸体のサロメのイメージである。今日サロメが裸体で踊るのは当たり前のようだが、それはオスカー・ワイルドの劇詩『サロメ』(1893年)以降に流布したもので、そのワイルドもモローのサロメに触発されているのである。」(p.120)
・喜多崎親「ギュスターヴ・モローの《出現》に就いて」『美術史』42(1)<133>(美術史学会 1993.2)p.15-29
2.「サロメ」像の変遷について
次の資料が詳しい。
・『西欧芸術の精神 新訂増補』(高階秀爾/著 青土社 1986.12)
p.[275]-298「「サロメ」-イコノロジー的試論」
p.[299]-322「切られた首-世紀末想像力の一側面」
また、次の資料はモローが描いた「出現」と、それを評価したユイスマンスや、ワイルドの『サロメ』によってサロメの評価がどう固まっていったのか言及している。
・『肉体と死と悪魔:ロマンティック・アゴニー(クラテール叢書1)』(マリオ・プラーツ/著 倉智恒夫/[ほか]訳 国書刊行会 1986.11)
p.392-397「2-モローとユイスマンスにおけるサロメ.」
p.397-403「3-モローにおける宿命の女.瀕死の男たちに囲まれたヘレネ.」
p.403-412「4-ワイルドのサロメ.ハイネとフローベールによって取り上げられたテーマ.バンヴィル.ラフォルグ」
p.412-415「5-マラルメの『エロディアド』.その象徴的意味.エロディアドとサランボー」
また、「出現」への影響について言及している資料も見つかったため、併せて紹介。
・『ギュスターヴ・モロー:その芸術と生涯』(ギュスターヴ・モロー/著 ピエール=ルイ・マチュー/著 高階秀爾/訳 隠岐由紀子/訳 三省堂 1980)
p.124-126「出現」
・『聖性の転位:一九世紀フランスに於ける宗教画の変貌』(喜多崎親/著 三元社 2011.2)
p.[149]-212「第四章 幻視としてのイコン:ギュスターヴ・モローの《出現》に見る聖と俗」
[事例作成日:2023年8月30日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 洋画 (723 10版)
- 参考資料
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- ギュスターヴ・モロー展 ギュスターヴ・モロー‖[画] パナソニック汐留美術館 2019.4 (26-31)
- ギュスターヴ・モローの世界 ギュスターヴ・モロー∥[作] 新人物往来社 2012.4 (120)
- ギュスターヴ・モロー ギュスターヴ・モロー‖[画] 東京美術 2019.5 (22-53)
- ギュスターヴ・モロー ギュスターヴ・モロー∥[画] NHK c1995 (28-36)
- ウィンスロップ・コレクション 東京新聞 c2002 (120)
- 美術史 美術史学会 美術史学会 42(1-2)<133-134> (15-29)
- 西欧芸術の精神 新訂増補 高階/秀爾∥著 青土社 1986.12 ([275]-322)
- 肉体と死と悪魔 マリオ・プラーツ∥著 国書刊行会 1986.11 (392-415)
- ギュスターヴ・モロー ギュスターヴ・モロー∥著 三省堂 1980 (124-126)
- 聖性の転位 喜多崎/親∥著 三元社 2011.2 ([149]-212)
- キーワード
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- ギュスターヴ・モロー(ギュスターブ・モロー)
- サロメ(サロメ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000341314