レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20220416
- 登録日時
- 2023/11/02 00:30
- 更新日時
- 2023/11/02 18:38
- 管理番号
- 中央-2023-07
- 質問
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解決
岡本更園という女性画家の経歴や作品について知りたい。インターネットの個人ブログを見たところ、日本画だけでなく、新聞・雑誌の挿絵も描いたらしい。
- 回答
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以下の手順で調査した結果、資料4『島成園と浪華の女性画家』他に経歴、展覧会への出品作品等をまとめた記述が見出せた。ただし、資料により実名や出身地の記述が異なる。
また、新聞の挿絵については記述が見出せたが、雑誌の挿絵については記述を見出せなかった。
1 画家名のヨミ、別名を確認する
都立図書館蔵書検索、図書館が有料契約する事典類のデータベース「ジャパンナレッジ Lib」をキーワード<岡本更園>で検索したが、ヒットなし。
同様に、図書館が有料契約する人物情報のデータベース「whoplus」をキーワード<岡本更園>で検索すると、義兄である「岡本大更」の情報のみヒットする。
また、「リサーチ・ナビ」( https://rnavi.ndl.go.jp/jp )をキーワード<更園>で検索すると、情報1、2等がヒットする。
情報1 「日本画家岡本大更:その画業と更生・更園|国立国会図書館サーチ 書誌詳細」(国立国会図書館)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004199067-00
国立国会図書館オンラインに遷移し( https://id.ndl.go.jp/bib/000004199067 )、タイトルよみを確認すると、更園のヨミは「コウエン」とある。
情報2 「『日本人の情景 人間性喪失の時代、画廊コレクションで観る日本人の真実 創業35周年記念特別展』|リサーチ・ナビ 書誌情報」(国立国会図書館)
https://rnavi.ndl.go.jp/books/2009/04/000008341502.php
この本から採録した「日本人名情報索引(人文分野)データベース」の情報として、岡本更園の別名は「星野延子,星野更園,大江更園」とある。
以上、情報1、2は都立図書館未所蔵のため、内容を確認できないが、調査のキーワードとして活用した。
2 日本の美術家に関するレファレンスブックを調べる
以下の情報3の資料リストを手がかりにして、日本美術に関する索引資料、事典、年鑑等のレファレンスブックを調査した。別名も含め、各資料を確認したところ、資料1~3に、岡本更園の情報が見出せた。
情報3 「美術情報を調べる参考図書|美術について調べる」(PDF)(東京都立図書館)
https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/search/research_guide/arts/index.html
資料1 『日本書画鑑定大事典 第3巻 く~こ』
p.332「更園-星野 ほしの こうえん」の項に「名は延子(のぶこ)、明治二十八年(一八九五) 兵庫県に生る、岡本大更の妻の妹、大更及び鏑木淸方の門に人物画を学ぶ、大阪住、事蹟未詳。」とある。
資料2 『文展・帝展・新文展・日展出品歴索引 明治40年-昭和32年』
資料3 『文展・帝展・新文展・日展全出品目録 明治40年-昭和32年』
出品歴索引の「日本画」の章を引くと、p.12に「岡本更園 文8 文10」とある。
出品目録で、該当年の文展を参照すると、p.22、27に出品作品名と出品時の在住地が記載されている。
以上の資料1~3から、活動した年代、出身地、居住地、師事した画家がわかった。
3 特定した情報をもとに資料、インターネット情報等を確認する
都立図書館蔵書検索及び末尾に記載のデータベース類をキーワード<大阪><なにわ><浪速><上方><女性><女流><星野><岡本><大江><更園>や資料分類<7:芸術><72:絵画.書.書道>等を掛け合わせて検索し、近代大阪または近代女性の画家・挿絵画家に関する文献を調査した。
また、岡本更園が師事した鏑木清方や岡本更生に関する文献を調査した。
以下の資料・情報に簡単な経歴や作品に関する記述が見出せた。
「国立国会図書館デジタルコレクション」( https://dl.ndl.go.jp/ )にて、資料5~7はインターネット公開、資料8、9は図書館・個人送信限定公開されている。
資料4 『島成園と浪華の女性画家』
p.131に「岡本更園」の顔写真と作家略歴があり、本名は星野延子(えんこ)、出身地が現・兵庫県西宮市とある。画家名は岡本更園だが「大正中頃より星野姓、後期より大江姓も使う。」と記載がある。
また、p.8-11、55、69-72、113等の本文中にも関連する記述がある。
p.54、152に岡本更園のモノクロ写真計3点、p.69-72、p.108-109に日本画の作品計6点のカラー図版、p.113に新聞小説「姉と妹」の挿絵作品2点のモノクロ図版が掲載されている。
資料5 『明治大正文学美術人名辞書』
p.725「星野更園」を見ると、前姓が岡本で名前は延子、出身地は大阪とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/1018982 コマ番号:388)
※都立図書館所蔵資料と版が異なるが記述は同じ
資料6 『古今繪畫名家録』
p.131「現代諸家之部 星野更園」を見ると、名前は伊世子、出身地は兵庫県とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/958710 コマ番号:97)
資料7 『現代日本美術家全録』
巻末「現代日本美術家全録補遺」のp.3に「岡本延子 號 更園」が掲載されており、出身地は大阪とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/951905 コマ番号:106)
資料8 『現代書画家名鑑』増訂版
p.111「更園女史」を見ると、本名は星野伊勢子、出身地は大阪市とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/1119824 コマ番号:62)
※都立図書館所蔵資料と版が異なるが記述は同じ
資料9 『大日本書画名家大鑑 伝記上編』
p.936「更園」を見ると、本名は星野延子、出身地は兵庫県とある。
都立図書館所蔵資料は昭和9年刊の複製。国立国会図書館デジタルコレクションの以下の資料は原本。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/1136795 コマ番号:665)
資料10 『新聞集成 大正編年史 大正3年度版下』
p.676-677「女絵師 九 岡本更園女史(11・5 時事)」
当時の新聞記事の切り抜きを掲載。文展に出品した「秋のうた」の品評、岡本更園と大更の関係等について記述がある。
また、本名は延子(えんこ)とある。
資料11 『師水野年方から清方の弟子たちへ 鏑木清方の系譜』
p.151に閨秀画家の一人として「岡本更園」を挙げ、「清方に師事するため上京」等と紹介している。
情報4 名古屋大学 博士(文学)甲第10366号
博士論文「通俗小説という劇場:戦間期新聞通俗小説と挿絵の研究」(諸岡知徳)(名古屋大学学術機関リポジトリ)
http://hdl.handle.net/2237/19386
本文のPDFをダウンロードすると、p.142に『東京日日新聞』/『大阪毎日新聞』1916年4月16日-7月13日連載の井田絃声「姉と妹」の挿画家として、「無記名(岡本(星野)更園)」と記載がある。
また、以下の資料に経歴等が記載されている可能性がある。都立図書館で所蔵していない資料のため、内容は確認できていない。国立国会図書館等で所蔵している。
・『鹿島美術財団年報』(20)(別冊)2002年度版 鹿島美術財団 2002
p.172-182「近代大阪における女性画家の研究 島成園と「女四人の会」の画家を中心に(「美術に関する調査研究の助成」研究報告 2002年度助成)」(小川知子)
国立国会図書館オンラインのURL:https://id.ndl.go.jp/bib/6797829
・雑誌『やそしま』(8)関西・大阪21世紀協会上方文化芸能運営委員会 2014.11
p.64-103「近代大阪と女性画家の時代(第4回)「女四人の会」から恒富、成園、千種門下の画家たち」(橋爪節也)
国立国会図書館オンラインのURL:https://id.ndl.go.jp/bib/025902613
・雑誌『大阪春秋:大阪の歴史と文化と産業を発信する』31巻2号(通号111号)新風書房 2003.6
「随筆春秋 更園の姓」(山田一生)
国立国会図書館オンラインのURL:https://id.ndl.go.jp/bib/000000025726
出版社の書籍紹介ページ:http://www.shimpu.co.jp/bookstore/item/itemgenre/osakashunju/902/
なお、全文検索できるデータベース「国立国会デジタルコレクション」や「GoogleBooks」、図書館が有料契約する新聞・雑誌記事データベース等を画号等で検索すると、作品の出品歴やエピソード等が複数ヒットする。
【調査に使用した主なデータベース類】(都立図書館が契約するデータベースには*を付す。)
・「リサーチ・ナビ」(国立国会図書館) https://rnavi.ndl.go.jp/jp
・「国立国会図書館デジタルコレクション」(国立国会図書館) https://dl.ndl.go.jp/
・「GoogleBooks」(Google)https://books.google.co.jp/
・「美術図書館横断検索」(美術図書館連絡会) https://alc.opac.jp/search/book/
・「whoplus(フープラス)」(日外アソシエーツ)*
・「ジャパンナレッジ Lib」(ネットアドバンス)*
・「朝日新聞クロスサーチ」(朝日新聞社)*
・「ヨミダス歴史館」 (読売新聞社)*
・「毎索」(毎日新聞社)*
・「ELDB」(エレクトロニック・ライブラリー)*
・「雑誌記事索引集成データベース ざっさくプラス」(皓星社)*
・「MagazinePlus(マガジンプラス)」(日外アソシエーツ)*
・「Web OYA-bunko 公立図書館版」(大宅壮一文庫)*
以上、インターネット情報等の最終検索日及び最終アクセス日は2023年8月23日。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本画 (721 10版)
- 参考資料
-
- 【資料1】日本書画鑑定大事典 第3巻 く~こ / 中野雅宗/編著 / 国書刊行会 / 2007.4 <R/721.0/5087/3> , ISBN 978-4-336-04789-2 (p.332)
- 【資料2】文展・帝展・新文展・日展出品歴索引 明治40年-昭和32年(日展史資料 2) / 日展史編纂委員会/企画・編集 / 日展 / 1990.3 <DR/7038/3002/2> (p.12)
- 【資料3】文展・帝展・新文展・日展全出品目録 明治40年-昭和32年(日展史資料 1) / 日展史編纂委員会/企画・編集 / 日展 / 1990.3 <DR/7038/3002/1> (p.22、27)
- 【資料4】島成園と浪華の女性画家 / 島成園[ほか画] 小川知子, 産経新聞大阪本社/編 / 東方出版 / 2006.3 <D/721.9/5215/2006> (p.131ほか)
- 【資料5】明治大正文学美術人名辞書 / 松本竜之助/著 / 立川文明堂 / 1926.6 <R/J035/5/26> (p.725)
- 【資料6】古今繪畫名家録 / 尾崎晩雪/著 / 洛陽美術社 / 1919.10 <R/721.0/5003/1919> (p.131)
- 【資料7】現代日本美術家全録 / 画報社 / 1914 <R/703.5/5008/1914> (「現代日本美術家全録補遺」のp.3)
- 【資料8】現代書画家名鑑 / 増訂版 / 斉藤悳太郎/編纂 / 大毎美術社 / 1930 <R/7203/2/30> (p.111)
- 【資料9】大日本書画名家大鑑 伝記上編 / 荒木矩/編 / 第一書房 / 1975 <R/7210/27/1> (p.936)
- 【資料10】新聞集成 大正編年史 大正3年度版下 / 明治大正昭和新聞研究会 / 1980 <2169/T0461/T1-3-2> (p.676-677)
- 【資料11】師水野年方から清方の弟子たちへ 鏑木清方の系譜(鎌倉市鏑木清方記念美術館叢書 10) / 水野年方[ほか画] 倉田公裕/監修 鎌倉市鏑木清方記念美術館, 鎌倉市芸術文化振興財団/編 / 鎌倉市鏑木清方記念美術館 / 2008.12 <D/721.9/5453/2008> (p.151)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000340442