レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20230622
- 登録日時
- 2024/03/27 00:30
- 更新日時
- 2024/03/27 18:25
- 管理番号
- 児童-2023-04
- 質問
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解決
「貧乏神と福の神」の昔話のうち、貧乏神が福の神に追い出されそうになるが、夫婦に助けられるというパターンの話を調べている。
質問1 福の神が落としたうちでのこづちを使い夫婦が裕福になる結末の話が載っている本はあるか。
質問2 夫婦が貧乏なまま貧乏神と3人で幸せになる結末の話があれば知りたい。
質問3 「まんが日本昔ばなし」のアニメが質問2のような結末であったと記憶しているが、どこの地方の昔話を基にしているのか。
- 回答
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質問1に関する資料として、資料1~4を、質問2に関連する資料として、資料5、6を紹介した。質問3は資料7を参照した。
【質問1】
資料1
p.252-256「102 貧乏神」のうちp.254「類話3」
貧乏神が働き者の夫婦の家から出ていこうとするが、夫婦に止められる。貧乏神は夫婦にごちそうになっているうちに福の神になる。貧乏神は夫婦が建てた屋敷に入って姿を消し、夫婦は長者になって暮らす。出典は稿本なので刊行されていない。
資料2
p.79-82「十一 貧乏神」(山形県最上郡鮭川村段ノ下 土田マサエ)
p.225「出典」によると、資料3がもとになっている。
p.83-86「十二 貧乏神」(長野県小県郡真田町戸沢 宮島清)
p.225「出典」によると、資料4がもとになっている。
(以下二冊は資料2の出典)
資料3
p.139-140「貧乏神」(マサエ)
貧乏神が福の神に追い出されそうになるが、夫婦に助けられる。福の神が落とした打出の小槌を貧乏神が使い、家は栄えた。
資料4
p.435-436「(20)大歳の客 ○貧乏神」(真田 宮島清)
貧乏神が福の神に追い出されそうになるものの、夫婦に助けられる。貧乏神は福の神が落とした小づちを持つ。夫婦は後々まで仲良く暮らす。
【質問2】
資料5
p.407-408「198 貧乏神」のうちp.408「類話8」
貧乏神と福の神が言い争い、夫婦は貧乏神を応援する。福の神が出ていき、夫婦は次第に貧乏になるが、二人は一生仲良く暮らす。なお、この話の出典は『新潟の昔話 長谷屋の昔語り』(桜楓社 1980年)であるが、都立図書館では所蔵していない。
資料6
p.531「206 貧乏神と福の神」のうち「類話2」
貧乏神と福の神が力勝負をし、働き者の夫婦は貧乏神を助ける。福の神は追い出され、夫婦はいつまでも貧乏に暮らす。出典は稿本なので刊行されていない。
【質問3】
資料7
p.49「解説」
「東北地方の昔ばなし」と記載がある。
<質問1、2の調査過程>
【調査方法1】昔話に関する基本図書(資料8~12)を確認し、貧乏神と貧乏な夫婦が登場する昔話に関する情報を探した。
資料8
p.793「貧乏神」
「この話には2類型がある。第1型は貧乏で怠け者の夫婦が家出をしようとする。貧乏神が一緒についていくというので家出を止め、懸命に働くので貧乏神が退散するという話。第2型は貧乏な怠け者が金持ちになりたいと嘆く。貧乏神が出てきて、金持ちになる方法を教える。成功してお金持ちになる。あるいは失敗してもとの貧乏になるという話。」と記載がある。
資料9
p.256「59A 貧乏神―何が嫌い型」
貧しい一家が食いつめて夜逃げしようとすると、貧乏神がついていこうとしたくをするパターンが紹介されている。なお、「59A」は日本の昔話タイプ・インデックス番号である。
資料10
p.27「貧乏神」
索引によって導かれた昔話を確認した結果、資料1、5、6を見出した。
資料11
p.39-43「二〇一A 貧乏神」
p.43-46「二〇二B 貧乏神」
昔話の類型ごとに採集された地域が紹介されている。貧乏神が出てくる昔話の代表話例がいくつか紹介されており、出典が示されている。p.42に山形県最上郡の昔話のうち初めのものがお探しの型で、出典として資料3が紹介されている。
資料12
p.173「貧乏神」(IT五九A「貧乏神―何が嫌い型」)
資料9と同じタイプ・インデックスによる分類を使用していることを示し、資料9の記述と同じあらすじに加え「背景と解説」部分で貧乏神が中世の『発心集』七や『沙石集』七にそれぞれ姿を現していることに触れている。
なお、資料12の内容を受け、資料13、14を確認したが、お探しのパターンではなかった。
資料13
p.317-318「発心集 第七 七 三井寺の僧、夢に貧報を見る事」
資料14
p.488-489「巻第九ノ二十二 貧窮追ひたる事」
【調査方法2】都立図書館蔵書検索を検索する
都立図書館蔵書検索を、キーワード<貧乏神と福の神><昔話><貧乏神>で検索した。ヒットした資料のうち、関連すると思われる資料を確認した結果、資料2~4を見出した。
【調査方法3】論文を確認する
CiNii Research(国立情報学研究所) (https://cir.nii.ac.jp/?lang=ja)を、キーワード<貧乏神>で検索した(最終検索日:2024年2月2日)。ヒットした資料のうち、関連すると思われる資料15を確認した。
資料15
p.45-55「貧乏神伝承の構造」(加藤まどか)
貧乏神が登場する昔話の例話を挙げながら、構成する要素について分析されている。貧乏神が福の神に変身する例話2の出典として、資料1が紹介されている。
なお、参考文献のうち、資料4は都立中央図書館のみで所蔵、資料2、3、7、13、15は都立多摩図書館所蔵のみで所蔵している。その他の資料は都立中央・多摩両館で所蔵している。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388 10版)
- 参考資料
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- 【資料1】福島(日本昔話通観 第7巻) / 同朋舎出版 / 1985.5 <K/388.1/2/7> (p.252-256)
- 【資料2】いまに語りつぐ日本民話集 [第1集]10(大きな活字で読みやすい本 長者になる秘訣)/ 野村 純一/監修, 松谷 みよ子/監修 / 作品社 / 2001.4 <LK/388.1/5071/1-10> (p.79-86、225)
- 【資料3】五分次郎 最上・鮭川の昔話 / 野村 純一/編, 野村 敬子/編 / 桜楓社 / 1971 <3881/G530/G> (p.139-140)
- 【資料4】長野県史 民俗編 第1巻 3 東信地方 ことばと伝承 / 長野県/編 / 長野県史刊行会 / 1987.3 <215.2/100/37-3> (p.435-436)
- 【資料5】新潟(日本昔話通観 第10巻) / 同朋舎出版 / 1984.9 <K/388.1/2/10> (p.407-408)
- 【資料6】沖縄(日本昔話通観 第26巻) / 同朋舎出版 / 1983.7 <K/388.1/2/26> (p.531)
- 【資料7】まんが日本昔ばなし デラックス版 14(貧之神と福の神) / 講談社 / 1984.10 <388/3059/14> (p.49)
- 【資料8】日本昔話事典 / 稲田浩二/等編 / 弘文堂 / 1977 <RK/388.1/146/77> (p.793)
- 【資料9】昔話タイプ・インデックス(日本昔話通観 第28巻) / 稲田浩二/著 / 同朋舎出版 / 1988.9 <K/388.1/2/28> (p.256)
- 【資料10】総合索引(日本昔話通観 第29巻)/ 稲田浩二/編著 / 同朋舎出版 / 1990.7 <RK/388.1/2/29> (p.27)
- 【資料11】本格昔話 4(日本昔話大成 第5) / 角川書店 / 1978 <K/388.1/109/5> (p.39-46)
- 【資料12】日本昔話ハンドブック 「日本の昔話」のすべてがわかる最も正確で新しい小事典 / 新版 / 稲田 浩二/編, 稲田 和子/編 / 三省堂 2010.6 <R/388.1/5049/2010> , ISBN 978-4-385-41065-4 (p.173)
- 【資料13】方丈記・発心集(新潮日本古典集成)/ 鴨長明/著, 三木紀人/校注 / 新潮社 / 1976 <J440/3/76> (p.317-318)
- 【資料14】新編日本古典文学全集 52(沙石集) / 小学館 / 2001.8 <918.00/5029/52> (p.488-489)
- 【資料15】雑誌:国学院大学大学院文学研究科論集 37号(2010年3月) / 国学院大学大学院文学研究科学生会 <5018154928> (p.45-55)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000348072