レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/6/20
- 登録日時
- 2022/12/12 10:42
- 更新日時
- 2022/12/28 11:52
- 管理番号
- 川図22-03
- 質問
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金鉱山における「搗鉱(とうこう)」とはどのようなことを指すのか知りたい。事前調査事項の他に搗鉱に関する概略がわかる資料があれば教えて欲しい。
- 回答
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「搗鉱」について調査した結果、辞書的な説明が書かれた資料は見つからなかったが、文章の中で「搗鉱」および「搗鉱機」について書かれた資料は見つかったので、以下のとおり紹介する。
[1]日本十進分類法(新訂9版)で関連語を引き、「鉱山(560)」「鉱山機械(561.5)」「鉱石処理(561.8)」「金山、銀山(526.1)」等にあたりをつけて該当書架をブラウジングした。「搗鉱」について記述のあった資料(1)を紹介した。
(1)『佐渡金銀山展』 Sado Gold & Silver Mine (新潟県教育庁文化行政課世界遺産登録推進室/編, 金gold黄金の国ジパングと佐渡金銀山展実行委員会, 2009.2)
p.32「(2)絵はがき(明治~昭和初期)」で「搗鉱機により鉱石を破砕する〔間ノ山地区〕(相川郷土博物館所蔵)」と説明書きが添えられた絵はがきが掲載されている。
p.37 巻末の年表の明治24年の欄に「相川間ノ山に、水銀製錬により金銀を抽出する搗鉱製錬所が完成する。」とある。
[2]電子図書館Kinodenで「搗鉱」をキーワードに検索すると下記の文献に記載がある。
(2)『熟語本位 英和中辞典 新版』(斎藤秀三郎、豊田実/増補, 八木克正/校注, 岩波書店, 2016)
p.1548「stamp」の項に「④(鉱石を)搗鉱(とうこう)機で搗(つ)き砕く.(=mill)搗鉱機」とある。
[3]NDLONLINEで「"搗鉱"」をキーワードに検索し、当館に所蔵のある雑誌(3)を紹介した。なお、『日本鉱業会誌』(資源・素材学会)や『工学会誌』(工学会)の掲載記事などは複数ヒットし、『日本鉱業会誌』は館内限定資料と表示されるが、J-STAGEでオープンアクセス誌として公開されている。
(3) 本田正男「搗鉱機の木製のプーリー(日向鉱山)」(『鉱山研究』鉱山研究編集委員会編, (86) 2009.3, p.53-56)
栃木県塩谷郡栗山村(現日光市)の日向鉱山に遺された機器や生活用品について書かれた記事。中で木製の搗鉱機について取り上げられている。関係する箇所を引用する。
p.54「鉱山作業関連の遺物としては、鉱石を砕く搗鉱機が何といっても目玉である。搗鉱機はかなり旧い時代から使用されており、大きな鉱山では早い時期に姿を消しているようだ。」
[4]国立国会図書館デジタルコレクションで「"搗鉱"」をキーワードに検索し、ヒットした一部を以下のとおり紹介した。なお、内容に「搗鉱」および「搗鉱機」を含む文献が複数ヒットする。
(4)『鉱山機械』(砂崎幸一著, 共立出版, 1942)
p.65-66「第3章 磨鑛機械」「5.搗鑛機」
「本機は主に金鑛粉碎機として混汞製練法に於てテーブルの前に使用される。構造が非常に簡單なるため小工場にては今尚使はれて居るが、漸次ボールミル又はチューブミルと置換される傾向にある。」とあり、図や仕様をまとめた表が掲載されている。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1060173
(5)日本鉱業新聞. (381)(日本鉱業新聞社, 1920-10)
p.1-45「搗鑛法/北澤武男」
搗鉱機についてまとめられた記事。「緒説」には「粉碎用としては搗鑛機は最も有効なり其碎く原理は打撃及摩滅作用を主とし壓縮を副作用とす」などと書かれている。章を分けて「カリフォルニヤ式搗鑛機」や「オーストラリヤ式搗鑛機」が紹介されている。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1517670
○以上の文中から「搗鉱機」の英名が「stamp mill」であると推測できた。
[5]電子図書館HathiTrust Digital Library (https://www.hathitrust.org/)で検索すると、参考になると思われる文献が複数ヒットする。
[6]調査の過程で、金属製錬に関係すると見当をつけ、当館OPACを「金属 製錬」で検索してヒットした資料を紹介する。
(6)『金属製錬技術ハンドブック』 (的場幸雄/ほか編, 朝倉書店, 1963)
p.509「12.金銀 12.1総説 12.1.4混コウ法」に、次のような記述がある。
「鉱石の粉砕は、古くは米搗き機のような構造のスタンプミル(搗鉱機)によって行われたが、最近はボールミル、ロッドミルなどが使われ水中破砕により20~30メッシュ程度の粒度とする」
[7]CiNii Researchで「"搗鉱"」をキーワードに検索し、ヒットした文献のうち(7)などはJ-STAGEで本文を読むことができる。
(7)長谷川熊彦「搗鑛機ノ發達ニ就テ」(日本鑛業會誌, 27(312), p.129-140, 1911)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai1885/27/312/27_312_129/_article/-char/ja/
[8]J-STAGEで論文タイトルに「"搗鉱"」と入力して検索すると[7]の論文検索とほとんど同じ結果となるが、簡易検索を使うと188件ヒットする。ノイズも含まれるかと思うが、本文閲覧可で参考になるものも含まれている。
[9]Googleで「"搗鉱"」をキーワードに検索した。
(8) 一般社団法人 日本電気協会新聞部が発行する『電気新聞東北電子版』(2017年(平成29年)2月28日(火曜日)発行)で間ノ山搗鉱場跡の説明がされており、「搗鉱場とは、鉱石を粉砕し、水銀を使って金を取り出すための工場のこと。」などとある。
https://www.denkishimbun.com/pb5012h/wp-content/uploads/2017/02/20170228.pdf
[10]J-GLOBALで「"搗鉱"」をキーワードに検索した。
(9)内藤隆夫「明治期佐渡鉱山の製錬部門における技術導入」(北海道大学大学院経済学研究, 62(3), p.271-282, 2013)
抄録に「搗鉱製錬とは,鉱石を破砕しながら同時に水銀を注入して金銀を汞化させ,アマルガムを生成・捕集する方法である。1899年頃に搗鉱製錬が開始され,1901年に第二搗鉱場が新設され,1908年には第三搗鉱場が落成し,250馬力モーターを持って,新設50本の杵を動かしていた。」とある。
J-GLOBALの文献の画面の「出版者サイト」のリンクは北海道大学学術成果コレクションとなっており、そこで文献タイトルを検索すると本文が閲覧できる。
p.99「三.搗鉱製錬」という項で「搗鉱」について詳しく書かれていた。
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/52288
(10)五味篤「鹿児島県における金銀製錬法の発達史」(資源・素材学会, 2018, 3410-12-03)
一般社団法人資源・素材学会のweb講演会での講演内容。下記URLから抄録を読むことができ「明治になって経営は島津家に移り、石臼に代わって水車動力による搗鉱機と混汞法(アマルガム法)が導入された(芹ヶ野鉱山1871年、山ヶ野鉱山1877年)。」とある。本文閲覧は学会員限定。
https://confit.atlas.jp/guide/event/mmij2018b/subject/3410-12-03/crosssearch
・五味篤「製錬の歴史:「串木野鉱山」編 3)串木野鉱山の技術発達史」(季刊 資源と素材, 3(1), p.65-74, 2018)
抄録に「製錬に関しては明治3年頃まで古来淘汰法を用い,明治4年に始まる水車動力による搗鉱と混汞金を回収した状況の紹介」とある。学会誌なので、本文は会員でないと閲覧できないが、引用文献などが参考になるかもしれない。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201802228405119263&rel=1#%7B%22category%22%3A%220%22%2C%22keyword%22%3A%22%5C%22%E6%90%97%E9%89%B1%5C%22%22%7D
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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1. 展示物紹介 | 住田町 観光TOP>展示物紹介 https://www.town.sumita.iwate.jp/kanko/tenji.html
産金コーナーに鉱石を粉砕する搗鉱機(とうこうき)の紹介あり
2. 鉱石から小判ができるまで - 佐渡島(さど)の金山 https://www.sado-goldmine.jp/about/process/
明治以降の鉱山技術で搗鉱場(とうこうば)の写真
3. 大分類C-鉱業,採石業,砂利採取業総説 https://www.soumu.go.jp/main_content/000290722.pdf
日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-分類項目名の大分類Cの説明及び内容例示。p.2下段、0511 金 ・銀鉱業に「選鉱(青化処理,とう(搗)鉱処理を含む)」とあり、とうこうと読める
- NDC
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- 各種の金属鉱床.採掘 (562)
- 金属工学.鉱山工学 (560)
- 冶金.合金 (563)
- 参考資料
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新潟県教育庁文化行政課世界遺産登録推進室, 佐渡市教育委員会世界遺産・文化振興課 編 , 新潟県教育委員会 , 佐渡市教育委員会. 佐渡金銀山展. 金gold黄金の国ジパングと佐渡金銀山展実行委員会, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010508069-00 -
斎藤秀三郎 著 , 八木克正 校注 , 斎藤, 秀三郎, 1866-1929 , 八木, 克正, 1944- , 豊田, 実, 1885-1972. 英和中辞典 = SAITO'S IDIOMOLOGICAL ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY : 熟語本位 新版. 岩波書店, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027630517-00 -
本田 正男 , 本田 正男. 搗鉱機の木製のプーリー(日向鉱山). 2009-03. 鉱山研究 / 鉱山研究編集委員会 編(86) p. 53~56
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10259955-00 -
砂崎幸一 著 , 砂崎, 幸一. 鉱山機械. 共立出版, 1942.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001492670-00 -
日本鉱業新聞 (381). 日本鉱業新聞社, 1920-10.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I000018775-00 -
的場幸雄, 渡辺元雄, 小野健二 編 , 的場, 幸雄, 1899-1987 , 渡辺, 元雄, 1898- , 小野, 健二, 1904-1975. 金属製錬技術ハンドブック. 朝倉書店, 1963.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001046232-00 -
長谷川 熊彦. 搗鑛機ノ發達ニ就テ. 1911. 日本鑛業會誌 27(312) p. 129-140
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I003778648-00 -
佐渡鉱山ツアー & 観光スポット. 日本電気協会新聞部, 2017. 電気新聞東北電子版 2017年(平成29年)2月28日(火曜日) p. 4
https://www.denkishimbun.com/pb5012h/wp-content/uploads/2017/02/20170228.pdf -
内藤, 隆夫 , 内藤, 隆夫. 明治期佐渡鉱山の製錬部門における技術導入. 北海道大学大学院経済学研究科, 2013-02-21. 經濟學研究 62(3) p. 95-106
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I005289694-00 -
五味篤. 鹿児島県における金銀製錬法の発達史. 資源・素材学会, 2018. 資源・素材 2018 p. 3410-12-03
https://confit.atlas.jp/guide/event/mmij2018b/subject/3410-12-03/crosssearch -
五味 篤 , 五味 篤. 製錬の歴史 : 「串木野鉱山」編(3)串木野鉱山の技術発達史. 2018. 季刊資源と素材 3(1) p. 65-74
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I028788595-00
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新潟県教育庁文化行政課世界遺産登録推進室, 佐渡市教育委員会世界遺産・文化振興課 編 , 新潟県教育委員会 , 佐渡市教育委員会. 佐渡金銀山展. 金gold黄金の国ジパングと佐渡金銀山展実行委員会, 2009.
- キーワード
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- 搗鉱
- 鉱石
- 鉱山
- 製錬
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000325588