レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/07/17
- 登録日時
- 2021/08/21 00:30
- 更新日時
- 2021/08/21 00:30
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-210157
- 質問
-
未解決
「苗字帯刀」の許可の形式について知りたい。60cm×30cm大の板に墨汁で記すものか,紙に記すものなのか。
- 回答
-
下記の資料1,2のとおり,苗字帯刀の資格は幕府や藩の他様々な諸権力によって与えられていたようです。苗字帯刀の許可をどのような形式で行ったかについての記載はありませんでした。
資料1 国史大辞典編集委員会/編『国史大辞典 13』 吉川弘文館, 1992.4【210.03/コ4/13R】
p.521「みょうじたいとう 名字帯刀」の項に次のような記述があります。
苗字を名乗り帯刀することができる資格。江戸時代には百姓町人は私的には苗字を名乗ることもあったが,公的文書には許されなかった。帯刀も道中差などの脇差は旅行時には許されたが,大刀は許されなかった。それらが何らかの理由で恩典として許されることがあった。村役人などで特別の業績を挙げた者,孝行とか学術修業などで奇特な行為のあった者,または多額の御用金を提供した者などは,幕府や藩から顕彰される場合に,その資格が与えられた。(後略)」
資料2 尾脇/秀和著『刀の明治維新』 吉川弘文館, 2018.8【210.5/2018.8】
p.152に次のような記述があります。「(前略)支配領域を超えた苗字帯刀等の格式許可が,種々の混乱をきたしていた(後略)」
p.155に次のような記述があります。「(前略)帯刀許可は,幕府のほか,その他様々な諸権力により行われた(後略)」
参考までに,仙台藩の苗字帯刀について記述がある資料3,4をご案内します。
資料3 仙台市史編さん委員会/編『仙台市史 資料編4』 仙台市, 2000.3【212.3/1995.0/4AB】
p.129に佐藤祐逸家文書の「24 大肝入申渡書」,「25 覚書」が掲載されています。解説によると,「24号・25号は,大肝入の就任に関する史料。大肝入には,在任中は役料五貫文,勤務手当(一ヶ年三両),名字・帯刀・麻上下・鞍馬が許され,家族共々,特に絹・紬で作った衣類の着用も可能であったことを示している」とあります。
また,p580「解題」-「佐藤祐逸家文書」の項には
「〈前略)長左衛門は献金や功績により藩から知行を与えられると共に,名字・帯刀などの大肝入に認められた格式を代々許される「永々大肝入格」を許された。(中略)佐藤家には,(中略)大肝入・肝入の任免関係史料,幕末期の臨時課役に関する史料群が残されている点が注目される。(後略)」との記述があります。佐藤家については,紙に書かれた文書によって名字帯刀の資格が与えられているようです。
資料4 仙台市史編さん委員会/編『仙台市史 通史編5』 仙台市, 2004.3【212.3/1999.3/5】
pp.162-163「(前略)宮城郡大倉村肝入伊勢之助は,(中略)一八四一年(天保一二)に二五〇両を献金して郡奉行支配下の組抜並(くみぬけなみ)に取り立てられた。(中略)組抜並とは,百姓・町人や足軽(あしがる)などが献金や功績などによって武士身分に取り立てられる際に最初に与えられる格式(後略)」とあり,p.162には「大倉村肝入伊勢之助が組抜並に取り立てられた際の藩からの申し渡し書」の写真が掲載されています。この事例は,献金によって武士身分を獲得したという内容ですが,申し渡し書は,紙に書かれた文書となっています。
- 回答プロセス
-
1 国史大辞典や苗字,刀,江戸の社会システムに関する資料をあたってみたが,苗字帯刀の許可の形式に関する記述は見当たらなかった。
2 次に江戸時代の古文書に関する資料を確認したが,該当するものはなかった。
3 仙台藩が苗字帯刀の資格を与えた事例を探すために,仙台市史や宮城県史の江戸時代の項目を調査した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 系譜.家史.皇室 (288 9版)
- 参考資料
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- 国史大辞典編集委員会/編. 国史大辞典 13. 吉川弘文館, 1992.4【210.03/コ4/13R】:p.521
- 尾脇/秀和?著. 刀の明治維新. 吉川弘文館, 2018.8【210.5/2018.8】:p.152,p.155
- 仙台市史編さん委員会/編. 仙台市史 資料編4. 仙台市, 2000.3【212.3/1995.0/4AB】:p.129,
- 仙台市史編さん委員会/編. 仙台市史 通史編5. 仙台市, 2004.3【212.3/1999.3/5】:pp.162-163
- 宮城県史編纂委員会?編 宮城県?著. 宮城県史 32. 宮城県史刊行会, 1970.3【212.3/1957.3/32】:
- 堀田幸義/著. 近世武家の「個」と社会. 刀水書房, 2007.1【210.5/2007.1】:
- 石上/英一∥[ほか]企画編集委員. 日本の時代史 30. 吉川弘文館, 2004.11【210.1/2002.6/30】:
- 北田 正弘/著. 古文書から学ぶ江戸の知恵、江戸の技. 日刊工業新聞社, 1998.8【210.5/1998.8】:
- 浅井 潤子/編. 暮らしの中の古文書. 吉川弘文館, 1992.4【210.02/1992.4】:
- 高木 俊輔/編著 渡辺 浩一/編著. 日本近世史料学研究. 北海道大学図書刊行会, 2000.2【210.5/2000.2】:
- 大石/学?監修. 江戸時代の「格付け」がわかる本. 洋泉社, 2017.4【210.5/2017.4】:
- 宮城県史編纂委員会/編. 宮城県史 2. 宮城県史刊行会, 1966.3【212.3/1957.3/2】:
- 籠橋/俊光?著. 近世藩領の地域社会と行政. 清文堂出版, 2012.5【322.15/2012.5】:
- 日本古文書学会/編. 日本古文書学論集 13. 吉川弘文館, 1987.10【202.9/ニ4/13】:
- キーワード
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- 苗字帯刀
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000303448