レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20220623
- 登録日時
- 2024/03/27 00:30
- 更新日時
- 2024/03/27 18:19
- 管理番号
- 中央-2023-31
- 質問
-
解決
「監査」という漢語の由来を知りたい。また、auditの訳語として定着した歴史を知りたい。
- 回答
-
都立図書館で所蔵する漢和辞典や語源辞典類を確認した。
また、都立図書館蔵書検索や末尾に記載のデータベース類を、以下の件名やキーワード等を組み合わせて検索した。
・件名:<日本語-語源-辞典><日本語><語彙><外来語><歴史><明治><監査役><会計監査>等
・キーワード:<監査><漢語><語源><翻訳語><audit><由来><じてん><じしょ><近代>等
旧字は新字に直して記載している。
1 「監査」の由来
資料1 『日本語源広辞典』
p.249「かんさ」に、「中国語源【監査】…「監(監督)+査(検査)」」と書かれている。
資料2 『大漢和辞典 巻8』
p.129「【監査】 カンサ」に、「監督し検査する。監察調査」と書かれている。
出典は『清国行政法汎論』で、「清吏司分為十四、各定其管轄区域、処理税務、監査出納、分掌其他事務。」(返り点省略)とある。
なお、『清国行政法汎論』は国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/992645 コマ番号:180)
資料3 『現代に生きる幕末・明治初期漢語辞典』
p.126「かんさ(ス) 監査」に、監査の語が使われている明治期の用例が引用紹介されている。
「出自」は資料2と同じく『清国行政法汎論』。
資料4 『大漢語林』
p.985-986「監」
p.720「査」
それぞれの漢字のなりたち(解字)等が書かれている。
「監」の項に「監査」の意味も書かれているが、出典は資料2と同じく『清国行政法汎論』(p.985)。
資料5 『監査通論』
p.3-5「前編 第一章 一 監査の語義」
「「監査」なる語は何時頃より使用されたかについては明かでない。(中略)明治十四年公布の会計検査院章程に初めて監査なる語が使用された。(中略)明治二十三年の商法に監査役なる語が使用されてから、監査なる語が一般化したのではあるまいか。」(p.3)とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/2460217 コマ番号:9)
情報1 雑誌『月刊監査役』222号 日本監査役協会 1986.9(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:Z4-373)
p.4-15「明治期における監査役」(三枝一雄)
p.5「一 (一)監査・監査役という言葉」の項に、日本で「「監査」という言葉が用いられたのは比較的早く、明治三年(一八七〇)一一月制定の大蔵省所属監督司職制章程中において「省中官吏の身分に関する監査」として、(中略)用いられている。」とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/2829946 コマ番号:3)
情報2 雑誌『月刊監査役』356号 日本監査役協会 1995.11(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:Z4-373)
p.54「<連載企画> 監査漫筆(6)ミイラの監査役」
情報1と同雑誌の別号。
監査の起源について、「(前略)明治三年に官吏の身分に関する監査の章程ができたり、また、私の調査によると、陸軍軍制に砲兵監査(下士官クラス)という職位があった。」とある。
また、監査という言葉については「おそらく、監督・検査を縮めたものと想像される(後略)」とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/2830080 コマ番号:28)
情報3 雑誌『月刊監査役』357号 日本監査役協会 1995.12(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:Z4-373)
p.55「<連載企画> 監査漫筆(7)監査と監査役の語源」
情報2の連載の続き。
「ともかく、監査は明治初年、それもかなり早い時期に何人かによって造られた言葉らしい(後略)」とある。
また、資料4を出典とし、それぞれの漢字の字義についても書かれている。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/2830081 コマ番号:28)
情報4 雑誌『税経新報』225号 税経新人会全国協議会 1980.1(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:Z3-1066)
p.17-26「【時潮】 税理士法改正案の真のねらいは何か」(大西耕三郎)
注(8)に「(前略)「監査」の語源は「監督検査」ないし「監察審査」が圧縮されてできた言葉であるとされており(山桝忠怒「近代監査論」3頁)(後略)」(p.25)とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/2742506 コマ番号:14)
2 auditの訳語が「監査」になった歴史
auditの訳語が「監査」になった歴史については、情報を見出すことができなかった。以下には参考情報を記載する。
資料6 『ウルフ会計史』
p.151-160「第3編 会計監査の起源と進歩 第13章 会計監査の歴史」
「「オウディター」"auditor"という用語の語源(audireー聞くという言葉に由来する)を調べるとき、往古においては、監査は口頭で行われたことを想像させる。そして、このことは聖書のうちからの引用文によって立証されると思われる。」(p.151)とある。
情報5 雑誌『月刊監査役』93号 日本監査役協会 1977.6(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:Z4-373)
p.22-41「<講演速記> 監査役監査のあり方について」(森実)
p.26-28「二 監査とは何か 監査の本質」に、監査の語源の系統の一つである英語の「audit」及びフランス語の「audition」がラテン語で「聞く」という動詞「audire」由来していることについて、「監査というものは本来関係者の陳述を聞くということによって行なわれたという事情を示しています。」(p.26)とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/2829817 コマ番号:14)
情報6 『株式会社の監査制度の研究』(法務研究報告書 第56集 第4号)浦野雄幸著 法務総合研究所 1968(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:AZ-866-31)
p.2「第1章 第2節 第1款 監査の語源的意味」
「audit」の由来について、「他人の行なった行為の結果の正否を確認する方法として、相手方の陳述を聴取したり、その結果を調査することからはじまったといわれる。」とある。
また、日本語の監査という語についても、資料5を出典とした内容が書かれている。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/3447317 コマ番号:10)
この他、所蔵資料や国立国会図書館デジタルコレクションにて、主に明治期の英和・和英辞典類を確認した。
資料7 『英和俗語活法 [第4編]』訂正増補
確認資料のうち、「audit」の訳語として「監査」の語が記載されている一番古い資料。
p.42-104「商業慣用語辞典」のうち、p.46「Audit」の意味として「監査。検査。」とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館内/図書館・個人送信限定 https://dl.ndl.go.jp/pid/870094 コマ番号:36)
なお、「Auditor」の訳語として「監査役」という語が記載されている資料であれば、資料7よりも古いものを見出せた。
情報7 『新訳英和辞典』神田乃武等編 三省堂 1902.6(都立図書館所蔵なし 国立国会図書館請求記号:特64-981)
p.67「Audi-tor」に「1 会計検査官, 監査役.」とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/pid/870151 コマ番号:39)
以上、インターネット情報の最終検索日及び最終アクセス日は2024年3月10日。
【調査に使用したデータベース類】(都立図書館で契約しているデータベースには*を付す。)
・国立国会図書館サーチ(国立国会図書館)https://ndlsearch.ndl.go.jp/
・国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館)https://dl.ndl.go.jp/
・リサーチ・ナビ(国立国会図書館)https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi
・CiNii Research(国立情報学研究所)https://cir.nii.ac.jp/
・日本語研究・日本語教育文献データベース(国立国語研究所)https://bibdb.ninjal.ac.jp/bunken/ja/
・Google Books(Google)https://books.google.co.jp/
・雑誌記事索引集成データベース ざっさくプラス(皓星社)*
・MagazinePlus(マガジンプラス)(日外アソシエーツ)*
・ジャパンナレッジ Lib(ネットアドバンス)*
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 語源.意味[語義] (812 10版)
- 参考資料
-
- 【資料1】日本語源広辞典 / 増補版 / 増井 金典/著 / ミネルヴァ書房 / 2012.8 <R/812.0/5036/2012> , ISBN 978-4-623-06324-6 (p.249)
- 【資料2】大漢和辞典 巻8 / 修訂第2版 / 諸橋轍次/著 / 大修館書店 / 1989.11 <R/8132/61/8C> (p.129)
- 【資料3】現代に生きる幕末・明治初期漢語辞典 / 佐藤 亨/著 / 明治書院 / 2007.6 <R/813.4/5022/2007> , ISBN 978-4-625-40400-9 (p.126)
- 【資料4】大漢語林 / 鎌田 正, 米山 寅太郎/著 / 大修館書店 / 1992.4 <R/8132/3011/92> (p.720, 985-986)
- 【資料5】監査通論(新会計学全書)/ 野本悌之助/著 / 国元書房 / 1952 <6799/22/> (p.3)
- 【資料6】ウルフ会計史 / ウルフ/[著] 片岡義雄, 片岡泰彦/訳 / 法政大学出版局 / 1977 <6790/135/77> (p.151)
- 【資料7】英和俗語活法 [第4編] / 訂正増補 / 荒木和一/著 / 丸善株式会社書店 / 1902.8 <834.0/5051/4> (p.46)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000348067