レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年08月26日
- 登録日時
- 2023/08/26 09:16
- 更新日時
- 2023/08/30 13:23
- 提供館
- 福井県文書館 (9000002)
- 管理番号
- 2023-001
- 質問
-
解決
福井県の県鳥ツグミ、県花スイセン、県木マツ、県魚越前がにについて、それに決定した経緯や理由を知りたい
- 回答
-
[県木 マツに関して] 昭和41年9月13日に正式決定
福井新聞 昭和41年9月14日の記事によると、昭和41年7月から、福井県と県森林組合連合会、県緑化推進協議会などで、県民の緑化思想を高めようと一般公募を始めた。同年9月3日の「県の木選定委員会」ではスギ、マツ、ケヤキ、イチョウ、コブシを最終候補に挙げ、12日の第2回選定委員会で決定、13日に正式決定し発表した。
マツを選んだ理由は
1.寿命が長く、清楚で他の樹木の育たないところでもよく成長する生命力のたくましさが、質実剛健な県民性を象徴するのにふさわしい。
2.マツの美林も多く、県内に広く分布し盆栽、庭木、公園樹などとして県民に親しまれている。
3.福井藩主・結城秀康がマツ苗の植付を奨励したり、若狭藩主・酒井忠勝が若狭路と熊川路にマツの並木を作ったりなどの史実もあり、古くから親しまれている。
とのこと。
なお、平成18年2月発刊『図書館ふくい』によると、
結城秀康がマツ植樹を奨励したとの根拠となる文献はなく、貞享年間の「山方御定法竝御仕来書(『日本林制史資料』第9巻)」に「慶長六年、山奉行 大町靭負が松苗木小口三間に一本宛植付けしめ…」と引用されているのを根拠としたと思われる、とある。
[県鳥 ツグミに関して] 昭和42年12月6日決定
福井新聞 昭和42年12月7日の記事によれば、福井県の県鳥は昭和39年5月にコウノトリに決定したが数が減り「まぼろしの県鳥」となってしまったため、昭和42年に県鳥の指定を変更しようと県鳥指定審査会を設け、同年11月に人気投票を行った。他候補に挙がったのはヤマドリ、アオサギ、コチドリ、ケリで、ツグミは圧倒的人気で総投票の43%を獲得し、同年12月6日の県鳥指定審査会によって定められた。ツグミは戦前から「秋の味覚」として狩猟されていたため、保護鳥になってからも密漁が絶えず、「県鳥に指定して狩猟を厳禁してほしい」との声も上がった、と書かれている。
[県花 スイセンに関して] 昭和29年5月1日指定
『福井県史 年表』P.402に『1954.5.1 県、スイセンを「県の花」に指定』との記載あり
福井新聞 昭和29年3月17日の記事によると、公募は福井放送局(NHK)、県、県観光連盟、福井新聞社との共催で行われ、3月16日の選考委員会で決定した、とある。
『1955年版NHK年鑑』P.10には、ラジオ局農事課に設けられた「中央選定委員会」には牧野富太郎、本田正次が委嘱されたとある。2月下旬に各都道府県ごとに「郷土の花」の募集が開始され、3月15日に一般募集を締切り、「地方選定委員会」開催、3月19日に「中央選定委員会」が開催され地方選定委員会の報告に基づいて各都道府県の花を決定し、3月22日にNHK開局29周年記念の特集番組として選定した「郷土の花」を発表したとある。
本田正次著『郷土の花』には、昭和29年2月15日発行の「植物の友」第8号の巻頭にて、「郷土花の選定について」の記事を載せ、全国会員に呼びかけることになった、とある。「文部・農林・運輸各省の後援のもとに、NHK・日本交通公社・全日本観光連盟・植物友の会の四社共催をもってはなばなしくこれを実施することになった」「選定は各都道府県ごとに地方委員会を設け、県民が投票してこれを決定し、中央委員会はこの整理に当たる」と書かれている。選定にあたっては
1.郷土の誇りとする花 2.郷土の人々に広く知られ愛されている花 3.郷土の産業・観光・生活などに関係の深い花 4.郷土の文学・伝説などに結び付いている花 5.その地方にのみ見られる珍しい花
とあり、応募方法は最寄のNHKの郷土花選定委員会あてに送るものとされた。
同書の中で福井県のスイセンについては『「越前岬を中心とする海岸線に栽培され、正月の切花として知られている。純白で香り高い越前水仙は県人の性格を現わす」という理由で推薦されてきたのでは、返すことばもない』と書かれている。
平成18年8月に発表された品田早苗・百瀬響著『「郷土」と結びつくイメージ-「郷土の花」選定過程を中心に-』によると、第6章に「各都道府県においても、「郷土の花」を使用した活動が行われ、「郷土の花」をシンボルとして利用した活動は民間にまで広がり、様々な活動に利用されるようになった」との記載がある。
※1965年発刊『福井農林統計』第14巻1号「郷土めぐり 越前水仙 大久保善作著」およびそれを参考に書かれた「越前海岸の水仙畑 文化的景観保存調査報告書 福井県観光営業部文化課編」があるが、呼びかけの開始時期や選定委員会の日程にNHK年鑑や新聞との差異があり、誤植の可能性がないか確認したい。
[県魚 越前がにに関して] 平成元年3月21日指定
福井新聞 平成元年1月17日の記事に、「福井県の魚募集」の記載あり。福井県の水産業と魚への関心を高め、さらに本県で捕れた新鮮な魚を全国にアピールしようという狙い。公募した県漁業懇話会の意見を聴いた上で知事が決定する、とある。
福井新聞 平成元年3月18日の記事に「県の魚に越前がに」の記載あり。県は県議会産業常任委員会で水産課長が明らかにし、21日付で正式に指定とある。県民からの公募では29種類の魚の名が挙げられたが、「越前がに」が最も多く、「カレイ」が2番目。この結果をもとに3月1日に開いた漁業懇話会の席で「古くからの特産でもあり県の魚にふさわしい」との意見が多く決まったとある。
農林水産部水産課資料によると公募期間は1月15日~2月18日で、応募総数536件中カニが219件を占め、3月21日に「越前がに」が指定された。
福井新聞社の運営するサイト「かにカニ福井」(https://kani.fukuishimbun.co.jp/news/347.html)によると、この動きは県の「ブランド化推進事業」の一環であり、県の魚に指定することでそれまで「ズワイガニ」としか呼んでいなかった呼称を「越前がに」と統一したとある。
- 回答プロセス
-
1.歴史的公文書を調査。広報課から一般の方への回答文に県花、県木が決定した年を見つけることができた。
2.「デジタルアーカイブ福井」で、福井新聞を検索。鳥、木に関して記事を見つけることができた。
3.福井県立図書館で「県花・県鳥」に関する書籍を検索。いくつかの書籍を見つけることができた。
4.インターネットで「福井県の花」で検索し、関係した論文(下記参考資料)を見つけることができた。
5.水仙に関しては福井県報、福井県議会案、福井県議会議事録を調べたが、県の花として公式に指定された経緯は見つけることができなかった。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
-
-
本田正次. 郷土の花. 三省堂, 1957-07-25. (三省堂百科シリーズ ; 36)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000134-I000258662-00 -
品田 早苗 , 百瀬 響 , 品田 早苗 , 百瀬 響. 「郷土」と結びつくイメージ--「郷土の花」選定過程を中心に. 北海道教育大学, 2006-08. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 = Journal of Hokkaido University of Education. Humanities and social sciences / 北海道教育大学 編 57(1) p. 115~126
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I8586274-00 -
中西悟堂 共著 , 本田正次 共著 , ナカニシ,ゴドウ , ホンダ,ショウジ. 原色 県花・県鳥 : 物語と図鑑. 東雲堂, 1967.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I051127936-00 -
日本放送協会 編 , 日本放送協会. NHK年鑑 1955〔年版〕. 日本放送出版協会, 1954.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I000801340-00 -
農林省 編纂 , 農林省. 日本林制史資料. 臨川書店, 1971.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001148755-00
-
本田正次. 郷土の花. 三省堂, 1957-07-25. (三省堂百科シリーズ ; 36)
- キーワード
-
- ツグミ
- コウノトリ
- マツ
- スイセン
- 越前がに
- 県鳥
- 県木
- 県花
- 県魚
- 照会先
- 寄与者
- 備考
-
福井県の県鳥はツグミだが、なぜツグミになったのか。また、ツグミの前はコウノトリだったが、なぜコウノトリだったのか。
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000260539
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000337570