【書籍】
・『保守とネトウヨの近現代史』(倉山満/著、扶桑社、2020.10)
→「保守が語るネトウヨの本」をコンセプトに書かれた本。一枚岩ではない「ネトウヨ」「保守」の世界について指摘。「ネトウヨ(ネット右翼)」というが、出版物によって彼らは自分たちが認められていると感じる、「保守」は思想ではなくビジネス、などの指摘が興味深い。
・『ロスジェネのすべて-格差、貧困、「戦争論」-』(雨宮処凛/編著 倉橋耕平/[ほか著]、あけび書房、2020.2)
→p27-89倉橋耕平/述 雨宮処凛/述「ロスジェネと『戦争論』、そして歴史修正主義」。
“『新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論』が出た時、とんでもないものが出たと思った。けど、こんなものを本気で相手にするのはばかばかしいし、みんなこんなの大嘘だって分かってるから、いちいち抗議することによってもっと注目を集めるから止めようと思って当時は黙っていた。でも今、それをすごく後悔している、と。なぜなら20年経った今、『戦争論』的な歴史観を信じている人が大勢いて、その歴史観がかなりの力を持ってしまっている。20年前の反省を生かして、今、反ヘイトをやっていますっていう…(後略)”
・『ヘイト・スピーチと地方自治体-共犯にならないために-』(前田朗/著、三一書房 、2019.10)
→ヘイト・スピーチの諸問題について解説。主に自治体がどのように対応しているのか、憲法の精神、法整備、ガイドライン制定などに言及。欧州の事例も紹介。
・『歪む社会-歴史修正主義の台頭と虚妄の愛国に抗う-』(安田浩一/著 倉橋耕平/著、論創社 2019.2)
→ジャーナリストと社会学者が、90年代から現在に至る右派の動向について議論。
・『歴史修正主義とサブカルチャー-90年代保守言説のメディア文化-』(倉橋耕平/著、青弓社、2018.2)
→「歴史修正主義」を対象に、「新しい歴史教科書をつくる会」等の活動が活発になる1990年代以降に起こった政治とメディア文化を批判的に分析。冒頭部分で“「歴史修正主義」に対する批判は非常に多く、その主張が『欺瞞』や『隠蔽』、ならびに『誤謬』と『無知』に満ちていると指摘され尽くしても、なぜ彼らはそれをやめないのか”と問い、それに対して“『ゲーム』(知的枠組み)が違うからだ。私たちが、一般的な社会活動で共有している『手続き』(客観性、事実、エビデンス、調査、承認など)それ自体が失効している印象さえ受ける。(中略)すなわち、歴史修正主義者の実践は学問とは異なる規則、異なる目的、異なる場所で展開されているのだ。であるならば、問わなければならないのは、その場でのルール、目的、力学ではないのか”
・『ヘイトスピーチとたたかう!-日本版排外主義批判-』(有田芳生/著、岩波書店、2013.9)
→本著末尾に座談会「差別へのカウンター」収録。民族派右翼団体やネット右翼らの在特会デモへの同調、それらに対するカウンター行動について、実例を交えながら解説。
・『ネットと愛国-在特会の「闇」を追いかけて-』(安田浩一/著、講談社、2012.4)
→差別的な言葉を使って街宣活動を行う日本最大の「市民保守団体」在特会(在日特権を許さない市民の会)についてのノンフィクション。。p314から始まる9章「在特会に加わる理由」では、承認欲求や疑似家族を求める会員の姿を指摘。右翼が、「奪われたと感じるもの」の受け皿として機能していることを指摘(本来は左翼の役割だった)。90年代から顕著になったネット空間の大衆化によって、「感情」の応酬がネット空間の主流を形成していく中で、アカデミズムの人々はネット言論に関わることを敬遠した(ネットは議論に向かないメディア、多くの左派やリベラルも、正しいことは声高に訴えなくても必ず世間に浸透するものだと素朴な正義感を持ち出して…(後略))と指摘。
・『歴史修正主義の克服-ゆがめられた<戦争論>を問う-』(山田朗/著、高文研、2001.12)
→自由主義史観、司馬史観、小林よしのり「戦争論」、「つくる会」教科書など、90年代後半から台頭してきた歴史修正主義の思想的特質を総括。
【新聞記事】
朝日新聞データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」にて、キーワード「歴史修正主義者」「ネトウヨ」「ヘイトスピーチ」等で検索。ヒットした中から「対処法」についてヒントになりそうな記事としては、例えば
・〈(著者に会いたい)『超空気支配社会』辻田真佐憲さん〉2021年8月21日朝刊
→歴史修正主義に対して“ファクトチェックだけでは現実は全く動かない。よりまともな物語で上書きしていく必要がある”“人と会い、会合の後に雑談することこそが総合知を養う”
・〈(藤田直哉のネット方面見聞録)「科学」「感情」対立ではなく〉2021年2月27日夕刊
→“歴史修正主義者は、実証的な歴史学を疑って批判しているつもりだろう…(中略)科学や報道における批判や懐疑の方法論や存在意義を共有していない者たちがそれをまねして、発信できてしまう。
歴史修正主義者の中には、ロマンや神話を擁護したい者もいる。(中略)彼らも、「科学」や「正しさ」に暴力性を感じているかもしれない。“
・〈(#論壇)私は「普通」…陰謀論にご注意〉2021年1月20日朝刊
→ネトウヨを研究している教授が2019年に約1500人を対象にWEB調査を行ったところ、政治的に左右どちらでもない「普通の日本人」を自認する人ほど、陰謀論を信じやすい傾向にあると判明。陰謀論を信じてはいけない、と真正面で論じるばかりではなく、自分のものの見方は本当に『普通』なのか、と見つめ直すきっかけを与えることも大事なのだと思う、と述べている。
・〈(インタビュー)歴史めぐるフェイク、疑え 私立西大和学園中学・高等学校教諭、浮世博史さん〉2020年7月15日朝刊
→『もう一つ上の日本史』の著者、浮世博史さんへのインタビュー。歴史にまつわる誤認を見抜くポイントとして「自分の主義主張が先にあり、それに合わせて歴史を語る」というわかりやすい特徴があると指摘。また、一面的な評価、人物中心で語られる歴史にも注意を促している。
それと同時に、歴史修正主義が支持されるのは、彼らのほうが大衆の心に入りこめているからで、リベラルとされる人たちの語りに『上から目線』がないかと指摘している。
・〈いまだからこそ不条理と闘う あえて「左翼」「右翼」に飛び込んだ若者たち〉2019年1月28日号週刊アエラ
→ネトウヨではなく、かつての「右翼」を名乗る青年へのインタビューの他、左翼や右翼の活動に身を投じる4人の若者を追った記事。
・〈(時代を読む)インターネット気持ちがいい「正義の味方」「ネット右翼」は中高年の男性が意外に多い〉2018年10月22日号週刊アエラ
→本記事の中では、ネット右翼の行動や心理を研究するサイト「ネトウヨ大百科」が紹介されている。黒歴史から早く決別したいという人が、ネット右翼になった経緯や当時の心理を自己分析した告白を日々投稿しているというもの。このサイトからの引用で、ネトウヨを支えているのは愛国心ではなく他国への蔑視であると指摘。
【WEBサイト】
・「論座」2018年1月31日(最終確認:20210831)
〈無視か反論か。ネトウヨ、ネトミソ対処法〉
https://webronza.asahi.com/culture/articles/2018013100003.html?page=1 →ネトウヨと呼ばれる人から批判を受けた際の対応として、無視と反論のどちらが効果的なのか…ということについて考察したもの。全文読むには登録が必要。
・ファクトチェックイニシアティブ(最終確認:20210829)
https://fij.info/introduction →誤った情報の類型、情報を精査するためにどのような対応が有効かなどについて記載されている。コミック形式で、ファクトチェックの啓発PDFもあり。