レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20200624
- 登録日時
- 2021/08/27 00:30
- 更新日時
- 2023/12/23 15:48
- 管理番号
- 多摩-2021-02
- 質問
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解決
1918(大正7)年1月から1920(大正9)年12月頃のスペイン風邪の流行当時に発行されていた資料の中で、一般市民の行動が分かるような雑誌記事を見たい。
- 回答
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まず、当時の出版界の状況、発行されていた雑誌等について基礎知識を得るため、国立国会図書館のリサーチ・ナビ「明治・大正期雑誌の目録」を確認した。
(https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-612.php 最終確認日:2021年7月5日)
掲載の資料1『日本出版百年史年表』の該当年を確認したところ、以下の記述があった。(資料1はデジタル版もある。http://www.shuppan-nenpyo.jp/ 最終確認日:2021年7月5日)
p.330:1918年10月、「スペインかぜの大流行はじまる(翌年にかけて全国の死者15万名という)」
p.333:1919年2月、「流行性感冒,全国的に流行(患者150万名,死者15万名という)」
また、当時創刊された雑誌の総合誌として、『大観』(大観社 1918年5月)、『寸鐵』(博文館 1919年1月)、『改造』(改造社 1919年4月)、『現代』(大日本雄弁会 1920年10月)などが確認できた。
次に、他機関などでまとめている可能性があると考え、Googleでキーワード<スペイン風邪>と<雑誌記事>をかけ合わせて検索したところ、雑誌の専門図書館「大宅壮一文庫」HP内のタイムリーな記事紹介をしている「索引紹介」ページがヒットした。「スペイン風邪」についての雑誌記事(見出し)が30件が紹介されており、この中に当時の雑誌記事として、以下の3件も含まれていた。
(https://www.oya-bunko.or.jp/magazine/introduction/tabid/741/Default.aspx 最終確認日:2021年7月5日)
・「流行感冒恐るゝに足らず 今次の流行感冒 流行のあとを顧みて」(『日本及日本人』1920年3月1日):資料2
・「感冒の原因及予防法」(『太陽』1918年12月1日):資料3(オンラインデータベース「ジャパンナレッジ」でも閲覧可能)
・「流行感冒に就て」(『日本及日本人』1918年11月15日):都立図書館所蔵なし
これらを確認した上で、以下のとおり調査を行った。なお、検索に使用するキーワードとしては、当時の呼び方を考慮し、「感冒」「流行性感冒」「流行感冒」「西班牙風邪」を用いた。
1.雑誌記事検索データベースを検索
古い雑誌記事を検索することのできるオンラインデータベース「ざっさくプラス」を、刊行年<大正7(1918)年~大正10(1921)年>、キーワード<感冒>で検索すると192件、<流行性感冒>で検索すると121件、キーワード<流行感冒>で検索すると13件、<西班牙風邪>で検索すると2件の記事がヒットした。記事を確認すると、医学系の内容が大半を占めていたが、資料4~7等には、一般市民の行動が載っていた。
資料4:『婦人之友』13巻5号(1919年5月)
p.58-60 渡邊たみ子「流行性感冒に罹らなかつた譯」
筆者が流行性感冒にかからないために行っていたことが記載されている。
資料5:『処女の友』3巻10号(大正9年10月)
p.35 「処女新報十月号 流行性感冒」
流行性感冒の症状や、外出後は必ずうがいを行い、埃の多い日や場所にはあまり出かけないように、との注意喚起が記載されている。
資料6:『婦人衛生雑誌』351号(大正9年1月)
p.37-38「家庭衛生 流行性感冒予防の心得」
悪性の感冒が流行し、年々性質が悪くなってきたため、警視庁では流行性感冒予防の心得に関する印刷物を配布したと延べ、感染の原因、予防の心得、感染した時の対処法などを紹介している。
資料7:『婦人衛生雑誌』357号(大正10年1月)
p.29-34 佐々木秀一「流行性感冒に対する心得」
風邪くらいと思って油断してはいけない、軽いうちに十分な手当をすることが治療の秘訣である、もう大丈夫だろうと思って無理をするとぶり返して重態に陥ることがある等、この病気の特徴や症状を詳しく説明し、罹った際にとるべき行動などを記載している。
2.当時出版されていた雑誌の総目次集の確認
古い雑誌記事で各データベースに採録されていない場合でも、総目次の該当年を確認する方法がある。当館には、資料7、8のような主題別のもののほか、資料9のような個別の雑誌の総目次がある。例えば、資料7の第5巻より資料10、第7巻より資料11、第11巻より資料12に記事が掲載されていることがわかった。
資料8:『近代婦人雑誌目次総覧』全15巻
明治期から昭和にかけて出版された婦人誌の目次を、原則として創刊号から終刊号まで順次、原寸収録。
資料9:書誌書目シリーズ59・65・68・77『戦前期四大婦人雑誌目次集成』全36巻
『婦人公論』『主婦之友』『婦人画報』『婦人倶楽部』4誌の創刊号から昭和25年までの表紙・目次・奥付・裏表紙を復刻版にて収録。
資料10:『中央公論総目次 自創刊号至一〇〇〇号』
『中央公論』の創刊号から1000号までの目次を写真製版で収録。
資料11:『婦人衛生雑誌』346号(大正8年3月)
p.39-42 高島平三郎「感冒の流行を機会として」
流行性感冒の感染拡大を防ぐためには、ただ学校を休校にするのではなく、これを機に一般衛生の徹底をするべきということ、食前食後に口を注ぐ習慣を養うこと、また加持祈祷や迷信にたよるのではなく専門科学の指導に従うべきであることなどが記載されている。
資料12:『女学世界』20巻3号 (大正9年3月)
p.92-93 小笠原寛三「感冒マスクの効用(漫画)」
感冒が流行して新聞にマスクの事が出ていたとの記述と、実際にマスクを着用している女性の様子が記載されている。
資料13:『婦人週報』5巻5号(大正8年2月)
p.10-11 藤井かう子「悪性感冒の予防と手当」
感冒の予防と、罹った際にとるべき行動などが記載されている。
3.当時創刊された雑誌の確認
雑誌の創刊号は、創刊の辞などで当時の時代背景について言及している場合がある。都立多摩図書館の創刊号コレクションは発行年順に配架しているため、1918(大正7)年から1920(大正9)年の創刊号を確認したところ、以下の雑誌に関連の記載があることがわかった。
資料14:『寸鐵』1巻 1号 (1919年1月) 博文館
p.142-145 医学博士 林春雄「人類の強敵 西班牙風邪を征服せよ」
身体の強壮を心がけ、病原菌に対する抵抗力を養っておくことが大切であると強調している。
参考文献のうち、資料2、3は都立中央図書館所蔵、それ以外は都立多摩図書館所蔵資料である。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 内科学 (493 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】日本出版百年史年表 日本書籍出版協会/編集 / 日本書籍出版協会 / 1968 <R/ 0231/ 20/ 68> (p.324-349)
- 【資料2】雑誌:日本及日本人 773~798号 (大9.1~12) 政経社
- 【資料3】雑誌:太陽 24巻 14号 (大7.12) 博文館
- 【資料4】雑誌:婦人之友 13巻 5号 (1919年5月) 婦人之友社 (p.53-60)
- 【資料5】雑誌:処女の友 複製版3巻 (3巻8号~4巻4号 (大正9年8月~大正10年4月)) 不二出版 (p.35)
- 【資料6】雑誌:婦人衛生雑誌 複製版34巻 (351~360号(1920.1~1921.8)) 大空社 (p.37-38)
- 【資料7】雑誌:婦人衛生雑誌 複製版34巻 (351~360号(1920.1~1921.8)) 大空社 (p.29-34)
- 【資料8】近代婦人雑誌目次総覧 第1巻 / 近代女性文化史研究会/編集 / 大空社 / 1985 <0275/ 4/ 1>
- 【資料9】婦人公論 第1巻 / 与那覇 恵子/監修 / ゆまに書房 / 2002.3 <051.7/ 5002/ 1>
- 【資料10】中央公論総目次 自創刊号至一〇〇〇号 / 中央公論社/編 / 中央公論社 / 1970 <R/ 0503/ チ/ 70>
- 【資料11】雑誌:婦人衛生雑誌 複製版33巻 (341~350号(1918.5~1919.11)) 大空社 (p.39-42)
- 【資料12】雑誌:女学世界 複製版50巻 (20巻3,4号 (大正9年3,4月)) 柏書房 (p.128-129)
- 【資料13】雑誌:20世紀女性研究の夜明け 複製版7巻 「婦人週報」 (5巻1号~27号(1919年1月1日~7月11日)) 大空社 (p.122-123)
- 【資料14】雑誌:寸鐵 1巻 1号 (1919年1月) 博文館
- キーワード
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- インフルエンザ
- パンデミック
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000303736