①『小学校英語の文字指導』には、外国語科の導入までの経緯についての記述がある。
公立小学校における外国語活動は、1992年に大阪の2つの市立小学校から始まった。1998年告示の学習指導要領では、新たに「総合的な学習の時間」が設定された。この総合的な学習の時間の枠内で、国際理解に関する学習の一環としての外国語会話などを実施することが可能となった。その結果多くの小学校で外国語会話が実施されたが、学校裁量で行われたことから、実施形態は千差万別であった。文部科学省は教育の機会均等、また中学校への連携を考え、2008年告示の学習指導要領のもと、高学年を対象とした週1回の外国語活動を新設し、必修科目とした。
外国語活動の導入に伴い、外国語に対する興味や学習意欲が高まり、中学校でも積極的に外国語に取り組もうとする児童が増えたという良い効果が報告された一方、「①音声中心で学んだことが、中学校の段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていない、②日本語と英語の音声の違いや英語の発音と綴りの関係、文構造の学習において課題がある、③高学年は児童の抽象的な思考力が高まる段階であり、より体系的な学習が求められる」(学習指導要領解説、2017、p.7)などの課題が指摘された。
「小学校の英語活動実践の手引き」(文部科学省、2005)では、「小学校段階では、音声と文字とを切り離して、音声を中心にした指導を心がけることが大切である」と書かれており、文字指導はしなくてよいとされている。
しかし、必修科目として導入された外国語活動の副読本として、移行期間を含め当初3年間使用されていた「英語ノート」では、6年生の最初のユニット「アルファベットで遊ぼう」において文字に触れる活動が導入された。続いて外国語活動の副読本として使用された「Hi,friends!」では、「アルファベットをさがそう」で大文字、「アルファベットクイズを作ろう」で小文字が導入されている、との記述がある。
②『学習指導要領 外国語活動・外国語編』には、外国語科導入の趣旨に関して、
上記資料の問題点に関する記述の後、「今回の改訂では、小学校中学年から外国語活動を導入し、「聞くこと」、「話すこと」を中心とした活動を通じて外国語に慣れ親しみ外国語学習への動機付けを高めた上で、高学年から発達の段階に応じて段階的に文字を「読むこと」、「書くこと」を加えて総合的・系統的に扱う教科学習を行うとともに、中学校への接続を図ることを重視することとしている。」との、記述がある。
③『なぜ、いま小学校で外国語を学ぶのか』には、文字指導の具体的な内容について、
「小学校では、中学年でアルファベットの大文字・小文字に慣れ親しんだ経験を生かし、5年生の前半に、時間をかけて、アルファベットの大文字・小文字の認識を深めます。つまり文字の読み方(名称)が分かり、その読み方と文字を一致できる、文字を4線に書くことができるようにします。そのうえで、5年生半ばごろから、アルファベットの文字には、名称のほかに、もう一つの読み方、「音」があることを学び、それにジングル等を通して慣れ親しみます。その後、英単語を書き写すという作業を非常に丁寧にしています。小学6年生まで、1年半の期間をかけて、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写したり、例文を参考に書いたりと、書くことについて細かなステップを踏んでいます。」との記述がある。