レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011年07月10日
- 登録日時
- 2011/07/10 10:21
- 更新日時
- 2011/07/10 16:14
- 管理番号
- 牛久-772
- 質問
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解決
平家物語の冒頭、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色盛者必衰の理をあらわす」に
ついて、
①沙羅双樹とは具体的に何を指すのか(インターネットで調べたら、ナツツバキとあるが、それで本当に
正しいのか)、
②沙羅双樹は仏教思想との関連が見て取れるが、なぜ沙羅双樹の花の色が盛者必衰の断りにつながるのか。
- 回答
-
①ナツツバキではなく、仏教思想上の沙羅双樹。
②平家物語以前から、沙羅双樹の白化は死<盛者必衰>を想起させるという考えがあった。
- 回答プロセス
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①自館所蔵の「平家物語大事典」をあたる。
→沙羅双樹は“ナツツバキではなく、仏陀入滅の際、周囲に生えていた沙羅の木を指す”との記述あり。
仏陀入滅の際に、花以外にも樹皮も白く変色したとのこと。
上記を質問者に提示したところ、②の疑問が生まれた。
平家物語成立時に仏陀入滅時の逸話がどのような意味を持っていたのか知りたいとのこと。
②「平家物語大事典」の諸行無常の項に“盛者=生者必衰とする考えがある”との記述あり。
さらに、沙羅双樹の項に“『後拾遺和歌集』の544番の和歌に、沙羅双樹の記載がある”との記述あり。
③「新日本古典文学大系 8 後拾遺和歌集」をあたる。
→例え、沙羅双樹が用いられていた。546番の和歌、道長への弔歌にもはっきりと
“仏陀入滅時の昔の薪(沙羅双樹)も、京の君の齢も、尽き果ててしまったのは悲しい”とあり。
→死と仏陀入滅の際の沙羅双樹の白化が死を連想させるものと仮定できる。
ちなみに、道長没は1028年。後拾遺和歌集の上梓は1086年。
平家物語は口伝のため、正確な完成年数は不明だが、源平合戦や平清盛の生年である1118年と比較すれば、
544番目や546番目の和歌が平家物語より以前のものと断定できる。
上記を質問者に提示したところ、納得していただけたのでレファレンス終了。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本文学 (910 8版)
- 参考資料
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- 「平家物語大事典」(大津雄一他/東京書籍/2010)
- キーワード
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- 平家物語
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 文学
- 質問者区分
- 一般男性
- 登録番号
- 1000088282