レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/07/20
- 登録日時
- 2023/08/27 00:30
- 更新日時
- 2023/08/27 00:30
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-230037
- 質問
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解決
古代の蝦夷(えみし)の人名、特に女性の名前を知りたい。
蝦夷の男性の名前は「アテルイ」や「モレ」、「あざまろ」など記されている資料を見るが、蝦夷の女性の名前を資料で見つけられなかった。
また、「あざまろ」などは恐らく大和朝廷側が呼んでいた名前のように思われるので、「アテルイ」や「モレ」のように、アイヌ系の名前に近い、蝦夷の人々が本来呼び合っていたであろう響きの名前が知りたい。
- 回答
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下記資料に関連の記載がありました。※【 】内は当館請求記号です。
〔回答資料〕
資料1 工藤雅樹著『古代蝦夷の英雄時代』(平凡社ライブラリー ; 554), 平凡社, 2005年【210.3/2005.X】
資料2 及川洵著『アテルイ研究入門』アテルイ研究会, 2002年【210.3/2002.Z】
資料3 [藤原緒嗣ほか撰] ; 森田悌[訳]『日本後紀』上, (講談社学術文庫 ; 1787), 講談社, 2006年【210.36/2006.X/Bコウカ】
資料1(pp.152-154)に、「(前略)政府側が蝦夷の族長層に対して位階や君(七五九<天平宝字三>年以後は公の文字を用いる)のカバネ(姓)を与え、族長層を政府側の秩序のなかにとり込み、族長層を通して蝦夷の世界に勢力をのばす政策をとっていたのである。(中略)君(公)姓を有する人物は、具体的には地名+公+個人名の形をとる。(後略)」とあります。
古代蝦夷の人名が確認できるものは下記のとおりですが、君(公)姓を有する人物を含みます。また、各個人名とアイヌ語との関連性は調査しておりません。
資料1(pp.154-155)より
・邑良志部君宇蘇弥奈(おらしべのきみ うそみな)(香河村)
・須賀君古麻比留(すがのきみ こまひる)(閇村)
・遠田君雄人(とおだのきみ おひと)(田夷・遠田郡)
・和賀君計安塁(わがのきみ けあるい)(帰服の狄・和賀地方の族長)
・伊治公呰麻呂(これはりのきみ あざまろ)(上治郡大領・下従七位上)
・大墓公阿弖流為(おおはかのきみ あてるい)(胆沢の夷)
・磐具公母礼(いわぐのきみ もれ)(胆沢の夷)
・胆沢公阿奴志己(いさわのきみ あぬしき)(斯波村)
同資料(p.170)より
・吉弥候部於夜志閇(きみこべの おやしべ) ※俘囚(政府側についている蝦夷のこと)
・吉弥候部都留岐(きみこべの つるき)(邑良志部村の族長)
・伊加古(いかこ)(爾薩体村の夷)
資料2(p.137)より
・伊佐西古(いさせこ)
・諸絞(もろくり)
・八十嶋(やそしま)
・乙代(おとしろ)
同資料(p.170)より ※資料3(p.38)にも掲載あり
・爾散南公阿波蘇(にさなんのきみ あわそ)
・宇漢米公隠賀(うかんめのきみ お(ん)が)
・吉弥候部荒嶋(きみこべの あらしま) ※俘囚
資料3(p.80)より
・大伴部阿弖良(おおともべの あてら) ※俘囚
同資料(p.231)より
・吉弥候部黒田(きみこべの くろだ) ※俘囚
・吉弥候部田苅女(きみこべの たかりめ) ※吉弥候部黒田の妻
・吉弥候部都保呂(きみこべの つほろ) ※俘囚
・吉弥候部留志女(きみこべの るしめ) ※吉弥候部都保呂の妻
同資料(p.306)より
・浦田臣史?儺(うらたのおみ しこな)
- 回答プロセス
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「蝦夷」は大和朝廷の支配地域が広がるにつれ、「蝦夷」と呼ばれる人々とその地理的範囲は変化している。例えば古代における「蝦夷(えみし)」は北東日本の人々を指すが、近世以降は「蝦夷(えぞ)」が北海道から樺太、千島列島、カムチャツカ半島南部に居住するアイヌ民族を指すようになる。
それを踏まえ、古代蝦夷の人名が掲載されている当館所蔵資料1-3を案内しつつ、参考までにアイヌ語の人名に関する資料を紹介した。
〔参考資料〕
(1) 『近世蝦夷人物誌』について
近世におけるアイヌの人名に関しては、松浦武四郎著『近世蝦夷人物誌』に多く掲載されている。以下の資料は現代語訳したもの。
資料4 松浦武四郎著 ; 更科源蔵訳『アイヌ人物誌』青土社, 2018年【281.1/2018.X】
(2) アイヌ語の人名に関する論文について
下記資料は、国立国会図書館デジタルコレクションで図書館送信参加館・個人送信限定で公開されている。
・佐藤知己著「アイヌ語の人名について」, アイヌ無形文化伝承保存会編『アイヌ文化(15)』, アイヌ無形文化伝承保存会, 1990年
(https://dl.ndl.go.jp/pid/4420409/1/19 最終アクセス日:2023/07/20)
※該当コマは19-24コマ
(3) 他館所蔵資料について
以下の資料は、アイヌの名と古代東北地方の蝦夷の人名を比較し、蝦夷の名の趣旨を調べたものになる。
・明石博志著『蝦夷の名の多くはアイヌ語系か』中西出版, 2015年
資料の内容については、出版社の公式ホームページを確認した。
(https://nakanishi-shuppan.co.jp/books/history/20220401-1031/ 最終アクセス日:2023/07/20)
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
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- 工藤/雅樹∥著. 古代蝦夷の英雄時代. 平凡社, 2005.10【210.3/2005.X】:
- 及川/洵∥著. アテルイ研究入門. アテルイ研究会, 2002.12【210.3/2002.Z】:
- [藤原/緒嗣∥ほか撰] 森田/悌∥[訳]. 日本後紀 上. 講談社, 2006.10【210.36/2006.X/Bコウカ】:
- 松浦/武四郎?著 更科/源蔵?訳. アイヌ人物誌. 青土社, 2018.10【281.1/2018.X】:
- キーワード
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- 人名 -- 歴史 -- 古代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000337605