レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/06/18
- 登録日時
- 2023/07/20 00:30
- 更新日時
- 2023/07/20 00:30
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-230025
- 質問
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解決
ムンクの「叫び」という絵画があります。この絵は人物が叫んでいる、或いは耳を塞いでいるように見えますが、いったい何に叫んでいるのでしょうか?
また、耳を塞いでいる場合、何を警戒しているのでしょうか。
- 回答
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資料1(p.10)に、『叫び』の構想の初期段階となる作品『絶望』が掲載されており、このデッサンに添えられた散文詩の記載がありました。
(pp.10-11)より引用します。
「私はふたりの友人と道を歩いていた。そのとき、太陽が沈んだ。突然、空が血のように赤くなった。私はくたびれはて、立ち止まり、手すりにもたれた。青黒いフィヨルドと街のうえには血と炎が垂れこめていた。私の友人は歩き続け、私は不安に身震いし、立ち続けた。大きな無限の叫び声が、自然を貫いて響くのを感じた。」
また、下記の解説がありました。
(p.11)「このムンク自身の言葉に従えば、前景に描かれた人物は、叫んでいるのではなく、叫びを聞いていることになろう。(中略)しかし、耳を塞ぎながらも口を大きく開けた男は、彼自身もまた叫んでいるように見えよう。血のような赤さが、自然を貫いて響く叫び声を視覚的に聞かせるが、それは彼の心の中でこそ響き渡っていたのだろう。自然の光景と男の心理とが共振しつつ,どこからともなく叫び声が響き、そしてまた彼も叫んでいる。」
(p.15)「(前略)最初の構想から実に二年以上の時間をかけてムンクは試行錯誤し、≪叫び≫を完成させている。(後略)」
資料2(p.36)には以下の記述があります。
「エーケベルグの丘には、ムンクの妹ラウラが入院する精神病院があった。見舞いに来ていたムンクは、その丘で真っ赤に染まった夕陽を見た時、内なる『叫び』を聞いたともされる。」
「幼い頃から家族の死を何度も体験し、自身も病弱だったムンクは、“生”への不安をいつも抱えていました。その不安が、真っ赤な夕陽に包まれた時、一気に恐怖へと変わっていったのでしょうか。」
「驚愕の表情を浮かべながら耳をふさいでいるのは、ムンク本人といわれています。」
なお、ムンクが聞いた自然の叫びについて、資料3(p.34)には次のような見解があります。
「ムンクはクリスチャニア市内のフィヨルドを見下ろす通りを歩いていた時の体験をこの絵の出発点にしており、いわゆる幻想絵画のように単に非現実の世界を描いたのではない。一方で、遺伝的な精神異常とアルコール依存症などによる不眠症、そのほかの心身の変調が原因となった幻聴を描いたとの見方もできよう。」
《調査資料》 ※【 】内は当館請求記号です。
資料1 田中正之 監修『ムンクの世界 : 魂を叫ぶひと』(コロナ・ブックス ; 214), 平凡社, 2018年【723.38/ムエ2018.9】
資料2 朝日新聞出版 著『ムンクへの招待』朝日新聞出版, 2018年【723.38/ムエ2018.X】
資料3 千足伸行 監修・著 ; 冨田章 著『もっと知りたいムンク : 生涯と作品』(アート・ビギナーズ・コレクション), 東京美術, 2018年【723.38/ムエ2018.X】
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 洋画 (723 9版)
- 参考資料
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- 田中/正之?監修. ムンクの世界. 平凡社, 2018.9【723.38/ムエ2018.9】:
- 朝日新聞出版?著. ムンクへの招待. 朝日新聞出版, 2018.10【723.38/ムエ2018.X】:
- 千足/伸行?監修・著 冨田/章?著. もっと知りたいムンク. 東京美術, 2018.10【723.38/ムエ2018.X】:
- キーワード
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- Munch, Edvard(ムンク, エドヴァルド)
- (ムンク, エドワルド)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000336113