レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/02/25
- 登録日時
- 2022/02/26 00:31
- 更新日時
- 2022/02/26 00:31
- 管理番号
- 6001052892
- 質問
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解決
江戸時代から明治時代の大阪で発行された印紙についての資料はあるか。
- 回答
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まず、以下の資料から、「印紙」と「切手」とは同種のものを指していると考えられます。
■森本幾子「近世大坂商家の婚礼:雑喉場魚問屋・神崎屋平九郎家を事例として」(『なにわ・大阪文化遺産学研究センター 2007』(関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究センター 2008.3)p.35-48
印紙について「婚礼時よりもむしろ法要時に多く、『鷺池家文書』(中略)をみると、到来物として、饅頭印紙・酒切手・麩印紙などが確認でき、品物よりも印紙や切手が多いのが特徴である」、「商品流通が発達した近世後期の大坂や京都など商品需要の多い近世都市ならではの贈答の形態であると考えられる。」とあります(p.38)。
■『藤井寺市史 第2巻 通史編 2 近世』(藤井寺市史編さん委員会/編集 藤井寺市 2002.1)
「IV 近世のふじいでらの出来ごと 第3章 村びとのくらし 第三節 病と死」(p.852-859)に「『葬式帳』の検討から」の項(p.854-858)があります。
ここに松田勝九郎宣与の葬儀についての「葬送之記」(小山村の松田家の葬式関係の文書)の項ごとに説明があり、次の記述がありました。
「『志到来』の項は、いわゆる香典の書き上げであろう、(中略)祝儀の多くは、金 銀 蝋燭などの金品であるが、そのほかに『虎屋印紙』『大丸麩印紙』などがあった。また、『忌中見舞』として、饅頭や餅などが贈られているが、ここでも『切手』が用いられてた。」(p.856)
「『己之七日志配り』の項には、三〇人の人びと(姓名つき)へ『虎屋饅頭』の印紙が配られ、(後略)」(p.856)
さらに「俗名『れん』(勝九郎の妻か。行年四七歳)」が亡くなった際の「葬送之記」についても記載があります。
ここに「『到来物』の項」についての記載があり、次の記述があります。
「その到来品は、金 銀 蝋燭などのほかに、『上野切手』『湯葉切手』『虎屋切手』『相良麩切手』『酒切手』『羊羹切手』などであった。ここでいう『切手』は、『印紙』」と同じであろう。」(p.857)
●小田忠「古今の商品切手」『地域と社会』<7>(大阪商業大学比較地域研究所2004.7)p.129-145
「IV 江戸・明治時代の商品券」中「2.川柳に現れた商品券」に「この当時商品切手と云う言い方の他に、印紙とか商品切手を略して切手とも云う。」とあります(p.139)。
本資料は「大阪商業大学学術情報リポジトリ」で閲覧可能(2022/2/24現在)。
http://id.nii.ac.jp/1297/00000399/
次に「切手」について以下の資料を確認したところ、「切手」は「商品切手」や「商品券」と同種のものであると考えられます。
■『国史大辞典 4 き-く』(国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1984.2)
「切手」の項(p.160-161)に次の記述があります。
「金銭の受取証あるいは商品に対する金銭預り書で、(中略)近世に入って、切手は手形とともに盛んに使用された。」とあり、「倉庫証券的な性格をもつ(中略)蔵預り切手」、「金銭預り書の性格をもつ切手」のほか「純然たる商品切手として酒切手・豆腐切手・生麩切手・すし切手・菓子切手などがみられた。」
この項に「参考となる関連項目」として「商品切手」が記載されています。
■『国史大辞典 7 しな-しん』(国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1986.11)
p.601「商品切手」の項に、次の記述があります。
「江戸時代に商家が自己の取り扱う商品を給付することを目的として発行した有価証券で、主として贈答用に使われた。大坂では高麗橋の菓子商虎屋が発行した饅頭五文切手が最初のものといわれる。ついて酒切手・すし切手・豆腐切手・生麩(なまふ)切手などが発行された。」
用紙や印刷についても記載があります。
■『明治大正大阪市史 第3巻 経済篇 中』(大阪市役所/編纂 清文堂出版 1966)
昭和8年刊の復刻です。『国史大辞典 7 しな-しん』「商品切手」の項で参考文献として挙げられていた資料です。
「第六章 商業 第四節 小売商業 第三款 小売商業の経営 二 販売方法」に「(ヘ)商品券」の項があります(p.554-556)。
大阪において初めて発行された虎屋の「饅頭五文切手」から明治・大正にかけての商品券の歴史がまとめられています。
明治時代の記述の中に「当時より商品切手なる名称が商品券とも称せらるゝに至つた。」とあります。
■『広辞苑 第5版』(新村出/編 岩波書店 1998.11)
p.1329「商品」の項に、「商品切手」について「商品券に同じ。」とあります。
最後に、商品券の歴史については、以下の資料に記載がありました。
●小田忠「古今の商品切手」『地域と社会』<7>(大阪商業大学比較地域研究所2004.7)p.129-145
既述の資料ですが、「IV 江戸・明治時代の商品券」で江戸・明治時代の商品券について述べられています。
「7.各種の商品券」には「虎屋伊織」の「饅頭切手」や、「魚吉」の「御肴切手」などの写真が載っています(p.145)。
■『大阪の商品券調査 〔大阪市産業叢書 13〕』([大阪市役所産業部調査課/編] 大阪市役所産業部調査課 1933)
「第二章 商品券の沿革 第一節 明治前の商品券」(p.2-5)
商品券の起源として仙台地方の「御厄介豆腐切手」について述べた後、「爾来冠婚葬祭等の贈答用に用ひられたのであるが、今左に時代別に其の推移を略記して見やう。」として、「寛政時代」、「享和 文化時代」、「天保時代」、「弘化時代」、「嘉永時代」、「安政 文久時代」、「元治 慶応時代」についてまとめられています。
たとえば、「寛政時代」には「大阪市に於て初めて商品券の発行を見たるは、(中略)寛政五年に高麗橋虎屋菓子店発行に係る饅頭五文切手である。」とあり、他にも「酒切手、生麩切手、豆腐切手等」が発行されたこと、「其の用紙は『問合紙(襖紙)』印刷は木版、刻印は墨を使用したものである。」といった記載があります。
また、口絵には「寛政時代の饅頭五文切手(虎屋菓子店)」ほか、様々な時代の切手の写真が掲載されています。
本資料は「国立国会図書館デジタルコレクション」で閲覧可能(2022/2/24現在)。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1173873
■『近世町人思想史研究:江戸・大阪・京都町人の場合』(布川清司/著 吉川弘文館 1983.11)
「第二章 大坂町人の日常生活と生活意識 第三節 近世中期の生活と思想の変化 5 贈答習俗の統計的変化」(p.172-179)があります。
「明和期から天明期の比較的短い期間内に贈答品がどういう変化があったかを、数量的にはっきりさせ、そこにみられる意識の変化をうかがうことにしよう」として、まず「(1)贈答品の内容上の変化」(p.172-176)の項があります。この項で、「暑中見舞」「中元」「寒中見舞」「歳暮」「病気見舞」「法事」の「六つの交際機会を統合していえること」として次の記載があります。
「8 天明期に入ると、酒・饅頭を贈る場合、現物の代わりに「酒切手」「饅頭切手」などを出していること。」(p.176)
また、酒・饅頭の切手について「酒と饅頭に切手が使われるようになったのは酒は重かったり、饅頭は数が多くて持ち運びに不便であったりしたためであろう。しかしそれだけ本来の贈物としての意義が失われることになったのはいうまでもない。」(p.176)とあります。
[事例作成日:2022年2月24日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 商業経営.商店 (673 10版)
- 参考資料
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- なにわ・大阪文化遺産学研究センター 2007 [関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究センター∥編] 関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究センター 2008.3 (38)
- 藤井寺市史 第2巻 藤井寺市史編さん委員会∥編集 藤井寺市 2002.1 (856-857)
- 国史大辞典 4 国史大辞典編集委員会∥編 吉川弘文館 1984.2 (160-161)
- 国史大辞典 7 国史大辞典編集委員会∥編 吉川弘文館 1986.11 (601)
- 明治大正大阪市史 第3巻 大阪市役所∥編纂 清文堂出版 1966 (554-556)
- 広辞苑 第5版 新村/出∥編 岩波書店 1998.11 (1329)
- 大阪の商品券調査 [大阪市役所産業部調査課∥編] 大阪市役所産業部調査課 1933 (3-5)
- 近世町人思想史研究 布川/清司∥著 吉川弘文館 1983.11 (176)
- http://id.nii.ac.jp/1297/00000399/ (小田忠「古今の商品切手」『地域と社会』<7>(大阪商業大学比較地域研究所2004.7)【大阪商業大学学術情報リポジトリ】)
- https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1173873 (『大阪の商品券調査 〔大阪市産業叢書 13〕』【国立国会図書館デジタルコレクション】)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌事項調査
- 内容種別
- 大阪
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000312630