レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年02月21日
- 登録日時
- 2014/03/10 13:37
- 更新日時
- 2014/03/10 13:40
- 管理番号
- いわき総合-地域206
- 質問
-
解決
7~8世紀頃の磐城郡の「丈部氏」についての関連資料・研究論文等にかかる、所蔵資料調査依頼。
- 回答
-
当館所蔵の当該資料について調査した結果、以下の資料により磐城郡の「丈部氏」に関する資料・論文等を確認し、回答した。
「丈部氏」の文献上における記載は、勅撰史書である六国史第2の『続日本紀』巻第29の神護景雲3年(769)3月13日に、陸奥国人に対する初めての一括賜姓において見ることができる。本県域では、10郡12名の賜姓者が確認され、大部分は郡の役所である郡家の郡司(大領・少領)とみることができる。そのなかで「丈部」は県内6郡において確認され、そのほとんどが「阿部臣」を与えられている。しかし、磐城郡の丈部山際だけは「磐城於保臣」が与えられている。
「丈部氏」については、『国史大辞典 第11巻』によれば、“杖部とも書き、中央に服属した地方豪族から中央に貢進される部民で、大王の勢力の直接強く及んだ地域多く、東国に多いのもそのためである。”とされる。また、“「丈部氏」は阿倍氏と同祖とするものが多いが、大春日氏・紀氏などと同祖とするものもある。”と記される。
「丈部氏」に関する県内の研究論文等については、以下に示す。
なお、平成24年(2013)12月19日宮城県教委は、同県山元町坂元の「熊の作遺跡」から人名とその人物の本籍地が記された8世紀初頭の木簡が出土したことを発表している。同教委によれば、大宝律令で701年(大宝元年)から16年間定められた「郡里制」により本籍地が表記されたもので、郡里制で戸籍を記した木簡の出土は東北で初となるものであり、最古級であるという。木簡には、墨書で「信夫郡安岐里人」と本籍地が書かれ、その下に「大伴部」、「丈部」を名乗る4人の連名が記されていたと報告されている。
- 回答プロセス
-
当館所蔵資料の調査
【資料①】『国史大辞典 第11巻』P557・558:「はせつかべ 丈部」の記述を認める。
【資料②】『国史大系 続日本紀』P362~327:「巻第29 神護景雲3年3月13日」に、陸奥国大国造道嶋宿祢嶋足の請願による。陸奥国人に対する初めての一括賜姓の記述に「丈部氏」を認める。
県内の「丈部氏」は6郡において確認できる。そのなかで、磐城郡の「丈部山際」のみが「磐城於保臣」を与えられ、その他の「丈部氏」は「阿部臣」を与えられている。
【資料③】『いわき市史 第1巻』P310:【資料②】の「続日本紀 巻第29 神護景雲3年3月13日」の磐城郡の丈部山際の「磐城於保臣」の賜姓を引用し、丈部は「於保臣」の出自である旨を記し、「大部」と読むのを正説としている。以降「大部:おほべ・おほのべ」と記し、読むことを断わっている。
【資料④】『荒田目条里遺跡』P341~396:「第7章 文字資料」に、同遺跡出土木簡・墨書土器に書かれた文字資料中に「丈部」がみられ、丈部氏はもともと磐城郡の有力氏族であるとし、【資料②】の『続日本紀』の神護景雲3年3月13日の陸奥国人に対する一括賜姓を引用している。
【資料⑤】『福島県立博物館紀要 第19号』P117~123:「磐城郡大領の氏姓に関する一考察」の論文中の、“磐城地方とその周辺の「大」氏について”のなかで、「大」氏と「丈」氏についての論究が認められる。
【資料⑥】『新しい会津古代史』P113~130:「Ⅲ.3 会津の豪族」の中に、「丈部氏」についての記述がみえる。このなかで、【資料②】の神護景雲3年の一括賜姓以降の本県における賜姓についての論考を認める。県内6郡の「丈部氏」について触れ、ほとんどが「阿倍臣」を与えられている中、磐城郡の丈部山際は「於保磐城臣」を与えられていることに関する論究が見られる。
【資料⑦】『河北新報』2013.12.20付:宮城県山元町坂元の熊の作遺跡で発見された8世紀初頭とされる木簡に、本籍地とともに「丈部氏」の名前が記されていたと報道される。
- 事前調査事項
-
「丈部氏」に関連する宮城・栃木・群馬・千葉の資料については調査済みである。いわき・会津地方での研究資料が少ないが、これらの地区においても関連があると考えている。
- NDC
-
- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
-
-
国史大辞典編集委員会 編. 国史大辞典 第11巻 (にたーひ). 吉川弘文館, 1990.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002077223-00 , ISBN 4642005110 (R/210.0/コ/11・1110008149) -
黒板 勝美/編 , 国史大系編修会/編. 国史大系 [4] 新訂増補. 吉川弘文館, 1976.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I008878023-00 , ISBN 4642000046 (210.0/コ・1110283791) -
いわき市史編さん委員会 編. いわき市史 第1巻 (原始・古代・中世). いわき市, 1986.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001849359-00 (AL/210.1/1/イ・1110736897) -
いわき市教育文化事業団 編. 荒田目条里遺跡 : 古代河川跡の調査. いわき市教育委員会, 2001. (いわき市埋蔵文化財調査報告 ; 第75冊)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003062208-00 (AL/210.2/1/イ/75・1111353528) -
福島県立博物館 編. 福島県立博物館紀要 第19号. 福島県立博物館, 2005.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I036129721-00 (K/069/フ・1111911440) - 『新しい会津古代史』2013 鈴木啓 (AL/210.3/2/ス・1114628314)
- 『河北新報』2013.12.20付
-
国史大辞典編集委員会 編. 国史大辞典 第11巻 (にたーひ). 吉川弘文館, 1990.
- キーワード
-
- 丈部氏
- 大部氏
- 磐城郡
- 会津郡
- 古代
- 賜姓
- 於保臣
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 所蔵調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000150457