レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年11月16日
- 登録日時
- 2023/01/05 10:02
- 更新日時
- 2023/07/11 10:40
- 管理番号
- ASN2022-07
- 質問
-
解決
「うちのおじいさん」など、「うち」を「我が家」の意味で使用することについて述べた学術論文もしくは書籍を探している。
- 回答
-
回答プロセスを参照してください。
- 回答プロセス
-
1. 基本事項の確認
1-1. レファレンス資料 <分類:3673(家族心理学)、801(言語社会学)>
【★1】『日本語源広辞典, 増補版』
巻頭ⅵ「主な参考文献」
p.105「うち【家】」
語源は「ウチ(内)」。内部のこと。外に対してのウチ、つまり家のことをウチと言う。
p.105「うち【内】」
語源は「ウツ(空)」「ウツロ(空)」と同源説が有力。他説あり。
収納すべきウツロをウチ(内部)と言ったよう。
【★2】『日本国語大辞典, 第2巻, 第2版』
p.272-275「うち【内】」
p.273 2段目 10-イ「自分の家、家庭、我が家」の意味。
【★3】『新潮日本語漢字辞典』
p.613「家」
①イの意味に「血縁関係などによって同居する一まとまりの人々。家族。うちとも読む。」とある。
その用例の一つに「家(うち)の主人」がある。
【★4】『角川古語辞典, 蔵書版』
p.155-156「うち【内】」
3番目の意味として「特定のものの内部」、その内の一つとして「家のなか」の意味あり。
4番目の意味として「私的な方面」、その内の一つとして「自宅」や「妻」、「夫」の意味あり。
p.160「うちの【内の】」
「内の人」や「内の者」の記載あり。
次の資料では該当する情報を確認できなかった。
『日本語源大辞典』(前田富祺監修 小学館 2005.4 812/MA26)p.177「うち【内】」
『語源海』(杉本つとむ著 東京書籍 2005/3 812/SU38-1)
1-2. 【★5】JapanKnowkedge
「うち【内】」(『デジタル大辞泉』)
意味の一つに「自分が所属しているものをいう」とある。
「717 家庭」(『角川類語新辞典』)
類語として、「【家】 うち」が挙げられている。意味は、自分の家庭。
「411 家」(『使い方の分かる 類語例解辞典』)
【家(いえ)/家(うち)/家屋(かおく)】
「使い分け」として、下記の記載あり。
【1】「家(いえ)」「家(うち)」は、ともに生活の場としての建物をいい、「家屋」は、構造も含め、建築物としてとらえる意識が強い。
【2】「家(いえ)」の方が「家(うち)」より改まった言い方。関連語には「315 家庭・家族」あり。
「315 家庭・家族」(『使い方の分かる 類語例解辞典』)
【家庭(かてい)/家(いえ)/うち/ホーム】
「使い分け」として、下記の記載あり。
【1】「うち」は、「家」または「内」とも書く。「うちがなんというか、帰宅したら聞いておきます」のように、配偶者をいうこともある。
【3】「家」「うち」には、人が住むために造った建物の意もある。また、「家」には、「家を継ぐ」のように、先祖から代々伝えてきた家名、家督などの意もある。
「うち-の-ひと 【内の人】」(『小学館 全文全訳古語辞典』)
意味の一つに(主に妻が第三者に対し、自分の夫を指して)「主人」がある。
「うち-の-もの 【内の者】」(『小学館 全文全訳古語辞典』)
意味の一つに「自分の妻」がある。
2. 図書から探す
2-1. 本学図書館の所蔵から探す
2-1-1. 以前回答したレファレンス質問(家族間の呼称について)で紹介した図書を確認
【★6】『鈴木孝夫言語文化学ノート』
p.204 「うちの~(oikonymy)」という言い方について触れている。
※oikonymyはギリシャ語oikos=家族からきた著者が新しく提案する言葉。(p.203)
次の資料では該当する情報を確認できなかった。
『ことばと文化』(鈴木孝夫著 岩波書店 1973.5 801/SU96)
『教養としての言語学』(鈴木孝夫著 岩波書店 1996.9 801/SU96-2 )
『鈴木孝夫の曼荼羅的世界 : 言語生態学への歴程』(鈴木孝夫著 冨山房インターナショナル 2015.7 804/SU96-1)
『知っているようで知らない日本語のルール』(佐々木瑞枝著 東京堂出版 2018.1 810/S75)
『ことばの社会心理学, 第4版』(岡本真一郎 ナカニシヤ出版 2010 80104/O42/イ)
『ことばと社会』(鈴木孝夫 中央公論社 1975 80103/SU96)
『日本語は「空気」が決める : 社会言語学入門』(石黒圭著 光文社 2013.5 80103/I73)
2-1-2.ブラウジング(実際に書架を見て探す) <分類:81*(日本語)>
【★7】『日韓の言語文化の理解』
p.185-264「第三章 呼称文化」
p.246-247「夫婦間接呼称の実態」として、配偶者を「うちのもの」と呼ぶ割合を掲載。
次の資料では該当する情報を確認できなかった。
『日本語の「配慮表現」に関する研究 : 中国語との比較研究における諸問題』(彭飛著 和泉書院 2005.10 8104/H81-3)
2-2. 出版されている図書から探す(本学図書館の所蔵問わず)
2-2-1. Google ブックス https://books.google.co.jp
<キーワード:うちの 言語学 家族、身内 "うちの" 呼び>
【★8】『風土 人間学的考察』
p.173「うちの者」等、「うち」は「距てなき間柄」、「家族」との記載あり。
【★9】『ウチとソトの言語文化学 文法を文化で切る』
p.10 日本語では「ウチ」は「わが家」という家族の空間を表す、と記載あり。「ウチ=わが家」と表現する言語は少数ではないかと語り、以降のページで「ウチ」「ソト」について、文化と言語のかかわり方について論じている。
【★10】『ことばの作法』
p.32「ウチの会社」「オタクの会社」という言い方が戦前からあり、それは身内意識の表現である、という記述がある。
次の資料は当館所蔵なし。
『鈴木孝夫の世界〈第1集〉―ことば・文化・自然』(鈴木孝夫研究会著 冨山房インターナショナル 2010.10)
Googleブックスのプレビューで一部閲覧できる。
p.36-37「うちの~」について記載あり。
その後の文章で紹介される下記の図書には、「うちの」に関して直接的な記載は見られなかった。
『ことばと文化』(鈴木孝夫著 岩波書店 1973.5 801/SU96)
2-3.【★10】の資料で得た情報(「ウチの会社」という表現が戦前からある)から検索
OPAC検索 https://cat.lib.aasa.ac.jp/drupal/ <キーワード:明治 言葉>
【★11】『町家の京言葉 : 明治三〇年代生まれ話者による : 付近世後期上方語の待遇表現, [正]』
p.131-152「第四部 第一章 京言葉における「親族語彙」」
p.139「2 家・家族親族語[社会集団としての家や家族を指し示す語]」に「ウチ」が挙がっている。
「うちの~」の記載なし。
【★12】『町家の京言葉 : 明治三〇年代生まれ話者による : 付近世後期上方語の待遇表現, 分類語彙篇』
1981年~1985年に行われた調査。採集された語彙の中に「うちの~」という表現がある。
巻末索引より「ウチノカナイ」(p.217)など。
3. 論文から探す
3-1. CiNii Research https://ci.nii.ac.jp/
<キーワード:家族 呼称、親族 他称、テクノニミー、オイコニミー など>
【★13】 小島衛 ”日本語親族名称の前提条件 : テクノニミーとオイコニミー”[PDF]
第Ⅱ章から第Ⅲ章にかけて、〈うちの〉は〈家族の〉とほぼ同じ意味として考えられる、と述べている。
【★14】 薛鳴 ”中国語におけるテクノニミーとその実態 ──日本語と比較しながら──”[PDF]
【★6】を引用し、〈うちの〉について触れている。(p.100)
【★15】 金世朗 ”家族間の呼称表現における通時的研究 ――子供中心的用法に着目して――”[PDF]
【★6】を引用し、〈うちの〉について触れている。(p.283)
【★16】 小森 由里 "他称詞としての指示詞―親族の事例より―" [PDF]
会話例に「うちのおば(あちゃん)」という呼び方が出てくる。(p.265)
本文中で「うちの~」に着目してはいない。
【★17】 小森 由里 "親族間で用いられる他称詞の運用 : 話題の人物を捉える視点と表現形式" [PDF]
会話例に「うちの嫁さん」「うちの父」という呼び方が出てくる。(p.115、p.120)
本文中で「うちの~」に着目してはいない。
3-2. J-STAGE https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
<キーワード:イエ 親族 など>
【★18】 上杉富之 ”「イエ中心」から「自己中心」へ : 新潟県横根方言の親族語彙の特徴とその通時変化”[PDF]
「Ⅰ.序列型親族語をめぐる問題」の最初のほうに、 ジョン・F・エンブリー(John F. Embree)氏が、
「親族語の前に「ウチノ」という修飾語を付けることと言及の規準が子どもであることに注目した」との記載あり。
下記図書に、該当の日本語訳の論文が載っている。
【★19】谷川健一編『日本民族文化資料集成 第二巻』
「日本の村 須恵村」(ジョン・F・エンブリー 植村元覚訳)
p.249 調査した部落で、家の人や物に対して「うちの~」という形容詞をつけて呼んでいることについて触れた記載がある。
3-3.Google Scholar https://scholar.google.co.jp/
<キーワード:"家族" "他称" "うちの"、"家族" "うちの" 呼称>
【★20】 宋 善花 "日本語, 朝鮮語, 中国語の親族内の人称詞に関する対照研究" [PDF]
朝鮮語が「うちの~」を二種類の単語で表し「ウチ・ソト」の区別をするのに対して、日本語や中国語では語彙そのもので区別ができないことについて述べている。(p.119-120)
【★21】 秦 明日香[他] "大江宏の記述の 「うち」 に関する言説について" [PDF]
呼称としての「うち」について触れている。
など
4. 国立国語研究所 https://www.ninjal.ac.jp
日本の「ことば」に関する総合研究機関。
4-1. 「語彙研究文献語別目録」データ
かな見出しに「うち」あり。6つの文献が挙げられている。
そのうち次の2つを確認したが、回答につながる情報を確認できなかった。
『日本の方言地図』(徳川宗賢編 中央公論社 1979.11 818/TO36)
『身心語彙の史的研究』(宮地敦子著 明治書院 1979.11 814/MI75)
トップ>データベース・コーパス・資料>データ・資料を探す
>「語彙研究文献語別目録」データ>「語彙研究文献語別目録(エクセル形式)」をダウンロード
4-2. 日本語研究・日本語教育文献データベース
「本文表示」ボタンがある文献は本文掲載ページへリンクされている。
<キーワード:ウチ ソト>
【★22】 大崎正瑠 "日本・韓国・中国における「ウチ」と「ソト」" [PDF]
「ウチ」の意味について記述あり。「うちの~」については記述なし。
など
トップ>データベース・コーパス・資料>研究図書室
>データベース等「日本語研究・日本語教育文献データベース」
以上
<Web最終確認日:2023/03/17>
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本語 (810 10版)
- 言語学 (801 10版)
- 参考資料
-
-
【★1】増井金典 著 , 増井, 金典, 1928-. 日本語源広辞典 増補版. ミネルヴァ書房, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023825939-00 , ISBN 9784623063246 (当館請求記号:812/MA67-1) -
【★2】日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第2巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002966612-00 , ISBN 4095210028 (当館請求記号:8131/N77/イ2) -
【★3】新潮社 編 , 新潮社. 新潮日本語漢字辞典. 新潮社, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009117834-00 , ISBN 9784107302151 (当館請求記号:8132/SH61) -
【★4】久松潜一, 佐藤謙三編 , 久松, 潜一 , 佐藤, 謙三. 角川古語辞典 蔵書版. 角川書店, 1976.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I001633608-00 (当館請求記号:8136/KO26) - 【★5】JapanKnowledge(ジャパンナレッジ)[契約DB] (百科事典・辞書・ニュース・学術サイトURL集などを検索可能)
-
【★6】鈴木孝夫 著 , 鈴木, 孝夫, 1926-2021. 鈴木孝夫言語文化学ノート. 大修館書店, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002688460-00 , ISBN 4469212199 (当館請求記号:804/SU96-2) -
【★7】洪[ミン]杓 著 , 洪, 珉杓. 日韓の言語文化の理解. 風間書房, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009094584-00 , ISBN 9784759916409 (当館請求記号:80103/H84) -
【★8】和辻哲郎 著 , 和辻, 哲郎, 1889-1960. 風土 : 人間学的考察. 岩波書店, 1979. (岩波文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001413556-00 (当館請求記号:イワナミブン/アオ/144-2) -
【★9】牧野成一 著 , 牧野, 成一, 1935-. ウチとソトの言語文化学 : 文法を文化で切る. アルク, 1996. (NAFL選書 ; 12)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002597996-00 , ISBN 4872346335 (当館請求記号:815/MA35-1) -
【★10】多田, 道太郎, 1924-2007. 多田道太郎著作集 6 (ことばの作法). 筑摩書房, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002372761-00 , ISBN 4480750460 (当館請求記号:081/TA16/6) -
【★11】寺島浩子 著 , 寺島, 浩子. 町家の京言葉 : 明治三〇年代生まれ話者による. 武蔵野書院, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008370199-00 , ISBN 4838602219 (当館請求記号:81862/TE63/1) -
【★12】寺島浩子 著 , 寺島, 浩子. 町家の京言葉分類語彙編 : 明治三〇年代生まれ話者による. 武蔵野書院, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010869865-00 , ISBN 9784838602438 (当館請求記号:81862/TE63/2) -
【★13】小島, 衛 , 小島, 衛. 日本語親族名称の前提条件 : テクノニミーとオイコニミー. 成城大学大学院文学研究科ヨーロッパ文化専攻, 2019-03-31. エウローペー 26 p. [3]-16
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I007425364-00 (PDF) -
【★14】薛, 鳴 , 薛, 鳴. 中国語におけるテクノニミーとその実態 ─日本語と比較しながら─. 愛知大学語学教育研究室, 2022-01. 言語と文化:愛知大学語学教育研究室紀要 = LANGUAGE AND CULTURE : Bulletin of Institute for Language Education 45 p. 99-125
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I008324930-00 (PDF) -
【★15】金, 世朗 , 金, 世朗. 家族間の呼称表現における通時的研究 : 子供中心的用法に着目して. 新潟大学大学院現代社会文化研究科, 2002-07. 現代社会文化研究 24 p. 269-286
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I006908154-00 (PDF) -
【★16】小森 由里. 他称詞としての指示詞―親族の事例より―. 2020. 社会言語科学 23(1) p. 258-273
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I007125149-00 (PDF) -
【★17】小森 由里. 親族間で用いられる他称詞の運用 : 話題の人物を捉える視点と表現形式. 2013. 社会言語科学 16(1) p. 109-126
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I005615621-00 (PDF) -
【★18】上杉 富之. 「イエ中心」から「自己中心」へ : 新潟県横根方言の親族語彙の特徴とその通時変化. 1991. 民族學研究 56(1) p. 67-91
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I006291274-00 (PDF) -
【★19】谷川健一 責任編集 , 谷川, 健一, 1921-2013. 日本民俗文化資料集成 第2巻 (山の民俗誌). 三一書房, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002106218-00 , ISBN 4380915271 (当館請求記号:3808/TA87-2/2) -
【★20】宋, 善花 , 宋, 善花. 日本語,朝鮮語,中国語の親族内の人称詞に関する対照研究. 東北大学高等教育開発推進センター, 2007-03. 東北大学高等教育開発推進センター紀要 2 p. 113-
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I004894867-00 (PDF) -
【★21】秦 明日香 , 河内 浩志 , 上野 友輝 , 冨久 亜以. 大江宏の記述の「うち」に関する言説について. 2020. 日本建築学会計画系論文集 85(775) p. 2045-2052
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I007121032-00 (PDF) -
【★22】大崎, 正瑠 , 大崎, 正瑠. 日本・韓国・中国における「ウチ」と「ソト」. 東京経済大学人文自然科学研究会, 2008-03-05. 人文自然科学論集 = The Journal of Humanities and Natural Sciences 125 p. 105-127
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I005528852-00 (PDF)
-
【★1】増井金典 著 , 増井, 金典, 1928-. 日本語源広辞典 増補版. ミネルヴァ書房, 2012.
- キーワード
-
- うち
- うちの
- oikonymy
- オイコニミー
- 呼称
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000326793