(1)ヘッドライトを浴びただけで気絶した事例について
下記資料1~6を調査したが、ヘッドライトを浴びただけで気絶した事例は見つからなかった。
インターネット上の情報ではあるが、以下2件の記事を紹介。
○亀田メディカルセンター|亀田総合病院 脊椎脊髄外科 医療関係者向け
「タヌキの交通事故1」(投稿日2017年8月7日)(2023年11月11日最終確認)
https://www.kameda.com/pr/teamspine/post_38.html"タヌキが、交通事故に遭う原因としては、彼らが夜行性であること、自動車のヘッドライトに目が眩み、道路の途中で立ち止まってしまうことにあるらしい。(中略)残念ながら、ネコの大脳には自動車の速度が、タヌキの大脳にはヘッドライトの明るさが、それぞれインプットされていないために計算違いや、困惑の状態になってしまうことが不幸な交通事故死の原因となる。"
なお、この記事については、"このコンテンツは、当科顧問橘滋國先生の著書である「体の反射のふしぎ学ー足がもつれないのはなぜ?」(講談社 ブルーバックス 1994年)を元に改変・編集したものです。"との記述あり。当該資料は当館未所蔵。
○ペット総合情報ブログ ペットハイム
「タヌキが弱い生き物と言われているのはなぜ?狸寝入りの語源とは?」(公開日2020年10月1日)(2023年11月11日最終確認)
https://petheim.net/tanuki/"タヌキは夜行性の動物です。夜に歩き回っているため、車のヘッドライトにびっくりして、身動きが取れないまま固まってしまうことが多いです。
タヌキはとても臆病な性格で、夜行性のために僅かな光でも良く見えるように目が発達しています。
そのため、車のヘッドライトほどの明かりに照らされればびっくりしてしまうんです。
私たちもいきなり強烈な明かりを見ると、眩しすぎて何も見えませんよね。それと同じことなんです。
車の走行音と強烈なライトによって何もできずにその場で固まってしまい、結果として轢かれてしまうんですね。"
(2)その他タヌキの気絶事例と、狸寝入り(擬死)や、タヌキの交通事故(ロードキル)について
ヘッドライト以外の気絶事例については、いくつかの資料に記述あり。
タヌキの気絶事例は「狸寝入り(擬死)」として取り上げられているものが多いため、まとめて紹介。
○資料1 『野生動物のロードキル』(p92)
"ロードキルに遭いやすい野生哺乳類がいる。(中略)上記の種に共通なことは、危険が迫ると移動を中止してやり過ごそうとすることで、(中略)捕食者に対しては有効な戦術でも、今まで自然界に無かった「車輪」の動きと軌道、そして車両の尋常ではないスピードには対応できない。"
○資料2 『What is Tanuki?』(p19)
“タヌキにはもう一つの「眠り」がある。狸寝入りといわれるものだ。私は捕獲時にも見たことはないが、擬死と呼ばれるのが納得できるほど動かなくなるらしい。しかし、ほんとうの「振り」なのか、警戒性徐脈なのか、情動脱力発作(カタプレキシー)なのか、その他の神経回路反応なのか、今のところその生態メカニズムはわかっていない。”
また、タヌキの性格については、“緩くも強かな性格”(p23)と書かれている。
ロードキルについてはp93からまとめられているが、その中で“タヌキはこのなかで一番危険な「立ち止まり型」にあたる。”(p95)と書かれている。
○資料3 『狐狸学入門』(p104)
“猟師は、タヌキを見たら「当たっても当たらなくても撃て」という。当たらなくても鉄砲の音だけでひっくりかえってしまうからで、タヌキはびっくりすると、すぐに仮死状態に陥るという。”
“猟師が、鳥居峠で三〇〇メートルほども離れたところを走っている獲物を見つけた。当たるはずはないと思いながらも、追いすがる猟犬を戻すために獲物めがけて一発お見舞いした。だが、驚いたことに獲物がコロッと倒れたのだ。(中略)獲物はタヌキだった。不思議なことに弾傷一つなかった。(中略)ところが目を離した隙にタヌキは起き上がりスタコラ逃げ出した”
なお、高速道路での事故についてはp268から記述あり。
○資料4 『狩りの語部 続々』(p15)
“狢狩では、銃を使ってとることはほとんどない。犬に咥えさせたり、猟師が棍棒で叩いたりして獲るケースが多い。しかし棍棒で叩いても、一撃で殺してしまうほどの強力なパンチを見舞うことは殆どないのに、それでも一発食らうと、たちまちぐったりとしてしまう。”
“女の子が、山道を勢いよく駆け下って来て、見とおしのきかない曲り角をぐいっと曲ったとたん、山道を上ってきた狢とばったり、はち合せをした。少女も驚いたが、狢の方がいっそうびっくりした。狢は少女と出会った瞬間、その場にころんとひっくりかえって、即座に死んだ真似をしてみせたが、しばらくすると今度は起き上って、山のヒラ(斜面)を一目散にかけ上って行った。”
○資料5 『狸の話』(p21)
“棒で打ったところ、タヌ公は鼻血を出して倒れてしまった。(中略)ふと後ろを振り返ると、死んだはずの狸が逃げようとしている。「こらっー」と、思わず声をあげた。するとタヌキは倒れて、そばへ行ってみると、息もしていない。安心して五メートルも離れると、また逃げだす。”
○資料6 『狸と日本人』(p37-38、41-43)
狸寝入りについては、これまでの事例と似たものが紹介されている。
タヌキの性格については、“タヌキは小心で臆病で用心深い性質”(p37)と書かれている。