★蔵書で確認する
①『水環境設備ハンドブック 「水」をめぐる都市・建築・施設・設備のすべてがわかる本』(禁帯出)
紀谷 文樹/監修 竹村 公太郎/共編 オーム社 2011.11 分類:517.036 ISBN:4-274-21089-1
p.412-「生態系保全のための植生」
ヨシやガマ等の水辺に生息する植物が「水辺エコトーン」(異なった環境である水中と陸を緩やかにつなぐ場所)を形成していることや、水辺エコトーンについて「生物の生息空間としてだけでなく、景観形成、植物の根や葉茎による水際部の保護、水質の浄化、微気象の緩和など、多くの機能を総合的に発揮する特長がある」とある。(p.412)
「図1 水辺エコトーンの植生と生物の生息空間の概要」(p.412)では生物の具体的な種名をあげ、「抽水植物」(記載はないがヨシ・ガマ等)がどのような役割をしているかが図式されている。例えばフナ類・メダカ・モツゴ等には産卵、幼体/成体の生活・採餌の場であり、ツバメ・オオヨシキリ・チュウヒ等の鳥にはねぐらであることが分かる。
p.413コラム「植物による水質浄化」
p.416-「水環境と水生生物」
p.428-「水辺の行動の評価」
②『河川生態環境評価法 潜在自然概念を軸として』
玉井 信行/編 奥田 重俊/編 東京大学出版会 2000.3 分類:517 ISBN:4-13-061117-8
具体的な地域に関してではないが、ヨシの水質浄化などに関する記述あり。
p.124~3-5-2水生植物による水質浄化能力(3章河川生態調査 3-5水理・水質と植生)
B植生浄化(p.125~) 「植生浄化には4つの浄化作用がある」とし以下4項目あり。
⑴濁りの沈殿除去
⑵窒素やリンの吸収除去
⑶有機物の分解、
⑷硝化および脱窒
⑷ではヨシについて言及あり。
「ヨシなどの抽水植物は、茎を通じて根の方に酸素を輸送する能力があり、その酸素を使って根のごく表面でアンモニアを酸化して硝酸にすることができる」
D水生植物による水質浄化
「表3.5.2 水生植物中の窒素およびリン含有量」(p.130)で、ヨシやヒメガマ他の窒素含有率とリン含有率がわかる。ホテイアオイ、オランダガラシと比べてヨシの吸収速度はそれほど大きくない、とあるが、吸収する事実は確認。
「表3.5.3 水生植物による窒素およびリンの吸収速度」(p.131)にヨシの吸収率の掲載あり。
「…水星植物の役割は、このような水質浄化機能ばかりでなく、魚類や貝類、エビ類など水生生物にとって重要な生息場所を提供していることにあると考えられる。今後は、こうした生態学的な効果を評価する調査研究も必要である。」(p.134)
③『保全生態学入門 : 遺伝子から景観まで』
鷲谷 いづみ/著 矢原 徹一/著 文一総合出版 1996.3 468 ISBN:4-8299-3039-X
p.31~[生物多様性への配慮を欠く利用計画]
アザサについての記述であるが、「ヨシ原を背後にひかえた砂浜の水辺に生育し、(中略)ヨシ原の安定性を高め、ヨシ原を生育場所とする多くの動植物の生活を可能とする」とあり、ヨシも生物多様性に大きな役割を担っていると解釈できると思われる。
④『よみがえれアサザ咲く水辺 霞ケ浦からの挑戦』
鷲谷 いづみ/編 飯島 博/編 文一総合出版 1999.6 分類:519.8131 ISBN:4-8299-2136-6
p.74~ 健全さを失った湖と分断・孤立化されたヨシ原
湖の生態系が不健全な状態におかれていることを示す兆候として、在来魚の衰退、アオコの発生、湖面の悪臭等が挙げられている。続いて「…ヨシ原などが分断されたことは、一方で、植生帯に固有な植物の存続を危うくしている」(p.75)とある。
p.76~ ヨシ原に忍び寄る稔りなき秋
ヨシ原と強い結びつきのあるシロバナサクラタデについて、「分断化された面積の狭いヨシ原では、シロバナサクラタデの個体数が少なく、適当な配偶の相手が近くに存在しないために花が咲いても種子を結ぶことが難しくなっている事実が明らかにされた」(p.76) 「ヨシは生えていてもヨシ以外のヨシ原らしい植物が生育していなかったり、シロバナサクラタデの例のように健全な繁殖が保障されていないなど、生物多様性の視点からは問題が少なくない」(p.77)
⑤『水辺の環境学 4 新しい段階へ』
桜井 善雄/著 新日本出版社 2002.9 分類:519.81 ISBN:4-406-02938-9
p.123~ ヨシ群落の枯死
p.128~ ヨシ群落の回復
具体例には行き当たらなかった。
⑥『保全と復元の生物学 野生生物を救う科学的思考 種生物学研究』
種生物学会/編 文一総合出版 2002.12 分類:472.1 ISBN:4-8299-2170-6
p.191~水生植物の保全を考える
2.水草が減少する要因(p.192)
蒲や葦に関する具体例には行き当たらなかった。
⑦『よみがえる川 日本と世界の河川再生事例集』
日本河川・流域再生ネットワーク/編集 リバーフロント整備センター 2011.3 分類:517.2
河川改修などによる報告で且つ水生植物の種類の記載はないが、魚類の生息が増加した例あり。p.26-27 和泉川 神奈川県
▼該当する内容に行き当たらなかった資料▼
・『河川の水質と生態系 新しい河川環境創出に向けて』
大垣 眞一郎/監修 河川環境管理財団/編 技報堂出版 2007.5 分類:519.4 ISBN:4-7655-3418-5
p.53 1章 1-4-2水生植物(1章 河川における生態系と水質の相互関係 1-4生物モニタリングの意義とその方法)
p.181- 9章 水生植物相の変遷と水質:兵庫県加古川の事例
・『日本の水環境 7 九州・沖縄編』 日本水環境学会/編 技報堂出版 2000.10 分類:519.4 ISBN:4-7655-3166-X
・『日本水草図鑑』 角野 康郎/著 文一総合出版 1994.7 分類:471.74 ISBN:4-8299-3034-9
・『日本植生便覧』 宮脇 昭/責任編集 奥田 重俊/編集 至文堂 1994.10 分類:472.1 ISBN:4-7843-0147-X
・『日本水生植物図鑑』 大滝 末男/共著 石戸 忠/共著 北隆館 1980 471.74
他
★公開されている論文を調査
⑧論文「クリークの水質保全と水生植物の浄化機能」(九州大学学術情報リポジトリ)(出版情報:九州大学大学院農学研究院学芸雑誌. 56 (2), pp.197-208, 2002-02. 九州大学大学院農学研究院)
https://api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_detail_md/?reqCode=frombib&lang=0&amode=MD100000&opkey=B151633734127488&bibid=21110&start= 佐賀県東与賀町での現地調査でヨシ(アシ)について取り上げられている。
摘要「(前略)ヨシはEC値の低下が最も顕著であった。これは塩類の吸収能力が高いためと思われる。またヨシは他に比べて耐寒性が大きく、初冬まで枯れることなく浄化機能の連続性が期待される。(後略)」
⑨論文「オギ・ヨシ等の植生の河岸保護機能の評価」
J-STAGEトップ/土木学会論文集/1994 巻 (1994) 503 号/書誌
https://doi.org/10.2208/jscej.1994.503_59 多摩川の河口から6キロメートル付近での現地調査。ヨシ原の河岸保護効果について。
「ヨシ原は河岸浸食軽減、水面の静穏化をもたらし、治水面からも大いに利用に値するもので、ヨシ原の環境的機能と併せて安全でうるおいのある水辺を構成する重要な要素である」(p.68)
⑩論文「水辺の自然環境 -特に植生のはたらきとその保全について」
J-STAGEトップ/人と自然/3 巻 (1994)/書誌
https://doi.org/10.24713/hitotoshizen.3.0_1 ヨシ等の「抽水植物群落が生える湖の沿岸帯は、魚類、エビ類、両生類、トンボなどが産卵し、その子供が育つ場所として、特に大切な役割を果たしている。ヨシは(中略)その群落の生態的なはたらき、護岸作用、資源供給などの面から見て、特に重要である。」(p.4)
琵琶湖、淀川水系、千曲川の調査について記述あり。野鳥が水辺の植物群落を利用して生活するには一定以上の面積が必要であることをヨシ原を例に述べられている。質・量の側面で劣化すると生息する鳥類は急激に減少することが諏訪湖の例で述べられている。汚濁防止対策の一環で埋め立て等が行われた結果、ヨシ等の群落が消失し、水鳥の種類が半分以上減少したとある。(p.8)
(p.8「図3.諏訪湖における沿岸帯の浚渫と埋め立てによる鳥類相の変化」)
以上