①『戦前婦人労働論文資料集成 第3巻』に収録されている「職業婦人と婦人職業紹介事業」(田中法善、昭和11年、『職業紹介』第4巻第12号)において「職業婦人に関する法規に就て」と題した節がある。ここでは、職業婦人の労働問題について「人道上の、或は国民保健上の重要問題として取上げられ、種々の形式に於て立法化されるに至った」として、「それらを最も多く包含する工場法」の中で婦人を対象とする部分を抜粋して掲載している。ただし、工場法第一条に明示される適用対象は限られており除外例がある上、「法の適用範囲はいうまでもなく工業労働者のみであって、他には及ばない」という。よって「法的保護下に置かれている職業婦人は、全婦人有業者の中約八%に過ぎず(割注略)他は概ね雇傭主の任意の保護に俟つ外はない状態にある」としている。
②『大正期の職業婦人』では、職業婦人について「法的保護が皆無」と説明され、「工場労働者の場合にはいわゆる工場法の適用があってわずかながらも保護と監督が行われるが、いわゆる職業婦人にはなんの救済の道もない。したがって労働時間も待遇も雇傭者の意志に任され、いつ退職させられるか分らぬ状態に置かれてこれに対抗する手段もない」としている。
③『婦人労働法論』では、「第一章 日本における母性保護と平等」の「Ⅰ戦前における母性保護と平等」において、工場法や鉱夫労役扶助規則における女性労働者の保護に関する規定や、改正を求める労働運動、戦時中の工場法などについて記載されている。
④『女性労働の日本史』では、第二部の「女性労働者の産前産後休業と給付保障の形成」において、1910~1920年代の、主に工場で働く女性労働者に関して、工場法における産後休業の規定や、母性保護論争などについて述べられている。
⑤『日本労働法史論』では「第一章 大正デモクラシーと労働法の展開」の「第二節 日本における労働法の展開」において「大正デモクラシーの下で、改正・制定された労働者保護立法等を列挙」しており、職業紹介法をはじめとして大正10年から昭和6年にかけての労働法規が時系列で挙げられている。また、全編において工場法を中心とする戦前の労働法規について述べられており、工場法の成立から改正、工場法関連法規や工業労働者最低年齢法などに関する記述がある。
⑥『戦後労働立法史』の「第Ⅰ部 戦後労働立法史の歴史的前提―戦前の労働立法史」において「第2章 戦前の労働市場立法」「第3章 戦前の雇用関係立法」「第4章 戦前の労使関係立法」などがあり、工場法をはじめ戦前の労働法規が挙げられている。
⑦『工場法小史』では、工場法施行以前の状況から制定・施行、そして労働基準法へ受け継がれるまでの流れが説明されている。また、「第Ⅳ章 工場法の展開」の「(9)商業労働者の保護へ―昭和13(1938)年商店法・14年職員健康法」では、「職工(工業労働者)の労働条件を定めた工場法」において対象外となる「商店員(商業労働者)」を保護するものとして制定された「商店法」についても解説されている。
⑧『日本的労働制度の歴史と戦略』では、「第3章 工場法の制定と労務管理」において、工場法制定以前の労働法制から、工場法制定前後の状況と、工場法の詳細について記述されている。