レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20240118
- 登録日時
- 2024/01/18 11:56
- 更新日時
- 2024/03/07 18:01
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 京都市中央2023-003
- 質問
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解決
京都市中京区の「姉大宮町東側」(あねおおみやちょうひがしがわ)の地名の由来や歴史について知りたい。
- 回答
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1.地名の由来について
姉大宮町東側は、南北を通る大宮通を姉大宮町西側とはさむ両側町です。北側は姉小路通、南側は三条通までで、町名はこれら隣接する通り名に由来しています。江戸時代の『寛永十四年洛中絵図』に「姉小路大宮町(丁)」との記載があり、宝暦十二年(1762)刊行の『京町鑑』には、“姉小路大宮町 東側西側二町に分る”と記述が見られることから、江戸期から続く町名であることがわかります。【資料1・2・3・5・6】
2.歴史について
・中世の百科事典である『拾芥抄(しゅうがいしょう)』によると、平安時代、醍醐天皇の御子である兼明(かねあきら)親王(源兼明)の邸宅「御子左第(みこひだりてい)」が、姉小路北・大宮大路東(現在の、中京区姉大宮町東側)にあったことがわかります。当時は方四十丈(約121メートル四方)の広大な邸宅であり、平安京の大宮大路を挟んだ西隣には桓武天皇が創建した神泉苑が広がっていました。また東側には上級貴族が住む大邸宅が立ち並んでいたようです。【資料4・7・8・9・16】
・『本朝続文粋』、『栄華物語』には、御子左第の庭は名園として知られていたことが記述されています。【資料4・11・12・17・18】
・兼明の没後には藤原長家が御子左第を伝領し、長家の子孫の忠家、俊忠、俊成、定家らは「御子左家」と呼ばれましたが、代々和歌を家芸とした御子左家はこの住所ではなく、邸宅としての御子左第は女系を通して太政大臣藤原信長に伝えられ、「大宮第」「三条大宮第」と呼ばれるようになったことが記述されています。【資料4・8・10・11】
・平安期の地図資料で「御子左第」「兼明親王」の文字を確認することができます。【資料13~15】
- 回答プロセス
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●京都に関する事典で“姉大宮町東側”を調べる…【資料9】記載なし。
●地名辞典で“姉大宮町東側”を調べる…【資料1~3】町名の由来について記述あり。
●『京町鑑』で“姉小路通”を調べる…【資料5】
【資料5】“姉小路大宮町 東側西側二町に分る”と記述あり。
●『京都坊目誌』「上京之部」で“姉大宮町東側”を調べる…【資料6】
【資料6】“慶長以来 塚本町と呼ぶ”と記述あり。
●Googlebooks(http://books.google.co.jp/)で“姉大宮町東側”をキーワードに検索する…【資料4】がヒット。
【資料4】 御子左第は“姉小路北・大宮大路東(現在は、中京区姉大宮町東側のあたり)に所在した”とあり。
●再度、地名辞典【資料2・9】で見出し語“御子左”を調べる
【資料9】“家名は、長家が醍醐天皇の御子、左大臣兼明の三条大宮第(御子左第)を伝領したことに由来する”とあり。
● “兼明”、“御子左”をキーワードに当館郷土資料を調べる…【資料7・8・10・11・12】
【資料7】兼明が閑雅な生活を求めて池亭を構えた歴史的背景が記述されている。「平安京と池亭の場所」(図19)、「兼明親王の池亭」(図20)の掲載あり。
【資料8】のちに、大宮第、三条大宮第と呼ばれるようになった所以についての記述あり。
【資料11】左京「三条二坊三町」は南側の四町とともに、左大臣源兼明の「御子左第」の所在地であったことが記されている。
【資料11・12】より、『拾芥抄』中巻(【資料16】)、『栄花物語』第34巻(【資料17】)、『本朝読文粋』第9巻(【資料18】)に記述があることがわかる。
●平安期の地図で“姉大宮町東側”あたりを確認する…【資料13~15】
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (291 9版)
- 近畿地方 (216 9版)
- 参考資料
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【資料1】『京都の地名由来辞典』(源城 政好/編 下坂 守/編 東京 東京堂出版 2005)p4‟姉大宮町東側”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008043032 , ISBN 4-490-10683-1 -
【資料2】『日本歴史地名大系27 京都市の地名』(平凡社 2001)p810~811‟御子左邸跡”、p812‟姉大宮町西側・同東側”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I2611B10560202 , ISBN 4-582-91012-2 -
【資料3】『角川日本地名大辞典26-[1] 京都府』(角川日本地名大辞典編纂委員会/編 角川学芸出版 2009)p78‟姉大宮町東側”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23211000910090933 , ISBN 978-4-04-622936-6 -
【資料4】『角田文衛著作集 第4巻 王朝文化の諸相』(角田 文衛/著 法蔵館 1984)p165
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111100014724 -
【資料5】『新修京都叢書 第3巻』(野間 光辰/編 臨川書店 1976)「京町鑑」p229‟大宮通”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I30111100071986 - 【資料6】『新修京都叢書 第19巻 京都坊目誌』(野間 光辰/編 臨川書店 1968)「上京之部坤」p151‟姉大宮町東側” , ISBN 4653026157
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【資料7】『清閑の暮らし 隠者たちはどんな庵に住んでいたのか』(大岡 敏昭/著 草思社 2013)p100-135‟兼明親王”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I024983640 , ISBN 978-4-7942-2011-0 -
【資料8】『角田文衞の古代学 2 王朝の余薫』(角田 文衞/著 古代学協会/編 古代学協会 2020)p304-306‟御子左家”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I031187490 , ISBN 978-4-642-07897-9 -
【資料9】『京都大事典』(佐和 隆研/[ほか]編集 淡交社 1984)p871‟御子左家”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001713924 , ISBN 4-473-00885-1 - 【資料10】『京都の歴史 1 平安の新京』(京都市/[編] 京都市史編さん所 1979)p458-459
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【資料11】『平安京提要』(角田 文衞/総監修 古代学協会 古代学研究所/編 角川学芸出版 2011)p228‟三条二坊三町”
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130282271747899264 , ISBN 9784046228024 -
【資料12】『史料京都の歴史 9 中京区』(京都市/編 平凡社 1985)「教業学区」p261-262
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111100087088 , ISBN 4-582-47709-7 -
【資料13】『京都時代MAP 平安京編』(新創社/編 光村推古書院 2008)p10-12,46-48,74-76
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009343068 , ISBN 978-4-8381-0392-8 -
【資料14】国際日本文化研究センター所蔵地図データベースhttps://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/
・花洛往古圖 : 京の水内容年代 -
【資料15】国際日本文化研究センター所蔵地図データベースhttps://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/
・[京繪圖]:[平安京往古絵図] -
【資料16】『故実叢書 22巻 禁秘抄考註・拾芥抄』 (故実叢書編集部/編 改訂増補 明治図書出版 1993) 拾芥抄 中 p402
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I37111104056745 -
【資料17】『国史大系 第20巻 栄花物語』 (黒板 勝美/編輯 新訂増補 吉川弘文館 2000) 巻第34 p672
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003028696 , ISBN 4-642-00321-5 -
【資料18】『国史大系 第29巻 下 本朝続文粋』 (黒板 勝美/編輯 新訂増補 吉川弘文館 1999) 巻第9 p145
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003656526 , ISBN 4-642-00332-0
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【資料1】『京都の地名由来辞典』(源城 政好/編 下坂 守/編 東京 東京堂出版 2005)p4‟姉大宮町東側”
- キーワード
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- 姉大宮町東側
- 塚本町
- 兼明親王
- 源兼明
- 前中書王
- 御子左第
- 大宮第(三条大宮第)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000344853