当館の所蔵資料をお調べしましたが、「命名された年」「名付け人」に関する記述を確認することはできませんでした。
なお、調査の過程で、室町時代や江戸時代の書籍に関連記述があることは確認できました。
確認資料は以下のとおりです。
・『大日本地名辞書 第6巻 増補版』(吉田東伍/著 富山房 1982)
1903(明治36)年に初版が発行された、日本初の全国的な地名辞典です。
地名の語源・変遷・歴史等を、多数の古典籍の引用しながらまとめています。
p.996「馬返(ウマガヘシ)」の項があり、以下でご紹介する『廻国雑記』と『日光山志』が出典として挙げられています。
・『廻国雑記の研究』(高橋良雄/著 武蔵野書院 1987)
当資料の前書きによると「『廻国雑記』は文明一八年(一四八六)から同一九年にかけて、聖護院門跡、道興准后によって行われた回国修行の旅の記である」とのことです。
p.135-136に日光山に関する記述とその解説があり、馬返しに関する記述もこの部分に含まれます。
・『日光山志』(植田孟縉/著 臨川書店 1996)
1837(天保8)年に出版された資料の復刻版です。
p.280に「馬返村」の項があります。
そのほか、以下の資料にも「馬返し」の記述を確認しました。
・『日光大観(「風俗画報」臨時増刊 第436号)』(山下重民/編 東陽堂 1912)
「山路の栞 第二」の中に「中宮祠道」の項があります。(p.61-64)
この中で「馬返」について「往時登山せし者此處より乗馬を返したるを以て名く。」とあります。(p.62)
・『下野国誌 校訂増補』(河野守弘/著,佐藤行哉/校訂 下野新聞社 1989)
1850(嘉永3)年に出版された資料の翻刻です。
p.60「黒髪山」の項に「馬返村」に関する記述があります。
・『日本歴史地名大系 9 栃木県の地名』(平凡社/編 1988)
p.544「細尾村」の項に「馬返」に関する記述あり。
出典は『日光山志』。
・『角川日本地名大辞典 9』(「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1984)
p.812-813「細尾」の項に「馬返」に関する記述あり。
出典は『日光山志』、『日光市史』。
・『栃木県大百科事典』(栃木県大百科事典刊行会/編、発行 1980)
p.808に「うまがえし(馬返)」の項あり。
「坂道がここから急になるのと、霊場中禅寺(立木観音)が牛馬をけがれあるものとして返したことからつけられた地名である」とあります。(出典の記載なし)
ご参考までに、「馬返し」という地名は、本県のみではなく全国的に見受けられる地名のようです。
・『日本大百科全書 3』(小学館/編 1985)
p.220に「馬返し」の項あり。
「峠路の麓によくみられる地名。富士や日光などのものが代表例(以下略)」とあります。
『栃木県大百科事典』同様に、牛馬の折り返し地点、俗界と聖界の境目等と説明されています。(出典の記載なし)
以下の資料もお調べしましたが、情報を確認できませんでした。
・『日光市史 上巻(考古・古代・中世)』(日光市史編さん委員会/編 日光市 1979)
・『日光市史 中巻(近世)』(日光市史編さん委員会/編 日光市 1979)
・『日光市史 下巻 近現代・民俗』(日光市史編さん委員会/編 日光市 1979)
調査回答日:2021.6.23
事例作成日:2021.12.4
キーワード:
分野:291 地理.地誌.紀行 -日本