レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年05月21日
- 登録日時
- 2021/05/08 13:08
- 更新日時
- 2021/06/10 12:12
- 管理番号
- 県立長野-21-016
- 質問
-
解決
長野県内の高山帯に生息するミヤマモンキチョウとモンキチョウの交雑についての文献はあるか。
両種の交配と思われる個体の写真を見た。
- 回答
-
ミヤマモンキチョウ(学名:Colias palaeno)とモンキチョウ(学名:Colias erate)両種の交雑に言及している資料としては以下のものがある。
・「モンキチョウとミヤマモンキチョウの異種間交尾」中田信好著2020
『Butterfly Science[バタフライ・サイエンス]』17巻 日本蝶類科学学会 p.41
記事の内容は、長野県東御市烏帽子岳山頂付近で行われた、モンキチョウ(♂)とミヤマモンキチョウ(♀)の異種間交尾の観察と撮影であるとのこと。「交尾が続いた」「交尾が解けた」の記述があり、また、カラー写真の掲載がある。
※該当資料は当館で所蔵していないため、国立国会図書館に協力レファレンスを依頼した
また、調査の中で見つけた、モンキチョウ属の交雑に関する論文を合わせて紹介した。
・「Diapause Dynamics And Host Plant Utilization of Colias Philodice, Colias Philodice, Colias InteriorColias Interiorand Their Hybrids (Lepidoptera: Pieridae) and Their Hybrids (Lepidoptera: Pieridae)」
(google翻訳タイトル:モンキチョウ、モンキチョウ、モンキチョウ、モンキチョウとその雑種(鱗翅目:シロチョウ科)およびそれらの雑種(鱗翅目:シロチョウ科)の休眠動態と宿主植物の利用)
シロチョウ科のモンキチョウの複数種を人工的に交雑し、その生態を観察した論文。なお、実験にはミヤマモンキチョウ(Colias palaeno)は用いられていない。
・「DRIVERS OF HYBRIDIZATION IN A 66‐GENERATION RECORD OF COLIAS BUTTERFLIES」(DeepL翻訳タイトル:66世代にわたるコリアス・バタフライの記録におけるハイブリッド化の要因)
両種の言及はありませんが、モンキチョウ属のColias eurythemeとC. eriphyleの66世代(22年間)にわたる交配の記録からなるデータセットを利用して、季節的な天候がハイブリッドの子孫の生成と生存に及ぼす影響に関する研究。
- 回答プロセス
-
1.館内資料を探す
(1) 書棚を参照する
長野県の郷土分類で昆虫にあたるN486の書棚を見て「ミヤマモンキチョウ」の項目を確認したが、モンキチョウとの交雑についての言及は確認できなかった。
・『信州の蝶』浜 栄一監修 信濃毎日新聞社 1996【N486/53】p.16-17
・『長野県昆虫図鑑 上』信州昆虫学会 解説 信濃毎日新聞社 1979【N486/26/1】p.36
・『信州浅間山麓と東信の蝶』鳩山 邦夫著 信州昆虫資料館 2014【N486/93】p.47
・『長野県産チョウ類動態図鑑』信州昆虫学会監修 文一総合出版【N486/58】
・『山に登った虫たち 山岳昆虫の多様性と保全(山岳科学ブックレット)』中村 寛志編 信州大学山岳科学総合研究所 2012【N486/91】
・『見つけよう信州の昆虫たち 身近な自然の昆虫図鑑』信州昆虫学会監修 信濃毎日新聞社 2009【N486/83】
写真と種名のみの掲載で、生態に関する記述はない。
・『日本産チョウの配偶行動』蛭川憲男著 蛭川憲男 2012【M486/106】
p.115にミヤマモンキチョウの配偶行動についての記述がありますが、モンキチョウとの交雑に関しての記述は確認できなかった。
・『チョウとガの魅力 ―神さまが創った紋様―』四方 圭一郎編 飯田市美術博物館 2000【N486/62】
・『わたしの日本昆虫記1』蛭川 憲男著 蛭川憲男 2016【N486/100/1-1,2,3,4,5】
・『長野県における平地から高山帯の蝶6』蛭川 憲男著 蛭川憲男 2012【N486/105/6】
・『長野県における平地から高山帯の蝶6』蛭川 憲男著 蛭川憲男 2012【N486/105/7】
・『長野県における平地から高山帯の蝶9』蛭川 憲男著 蛭川憲男 2015【N486/105/9】
・『100年間の上高地から槍ヶ岳の蝶 北アルプス蝶相の研究』蛭川憲男 ほおずき書籍 2008【N486/81】
・『日本の鱗翅類』駒井 古実編 東海大学出版会 2011【486.8/コフ】
以上から、「ミヤマモンキチョウ」の学名はColias palaenoであること、また同種は準絶滅危惧種であり、採取が禁止となっていることがわかる。
(2)長野県環境保全研究所の文献を探す
長野県環境保全研究所では、「高山生態系モニタリングに関する調査研究(R1(2019)~R3(2021)年度)」を行っており、高山帯の生態系に関する研究も行っている。
下記の通り当館所蔵の研究報告等を参照しましたが、目次から「高山」および「チョウ類」に関わるとわかるものを参照したが、ミヤマモンキチョウの交雑等に関する記述を見つけることはできなかった。
なお、当県の環境保全研究所の研究報告である『環境保全研究所研究報告』は下記ホームページで公開されている。
・『環境保全研究所研究報告』(第1~10号)
・『環境保全研究所研究報告』(第11~16号)
・『長野県生物多様性概況報告書 (長野県環境保全研究所 研究プロジェクト成果報告)』
長野県環境保全研究所編 長野県環境保全研究所 2011【N468/7】
(3)県内の昆虫に関わる団体の著作物を探す
大町山岳博物館のチョウ類に関わる展示「北アルプス山麓の自然に蝶が舞う」の記録の協力者一覧に掲載されていた、県内の昆虫に関する団体の当館資料を探しましたが、(1)で参照した書籍と被っているものが多く、有益な情報は得られなかった。
・伊那谷自然友の会
・からこるむノ会
・信州昆虫学会
・松本むしの会
2.絶滅危惧動物としての文献を探す
・『レッドデータブック 2014-5 昆虫類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編集 ぎょうせい 2015【462.1/カン/'14-5】
p.428「ミヤマモンキチョウ浅間山系亜種」に「近年、生息地でモンキチョウが見られるようになってきており、その影響が懸念される」との記述があるが、参考文献の言及なし。
項目の執筆者「中村康弘」をCinii(後述)で検索したが、タイトルにミヤマモンキチョウやColias palaenoの入った論文は確認でなかった。
・「希少種はいま(47)=ミヤマモンキチョウ 地域で異なる羽の黒帯」2008.8.31信濃毎日新聞 朝刊38p.
・『希少種はいま』増田 今雄著 信濃毎日新聞社 2010【N462/70】
前項目の連載記事を1冊の本にまとめて出版された資料。
・『伊那谷の自然 2』伊那谷自然友の会編 中部建設協会 1997【N462/51】
p.138に分布がない旨の記述のみ。
3.論文を探す
(1)「Cinii Articles[サイニイ アーティクルズ]」
国立情報学研究所が提供する、国内の大学などの研究機関が所蔵する雑誌に掲載された記事を検索できるサービスで、インターネットがあれば無料で使うことができる。
掲載雑誌巻号などの情報に加えて、インターネット上で閲覧が可能なものについてはリンクも紹介されていることもる。
「Cinii Articles」で「ミヤマモンキチョウ 交雑」、「ミヤマモンキチョウ 交配」、学名である「Colias palaeno」と全文検索したが、回答につながる論文は見つかりませんでした。
(2)「Google scholar[グーグル スカラー]」
Googleが提供している学術情報の検索サービスで、主に学術論文、学術雑誌、出版物を探すことができる。
理学系論文であること、また、「Colias palaeno」はユーラシア大陸、北米大陸に分布している種であることから、関連の論文の言語は英語である可能性が高いため、英語の論文も検索範囲に含むこのデータベースを使うことにした。
「Colias palaeno Colias erate hybridization」 、「"Colias palaeno" hybridizing species」と検索した論文を確認しましたが、両種の交雑に関する言及のある論文は確認できなかった。
この中で見つけた、モンキチョウ属の交雑に関する論文を紹介した。
なお、英語論文については、各論文の「梗概(Abstract)」の部分を「DeepL(無料版)」 で翻訳したものを参照しており、本文までは確認していない旨も添えた。
(3)「JDreamⅢ 科学技術文献情報データベースサービス]
当館契約の有料データベースで、国内外の科学技術全分野を網羅している科学技術総合データベース。
キーワードから文献の書誌情報(標題・著者名・雑誌名・巻号頁等)や抄録(要約)を探すことができます。検索の範囲に外国語の論文も含まれていますが、収録されている情報は翻訳(機械翻訳含む)されているため、日本語で検索して内容を確認することができる。
このデータベースで「ミヤマモンキチョウ」と検索したところ、回答の初めでご紹介した、「モンキチョウとミヤマモンキチョウの異種間交尾」中田信好著の書誌情報が見つかった。
(4) 信州大学附属図書館「PublicationFinder」
信州大学附属図書館の蔵書と同館が契約している電子ジャーナル、電子ブックを検索できるデータベース。「ミヤマモンキチョウ」、「Colias palaeno」検索したが、該当する資料は見つからなかった。
また、(3)で確認できた「Butterfly Science」は収録していなかった。
4.文献の所蔵館を探す
「国立国会図書館サーチ」
国立国会図書館が提供する、国立国会図書や全国の都道府県立図書館、大学などの図書館が所蔵する資料を検索することができるデータベース。こちらのデータベースは、インターネットがあれば無料で使うことができる。
3(3)での結果から、雑誌記事「モンキチョウとミヤマモンキチョウの異種間交尾」は「Butterfly Science」の17巻に所収されていることが分かったため、この雑誌の所蔵館を調べる。
「Butterfly Science」と書名検索をしたところ、国立国会図書館に所蔵が確認できたため、
回答の記事「モンキチョウとミヤマモンキチョウの異種間交尾」について、下記4点を確認してもらうよう協力レファレンスを依頼した。
・記事の掲載ページ
・異種間の交尾が成立した事例についての記述の有無
・交尾が成立したとすれば、その雑種個体についての記述の有無
・交尾事例を確認した地域・山名
国立国会図書館から以下のとおり回答をいただいたため、利用者に紹介するとともに複写の案内をした。
「ご照会の下記の記事の内容は、長野県東御市烏帽子岳山頂付近で行われた、モンキチョウ(♂)とミヤマモンキチョウ(♀)の異種間交尾の観察と撮影になります。「成立」の語句はありませんが、「交尾が続いた」「交尾が解けた」の記述があります。カラー写真の掲載があります。 記事名: モンキチョウとミヤマモンキチョウの異種間交尾 著者名: 中田信好 当館請求記号: Z74-J490 タイトル: Butterfly science = バタフライ・サイエンス 出版者等: 日本蝶類科学学会, 2015- 巻号・年月日: (17):2020 ページ:p.41 」
- 事前調査事項
-
嬬恋インタープリター協会ホームページの「ミヤマモンキチョウ」のページで、両種の交雑の可能性が指摘されているとのこと。【最終確認日2021/06/08】
- NDC
-
- 昆虫類 (486)
- 参考資料
- キーワード
-
- ミヤマモンキチョウ
- Colias palaeno
- 高山蝶
- 準絶滅危惧種
- 信州学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000298066