レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年05月26日
- 登録日時
- 2022/09/22 00:30
- 更新日時
- 2023/12/26 00:30
- 管理番号
- 3A22008186
- 質問
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解決
小松公園(大阪市東淀川区)の涙池の藤原景清伝承について、「景清が好きなそばを打て」という大日坊の言葉を「景清を打て」と聞き間違えて大日坊を斬ってしまい、その血のついた刀を泣きながら洗った池であるとウィキペディアで読んだが、大日房は誰に対しそう言ったのか、景清がそれを聞いてどのように斬るに至ったかなど、できれば大本の出典の内容を知りたい。
- 回答
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涙池の伝承について、『東淀川区史』に以下のとおり記述がありました。
(1) 『東淀川区史』 (川端 直正/編集 東淀川区創設三十周年記念事業委員会 1956)
「第十三章 名所旧蹟その他」のp.491「ロ 涙池の話」の項に「所伝によると」とし、伝承について記述されています。「悪七兵衛景清が遁れて伯父である西大道村の三宝寺を頼んで匿まわれた。住持の大日坊は肉身のことゆえ、早速寺の宝蔵へ隠し、毎日食事を運んでいたが、幾日か過ぎて或日のこと景清に御馳走しようと思い、名物の蕎麦を打つよう寺男に命じたが、意外にそれが暇取つたので「景清も空腹であるから早く蕎麦を打て」と叱つた。それを蔵の中で聞いた景清は「景清を早く打て」と聞き違えて、伯父が変心して自分を打つて源氏方へ渡す心であろうと早合点し、能忍を殺したが」とあります。
この伝承の典拠について「摂陽群談」とする記述が複数見つかりました。
(2) 国立国会図書館デジタルコレクション『大日本地誌大系 第25巻』 (蘆田伊人 編 雄山閣 昭5) (インターネット公開)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1179186/1/36 (2023.12.14確認)
「摂陽群談巻第四 池の部」のp.54-55(コマ番号36)「泪池」の項に「土俗傳云、昔此所に悪七兵衛景清、伯父入道蟄居せり。寿永三年八島の軍敗走して、景清是に来る。伯父入道、眠蔵に置て軍労を助く。或日温麥の打手と云を聞誤て、伯父の心替と思取て、忍で入道を害し、寺を去、此池に血刀を浸ぐ。」とあります。
※「摂陽群談 近世摂津国の代表的な地誌。著者は岡田徯志。全十七巻十七冊。元禄十四年(一七〇一)六月刊行。」(『国史大辞典』より)
以下の資料では、蕎麦を打つようにではなく、酒を買いに行くように申し付けた旨、記述されていました。
(3) 国立国会図書館デジタルコレクション『日本随筆大成 卷一』 (日本随筆大成編輯部 編 日本随筆大成刊行会 昭和2) (国立国会図書館内/図書館・個人送信限定)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1914083/1/34 (2023.12.14確認)
林道春著「梅村載筆 人巻」のp.53(コマ番号34)に「此大日は、悪七兵景清が伯父なり、景清戦ひまけて大日が所へ来る、大日ひそかに侍者を呼んでいひけるは、景清見参つかれたり、酒を買来りて呑ませよと云、侍者はしり出て行を、景清見て思ふに、我を源氏の方へ訴て捕へんとするにやとこゝろへ、太刀をぬき大日を切殺しける。」とあります。
※「梅村載筆 林羅山筆録の和文随筆。」「林羅山 一五八三-一六五七 江戸時代初期の儒学者。」(『国史大辞典』より)
(4) 国立国会図書館デジタルコレクション『大日本仏教全書 102』(仏書刊行会 編 仏書刊行会 明治45-大正11) (インターネット公開)
https://dl.ndl.go.jp/pid/952806/1/139 (2023.12.14確認)
「本朝高僧伝第十九」のp.273-274(コマ番号139-140)に「摂州三宝寺沙門能忍傳 元享釈書第二栄西伝」の項があり、p.273(コマ番号139)に「一夜景清訪来。忍喜其邂逅相逢。使弟子需酒於杏家景清疑告事於官府。乃擐劔刺殺而去。」とあります。
※「本朝高僧伝 卍元師蛮の撰。七十五巻。自序があり、それに「元禄十五歳(一七〇二)次三月詰旦」と本書成立の年時を記す。」(『国史大辞典』より)
(5) 『国史大辞典 11 にた-ひ』 (国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1990.9)
p.374「能忍」の項に、「甥の景清が三宝寺を訪れたので、弟子を酒屋に走らせたところ、官への密告かと疑った景清によって刺殺されたと伝える。」とあります。
- 回答プロセス
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1.質問者の事前調査資料と思われる「ウィキペディア」の「藤原景清」の項を確認。
2.当館データベース「大阪関係資料目次検索」(外部非公開)にて、キーワード“藤原景清”、“平景清”、“涙池”で検索。“藤原景清”、“平景清”はヒットなし。“涙池”で資料(1)が見つかる。
3.大阪府立中之島図書館「おおさかポータル」( https://www.library.pref.osaka.jp/site/osakaportal/ )にて、キーワード“藤原景清”、“平景清”、“涙池”で検索。“平景清”で事項名「野崎観音」がヒットするが有用情報なし。“藤原景清”、 “涙池”はヒットなし。
4.商用データベース「JapanKnowledge」にて、キーワード“藤原景清”“平景清”で検索。当該事項について詳細な記述は見つからず。
5.商用データベース「JapanKnowledge」にて、キーワード“涙池”で全文検索。東洋文庫の『十二支考 3』のp.205の記述がヒットし、資料(2)(3)が見つかる。
6.商用データベース「JapanKnowledge」にて、キーワード“景清 能忍”で全文検索。資料(5)が見つかる。
7.「大阪関係資料目次検索」および「おおさかポータル」にて、キーワード“能忍”、“大日房”で検索。有用情報ヒットせず。
8.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード“景清 涙池”で検索。『日本民俗学辞典 [本編]』(中山太郎 編 昭和書房 昭和8 コマ番号205)にも同様の記述があるが、出典は「摂陽群談巻四」。
9.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード“景清 能忍”で検索し、「出版日:古い順」で表示。『国文註釈全書 〔第6〕』(室松岩雄 編 国学院大学出版部 明治42)、『源平軍物語 2 (国史叢書)』(黒川真道 編 国史研究会 大正3)などに「梅村載筆」を出典とする記述ほか、宗教関係の雑誌記事などの記述がヒットする。
10.「CiNii Research」にて、キーワード“景清 涙池” “景清 能忍”で検索するが、ヒットなし。
11.「Google Scholar」にて、キーワード“景清 涙池” “景清 能忍”で検索、「再考 : 大日房能忍と「達磨宗」」(https://doi.org/10.24791/00000369 )がヒットし、その論文の記述より、資料(4)が見つかる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 近畿地方 (216 9版)
- 仏教 (180 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000253623> 東淀川区史 川端 直正/編集 東淀川区創設三十周年記念事業委員会 1956 資料(1)
- 当館書誌ID <0000199172> 国史大辞典 11 にた-ひ 国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1990.9 9784642005111 資料(5)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『大日本地誌大系 第25巻』 (蘆田伊人 編 雄山閣 昭5) (インターネット公開) https://dl.ndl.go.jp/pid/1179186/1/36 (2023.12.14確認) 資料(2)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『日本随筆大成 卷一』(日本随筆大成編輯部 編 日本随筆大成刊行会 昭和2) (国立国会図書館内/図書館・個人送信限定) https://dl.ndl.go.jp/pid/1914083/1/34 (2023.12.14確認) 資料(3)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『大日本仏教全書 102』(仏書刊行会 編 仏書刊行会 明治45-大正11) (インターネット公開) https://dl.ndl.go.jp/pid/952806/1/139 (2023.12.14確認) 資料(4)
- キーワード
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- 大阪府大阪市東淀川区
- 藤原景清
- 平景清
- 大日房能忍
- 涙池
- 泪池
- 小松公園
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- その他(庁内)
- 登録番号
- 1000321626