レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/06/14
- 登録日時
- 2018/10/31 00:30
- 更新日時
- 2018/10/31 10:02
- 管理番号
- 所沢狭山-2018-007
- 質問
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解決
蜘蛛の伝承的意味がわかる本を探している。
- 回答
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下記の資料に記載があります。
〇『日本故事物語 下』 池田弥三郎/著 河出書房新社 2009年
〇『動物信仰事典』 芦田正次郎/著 北辰堂 1999年
〇『南方熊楠英文論考 <ノーツアンドクエリーズ>誌篇』 南方熊楠/著 集英社 2014年
〇『うわさと俗信』 常光徹/著 高知新聞社 1997年
〇『蜘蛛』 斎藤慎一郎/著 法政大学出版局 2002年
〇『クモ』 新海栄一/文・写真 農山漁村文化協会 2014年
- 回答プロセス
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1.所蔵確認
〇『日本故事物語 下』 池田弥三郎/著 河出書房新社 2009年
p.27 「下がり蜘蛛あれば人が来る」のことわざの記載があります。
p.29 「この土蜘蛛は、怪力をもった化生(けしょう)のものというふうに妖怪化されているが、糸を吐きかけるという蜘蛛の本態は失っていない。(中略)「夜蜘蛛は親の敵」と言い、「よくも来た」と言って殺してしまう。これも蜘蛛にある妖怪味を感じていた証拠だ。が、同時に、そうした化生のものであるからして、人力の及ばぬ洞察力なり、神通力なりを持ちうるのであって、恋人が来る前兆を知らせるものだと考えられたのであろう。「朝蜘蛛は殺すな」というのも、それが何かよいさきぶれなり幸いを持って来ると考えられたからであろう。」との記載があります。
〇『動物信仰事典』 芦田正次郎/著 北辰堂 1999年
p.168-169「蜘蛛(くも・ササガニ・ササガネ)」の項に「動物への想い」「東洋から西洋へ」「振興と伝承」について記載があります。
〇『南方熊楠英文論考 <ノーツアンドクエリーズ>誌篇』 南方熊楠/著 集英社 2014年
p.281-283「蜘蛛の物語」に中国の百科事典『淵鑑類函』からの引用として「たらいほどもある巨大な黒い蜘蛛が襲いかかった。従者が鋭い刀で蜘蛛の巣を切り開いたときには、すでに遅く、主人は脳みそを吸い出されて死んでいた」「しばしば近隣の住民の子どもが、ふいにいなくなることがあったが、この怪物の網にかかって食われてしまったのだと、このときわかった。」との記載があります。
p.434-435「燐光を放つ蜘蛛」に「日本と中国ではある種の蜘蛛は燐光を発すると信じられている」との記載があります。
p.709 「薬になる蜘蛛と蜘蛛の巣」に「李によれば、旧暦七月七日に蜘蛛の巣を集めて男性の襟まわりに入れておくと、驚くほど物忘れをしなくなるという。また、疣(いぼ)や腫瘍に巻きつけておくと自然に癒える。外用薬として身体に貼ると、しつこい痛みがやわらぎ、出血が止まる。焼いて粉末状にしたものを酒に入れて飲めば、喀血(かっけつ)が治る。」との記載があります。
〇『うわさと俗信』 常光徹/著 高知新聞社 1997年
p.203-207「クモの合戦」に「さて、クモといえばだれでも知っているのが「朝グモ夜グモ」の俗信だろう。朝のクモは、客が来る(全国的)とか、待ち人が来る(群馬・富山・山口・高知)といい、一方、夜のクモは、泥棒が来る(全国的)、盗難にあう(山形・愛知)といって嫌う。朝出現するクモに人の来訪を期待するのに対し、夜のクモは泥棒に入られる前兆として忌むのである。ほかにも、朝のクモを吉、夜のクモを凶とする例は豊富で、朝のクモは「縁起がよい」「福がくる」「金が入る」といい、夜のクモは「不吉」「災いが起きる」などという。午前中に出るクモを吉兆とするところから、これを見つけると特別の心持ちで迎える風もある。土佐清水市では、朝の下がりグモを吉兆として一升枡に受け、恵比寿さんの棚に供えると福があるといい、長岡郡大豊町下桃原では、朝の下がりグモは福をもってくるので、大切にしてふところに入れるしぐさをするという(『土佐の海風』)。「枡に入れて神棚に供える」とか「紙や懐中に入れてから恵比須様に供える」土地は方々にあり、なかには、箪笥に入れるとか、財布に入れるという所もある。他方、夜のクモはこれを不吉とするところから、なるべく身辺から遠ざけようとする。夜のクモは「おととい来い、と言って追い出す」(新潟・愛知・奈良)、「尻やけ尻やけ、と言うとにげる」(愛知県)といった具合で、出現したクモの扱いには朝と夜では対蹠的な相違がみられる。当然のことながら、「朝のクモは親に似ていても殺すな」というのに「夜のクモは親と思っても殺せ」という。このほかにも、幡多郡大正町弘瀬では、早朝住居の入り口などにクモの下がるのを喜び、そのクモが足を包むようにして降りてくると土産物をもった客が訪れるといい、足をひろげて降りると土産物をもたない客がくると伝えられている。この伝承は、岡山や愛媛県にもある。新潟県新津市では、朝のクモをとって蓋をし「クモよクモよ、お金をもってこい」と言うと、その日のうちに金が入るという。」との記述があります。
p.208 「夜のクモは吉兆?」に「鹿児島県でも大島の名瀬では、夜のコブ(クモ)ヨロコブの語呂に合わせて殺すのを忌み、反対に朝のコブを不吉として殺すという」「山形県西置賜郡飯豊町の旧中津川村では、夜のクモが家にはいってくると、タメ(溝の金)に当たる知らせとして喜び、反対に朝グモは催促グモ、あるいは盗人グモとも言って、借金取りが来る前兆と受け取り、あまりよく言わないという」といった事例を挙げている。」との記載があります。
〇『蜘蛛』 斎藤慎一郎/著 法政大学出版局 2002年
p.85-92「瀬戸内・四国地方のクモ喧嘩遊び」に、「山口県大島郡平郡島では、蜘蛛の漁業神としての性格を次のように伝承している。即ち昔、蜘蛛が楠の葉をくるくる巻いて、足を櫓、櫂にして漕いでいた。その姿態に人間が示唆され、楠を伐って来て中をくりぬいて舟をつくり蜘蛛の足をかたどって櫓櫂を拵えて漕いだ。舟に乗ってゆく漁はそれから行われるようになった。それで漁民は今なお夜出て来る蜘蛛でも絶対に殺さず、クモサマクモサマといって非常に尊ぶといわれている。」との記載があります。
p.97 「むかし敗残の武士が芋蔵で夜露をしのんで隠れていた。追っ手がきて、穴にクモが巣を張っていれば、人が出入りしていない証拠と見てそのまま去って行った。朝行くと巣を張っているから命が助かった。朝(天井から)小さいクモが下がると縁起がいいから殺すなといった。殺したいけれども殺せない。夜のクモは縁起がわるい。夜は殺してもよく、気持ちがわるいから、たいがいは殺した。」との記載があります。
p.124与那国島では「夜グモは縁起が悪い。殺したり逃がしたり。朝グモは縁起がいい。クモが網を張っていると壊さないという。」等の記載があります。
p.123 1990年代の著者による調査で、西表島では夜出るクモは殺すな、朝出るクモは殺せと伝えている。
p.244-253「薬にしたクモ」に、民間療法の記載があります。
p.216-227「朝のクモ、夜のクモ」に、日本全国各地の伝承のまとめの記載があります。
p.225-226「クモのふるまいによる天気占い」に、日本全国各地の伝承の記載があります。
〇『クモ』 新海栄一/文・写真 農山漁村文化協会 2014年
p.54「資料編4人とクモのかかわり」に「我が夫子の 来べき宵なり ささがねの 蜘蛛の行ひ 今宵著しも 今晩は、きっとあの人が来てくれるに違いない。蜘蛛が巣を張っているから」という意味で、「蜘蛛が夜に網を張ると、親しい人が来る」という中国の俗信から詠まれたものです。クモは会いたい人が来る吉兆の生きものと思われていたのです。」との記載があります。
- 事前調査事項
- NDC
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- 民間信仰.迷信[俗信] (387 9版)
- 伝説.民話[昔話] (388 9版)
- 節足動物 (485 9版)
- 参考資料
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- 日本故事物語 下 池田弥三郎/著 河出書房新社 2009.3 388.81 978-4-309-22503-6
- 動物信仰事典 芦田正次郎/著 北辰堂 1999.4 387 4-89287-229-6
- 南方熊楠英文論考 <ノーツアンドクエリーズ>誌篇 南方熊楠/著 集英社 2014.12 081.6 978-4-08-789001-3
- うわさと俗信 常光徹/著 高知新聞社 1997.3 388.1 4-87503-216-1
- 蜘蛛 斎藤慎一郎/著 法政大学出版局 2002.9 485.73 4-588-21071-8
- クモ 新海栄一/文・写真 農山漁村文化協会 2014.6 485.73 978-4-540-08235-1
- キーワード
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- 蜘蛛
- 伝承
- 民俗学
- 妖怪
- 動物
- 民衆信仰
- 迷信
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000244682