レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年09月07日
- 登録日時
- 2023/03/20 16:07
- 更新日時
- 2023/05/18 10:27
- 管理番号
- K22-01
- 質問
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解決
「発酵」と「腐敗」の違いについて知りたい。
- 回答
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「発酵」と「腐敗」の間に明確な違いはなく、人間の都合で人間に良いものを「発酵」、悪いものを「腐敗」としている。
- 回答プロセス
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1. 辞書や辞典で、「発酵」と「腐敗」の意味を調べる
食品に関する辞書や事典で、「発酵」と「腐敗」についての意味を調べた。
・『食品科学大事典』・・・「発酵」
(引用・前略)(発酵の過程について)生物学的概念が一般に受け入れられるようになったのは、パストゥール(Louis Pasteur)の研究以後である。彼は、発酵とは、生理学的に酸化と相対するものであり、無酸素状態で生物が生存し、増殖するのを可能にするものであるとして結論した。この概念は、発酵と腐敗とを同等の過程として結び付けた。この2つの現象は、共に酸素が存在しないときに微生物によって行われる有機物の分解を意味するが、その違いは分解される物質の性質によって決定される。 糖を含有する物質は一般によい香気をもつ生産物を生じる(発酵)が、タンパク質は悪臭をもつ生産物を生じる(腐敗)。
・『食品安全の事典』・・・「腐敗」
(引用・前略)発酵は、ヨーグルトや酒のように、炭水化物が分解されて乳酸やアルコールなどが生成される場合が代表的で、一方腐敗は食肉や魚介類のようにタンパク質を多く含む食品で顕著である。しかし、炭水化物が分解される場合が発酵で、タンパク質が分解される場合が腐敗かというと、そうではない。(中略)両者の区別は、食品や微生物の種類、生成物の種類によるものではなく、微生物作用のうち人間生活に有用な場合を発酵、有害な場合を腐敗とよんでいるのである。
微生物がタンパク質を分解した場合が「腐敗」、糖(炭水化物)を分解した場合は「発酵」。という分け方が存在すようだが、全ての場合に当てはまるものではないため、一般的には「人に有益であれば発酵、有害であれば腐敗」といった説明がされると考えられる。
2. 発酵食品会社のWEBサイトで調べる
日本の大手発酵食品のサイトを確認すると、「発酵」と「腐敗」の違いについて分かりやすくまとめられていた。
2-1「発酵文化を伝える、つなぐ。みんなの発酵BLEND」(カルピス株式会社)
<発酵と腐敗、熟成の違いとは?>
https://www.hakko-blend.com/study/whats/02/index.html (最終アクセス:2023.5.17)
2-2「発酵美食」(マルコメ株式会社)
<発酵と腐敗・熟成の違いって何?>
https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/20181025/10134/ (最終アクセス:2023.5.17)
上記2社のWEBサイトでは、人に有害(腐敗)であるか、有益(無害)について、以下のように説明されている。
・「微生物の反応が有益と捉えるか、無益と捉えるかは、文化や習慣、個人的価値観によって異なる」
・「発酵か腐敗かは、人間都合で決められている」
・「微生物の力によって変化した食品を口にしても、体の中で悪さをせず、上記のような働きをしてくれる場合は発酵、逆に体に害がある場合は腐敗」
「発酵」も「腐敗」も、微生物によって分解されるという同じ過程を指すが、文化や習慣、価値観の違いによって、人間が受け入れられるものを「発酵」、受け入れられないものを「腐敗」と呼んでいる。
3. 論文を調べる
・中島春紫「発酵と腐敗の境界 (特集 境界)」(掲載誌:『學鐙』116 (1), p.22-25, 2019)
発酵食品の著名な研究者である、東京農業大学名誉教授・小泉武夫博士による
「発酵と腐敗を区別するのは、科学ではなく文化である」という一文が、論文中で引用されている。
・藤原建夫「腐敗と発酵のはざまの研究生活で垣間見たもの」(掲載誌:『日本食品微生物学会雑誌』 30 (4), p.186-192, 2013)
科学技術情報に関係する日本の電子ジャーナル論文等の検索・閲覧プラットフォーム「J-stage」にて本文が公開されている。
https://doi.org/10.5803/jsfm.30.186 (最終アクセス:2023.5.17)
・藤原建夫「発酵と腐敗を分けるもの」(掲載誌:『日本醸造協会誌』106 (4), p.174-182, 2011)
農林水産関係の論文を中心に検索できる、データベース「AgriKnowledge」にて本文が公開されている。
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010812392 (最終アクセス:2023.5.17)
4. その他関連サイトの紹介
・国立国会図書館 リサーチ・ナビ
ホーム> 主題から調べる > 技術・工学 > 食品工学 > 醸造・発酵・微生物工学について調べる
https://rnavi.ndl.go.jp/jp/guides/post_484.html (最終アクセス:2023.5.17)
・農林水産省
農林水産省は、食料の安定供給の確保や、農林水産業の発展等を担っている行政機関である。
農研機構の「発酵食品データベース」が紹介されている。
ホーム > 基本政策 > 食文化のポータルサイト > 食文化お役立ち情報
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/oyaku_dachi/jyouhou.html (最終アクセス:2023.5.17)
・JAS(Japanese Agricultural Standards、日本農林規格)
JASとは、「食品・農林水産分野において農林水産大臣が定める国家規格」、または「国内市場に出回る食品・農林水産品の品質や仕様を一定の範囲・水準に揃えるための基準」である。ここでは、「しょうゆ」や「みそ」について規定されており、規格が公開されている。
ホーム > 新事業・食品産業 > JAS > JASの対象となる品目(規格)は?
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/ (最終アクセス:2023.5.17)
- 事前調査事項
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発酵と腐敗の違いを調べてみると、「ない」もしくは「人に有益であれば発酵、有害であれば腐敗」と出てきます。
私は納豆は昔は好きではなく、美味しいとも思わず腐っているかのように感じていました。
しかし現在は好物となり美味しいと感じています。
であれば、昔は有害で腐敗、現在は無害で発酵となり、人によるという回答になるのか、
正式な論文や厚生労働省などの機関が出した資料などが見つけられず、あれば教えていただきたいです。
- NDC
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- 食品工業 (588 8版)
- 参考資料
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『食品科学大事典』講談社出版研究所編集, 講談社出版研究所. 講談社, 1981.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001534042-00 , ISBN 4061426346 -
『食品安全の事典』日本食品衛生学会編, 日本食品衛生学会. 朝倉書店, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010214862-00 , ISBN 9784254430967 -
中島春紫, 中島春紫. (特集 境界) 発酵と腐敗の境界.『學鐙』學鐙編集室編, 116(1), P.22-25, 2019-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I029555478-00 -
藤井建夫, 藤井建夫. 特別講演 腐敗と発酵のはざまの研究生活で垣間見たもの. 『日本食品微生物学会雑誌 = Japanese journal of food microbiology / 日本食品微生物学会編集委員会[編], 30(4), P.186-192, 2013
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I025135854-00 -
藤井建夫. 発酵と腐敗を分けるもの--くさや,塩辛,ふなずしについて. 『日本醸造協会誌』日本醸造学会[編], 106(4), P.174-18, 2011-04
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I11089367-00
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『食品科学大事典』講談社出版研究所編集, 講談社出版研究所. 講談社, 1981.
- キーワード
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- 発酵
- 腐敗
- 食品
- 食品安全
- 微生物
- 醸造
- 腐る
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000330775