レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年05月29日
- 登録日時
- 2014/09/28 14:56
- 更新日時
- 2022/03/15 16:51
- 管理番号
- 県立長野-14-012
- 質問
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解決
「四睡図(しすいず)」の境地とはどのようなものか。また、モチーフとなった話や言い伝えはあるのか。
- 回答
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<四睡図、境地についての記述がある資料>
・『名数数詞辞典』森睦彦編 東京堂出版 1980【031.5/モム】p.201-202「四睡」の項目に
「東洋画の画題の一。豊干禅師・虎・寒山・拾得が一緒に寝ている図。羅漢・侍童・竜虎の説もある。天地静寂を表現、禅の妙悟証空の帰着を示す。」
とある。
・『仏教美術事典』中村 元、久野 健監修 東京書籍 2002【702.09/ナハ】p.382「四睡図」の項目に
「道釈画の画題。中国唐代に天台山国清寺に住んだ豊干が、弟子の寒山・拾得および常に騎乗している虎といっしょに眠っている図。幽寂悟道の禅の真理を示すものといわれ、禅林の画家あるいは禅僧によって水墨画で描かれた。
黙庵筆・四睡図(重文、東京・前田育徳会蔵)が知られる。他に、謡曲や俳諧、浄瑠璃などにも取り上げられた。」
とある。
各用語、人物については以下のとおり。
・道釈画
『新潮世界美術辞典』新潮社 1985【703.3/シン】p.1012
「道釈画は道教、仏教に関係する人物画。道釈人物画ともいう。羅漢、観音をはじめ、釈迦や仏、道教の諸神、仙人、祖師などがおもな画題となり、(中略)とくに水墨道釈画は禅僧の余技にとりあげられた。」
とある。
・寒山・拾得
『仏教美術事典』p.200「寒山拾得図」の項目に
「寒山・拾得は、唐代末期、天台山国清寺に隠棲した散聖で豊干とともに国清寺の三隠とされた。豊干・寒山・拾得はそれぞれ阿弥陀仏・文殊菩薩・普賢菩薩の化身とみなされ、宋代には国清寺に三人を祠る三賢堂が造られたほどに伝説流布し、信仰された。」
とある。また、「散聖」とは『新潮世界美術辞典』p.606「散聖図」の項目に
「道釈画の一種。散聖は世捨人の尊称。禅宗では、その行為が仏法の大意にかない人々を自覚に導きながら、正当な法系に属さない僧をいう。」
とある。
・幽寂(ゆうせき)
『大漢和辞典 4』諸橋轍次著 大修館書店 1960【813/60a/4】p.539「幽寂ゆうせき」の項目に
「奥深くしずか」
とある。
・悟道
『大漢和辞典 4』p.1061「悟道」の項目に
「さとりのみち。煩悩を解脱して仏界に入るべき仏の道」
とある。
<豊干・寒山・拾得・虎の記述がある資料>
・『寒山詩』太田悌蔵譯註 岩波書店 1939【921/17】p.9-13に閭丘胤撰(りょきゅういん)の書いた「寒山子詩集序」が掲載されていて、閭丘胤は任地へ出発する日、病気にかかり、それを天台山国清寺から来た豊干に治してもらう。閭丘は任地によい師がいるかを豊干に尋ね、
寒山が文殊菩薩、拾得が普賢菩薩であると告げられる。着任後国清寺に寒山、拾得を訪ねた閭丘は、豊干の院で虎の足跡のみを見る。
閭丘は寒山、拾得に礼拝し、国清寺に2人が住むことを願ったが、2人は豊干が阿弥陀仏であることを告げ、寺を去る。閭丘は寺の僧である道翹に
彼らの言行を収集させ、寒山が竹、木、石、壁などに書いた三百余の詩や、拾得が壁に書いたことばを集めて一編に編集した旨が書かれている。
なお、この資料は、漢文の書き下し文だが口語訳はなし。「閭丘胤」については上記の序に、「朝議大夫使持節台州諸軍主史上柱国賜緋魚袋」という唐の役人の肩書が記されているが、『寒山詩』の解説では、その行跡はわからないと記されている。
・『禅の語録13 寒山詩』入矢仙介・松村昴[共]著 筑摩書房 1970【188/276/13】p.3-8にも閭丘胤撰の「寒山子詩集序」と豊干の2詩も収められている。
この資料は漢文で書かれているが口語訳が付記され、寒山、豊干、拾得の詩にも書き下し文と、口語訳が併記されている。
またp.484の解説中に、「寒山伝説のもっとも原始的な形と見られるのは」「閭丘胤の序」であり、「『豊干禄』(当館には所蔵なし。豊干の伝記)では、豊干が虎に騎ったことが追加され」たと記述がある。
- 回答プロセス
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1 「四睡図」を確認するために数字に関わる言葉なので『名数数詞辞典』を引く。
2 仏教に関係した東洋画とのことなので、『仏教美術事典』で「四睡図」を引く。
3 仏教用語や人物についての記述がある資料を確認する。『大漢和辞典 巻10 虫部-辰部』p.646「豊干」の項目に『豊干拾得詩』の書名があり、
「唐、豊干撰。寒山子詩集に附す(四部叢刊 第604)」
とあるため当館の蔵書から寒山の詩集を確認する。
- 事前調査事項
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『世界大百科事典 12 シ-シヤ 改訂新版』平凡社 2007、ウィキペディア「四睡図」【最終確認:2022.1.8】
- NDC
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- 東洋画 (722 10版)
- 詩歌.韻文.詩文 (921 10版)
- 参考資料
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森睦彦 編 , 森, 睦彦, 1933-2003. 名数数詞辞典. 東京堂出版, 1980.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001461796-00 (【031.5/モム】) -
中村元, 久野健 監修 , 中村, 元, 1912-1999 , 久野, 健, 1920-2007. 仏教美術事典. 東京書籍, 2002.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003648653-00 (【702.09/ナハ】) -
新潮世界美術辞典. 新潮社, 1985.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001729897-00 , ISBN 4107302067 (【703.3/シン】) -
諸橋 轍次/著 , 諸橋‖轍次. 大漢和辞典 巻4. 大修館書店, 1960.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005717521-00 (【813/60a/4】) -
諸橋 轍次/著 , 諸橋‖轍次. 大漢和辞典 巻10. 大修館書店, 1960.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005735329-00 (【813/60a/10】) -
[寒山子/著] , 寒山. 寒山詩. 岩波書店, 1985. (岩波文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005714693-00 (【921/17】) -
入谷‖仙介 , 松村‖?. 禅の語録 13. 筑摩書房, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I015592788-00 (【188/276/13】)
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森睦彦 編 , 森, 睦彦, 1933-2003. 名数数詞辞典. 東京堂出版, 1980.
- キーワード
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- 四睡図
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000160313