レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/07/04
- 登録日時
- 2013/11/09 00:30
- 更新日時
- 2020/12/27 12:57
- 管理番号
- 千県中参考-2013-26
- 質問
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解決
藁筆の歴史やルーツ(いつ、どこで生まれたのか、どのように使われているのか等)について調べています。また、藁筆を使って書かれた書や絵が載っている本があるかも調べています。
- 回答
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藁筆について、歴史等は詳しくはわかりませんでしたが、藁筆を使った人物として狩野永徳や幕末の僧、慈雲の名前を挙げている資料がありました。
また、大きな字を書くのに用いると記載された資料がありました。
見つかった情報は次のとおりです。
なお、藁筆を使って書いたと明記されている絵や書が掲載された資料は見つかりませんでした。
【資料1】『筆』(木村陽山著 大学堂書店 1975)
「材料・製筆」という章に「藁筆」の項があり(p120)、「柔らかくして束ねて軸に縋(す)げれば使える。藁筆は主として毛筆の限界を越えた大字用に作られる」「藁筆使用の古人には前出の狩野永徳があり、後に幕末の慈雲尊者がある。」等、6行程度の記載があります。
また、巻末の「筆史年表」で日本の1755年のところに「僧慈雲・用竹筆・藁筆・檜皮筆」とあります(p199)。
年表の後の注に「項目を下げたものは参考資料」とありますが、上記の記載については参考資料(出典情報)はありません。
【資料2】『筆談墨史』(李家正文著 學藝書林 1973)
「大文字の筆」という節のうち、p86-87に「わら筆」についての記載があります。
「このような大文字を書くことは、むかしもおこなわれた。晋の王献之が、壁に方丈大の字を書いたときは、数百人の見物があったという。そのためには、大きな筆がいる。」「竹筆やわら筆を用いたり、
こも筆や箒(ほうき)さえ筆として使われたのである。」
また、わら筆を使っていた人物として僧の智伝、画家の永徳が挙げられ、わら筆の作り方について「わらを寒中の米のとぎ汁に浸して」等の簡単な記載があります。
【資料3】『日本画画材と技法の秘伝集 狩野派絵師から現代画家までに学ぶ』(小川幸治編著 日貿出版社 2008)
p.154末尾に「秘法」というコラムがあり、「藁筆の製法『画筌』 藁の芯(みごと云う)を寒中の米の白水に浸し、毎日水をかえ6~7日して取り出し、鉄槌で打ち砕き和らげて、筆の軸の處を竹の皮で包んで用いる。墨絵の岩樹葉など描くに妙である。(『日本画を描く人のための秘伝集』)」との記載があります。
【資料4】『筆』(田淵実夫著 法政大学出版局 1978 ものと人間の文化史)
「第3章 筆の種類」に「藁筆」の項があり(p64)、下記の記載がありました。
「藁を締めくくって作るが、その製法は湯浅元禎の『文会雑記』に「藁を一夜酒に浸した後、鋒となる部分を軽く叩いて造る」とある由(『文房四宝・筆』)である。」
また、口絵写真に「変り筆」として、他の筆とともに藁筆の白黒写真があります。
【資料5】『文房四宝 筆』(杉村勇造著 淡交社 1972)
【資料4】に紹介されていた文献です。
p94に「藁筆と草筆」の見出しで該当の内容が6行程度掲載されています。
【資料6】『日本随筆大成 第1期 14』(日本随筆大成編輯部編 吉川弘文館 1975)
【資料4】で紹介されていた文献、湯浅元禎の『文会雑記』が収録されています。
目次や索引がなく、該当する部分を見つけられなかったのですが、ご参考までに紹介します。
【資料7】『古事類苑 29 文学部』(吉川弘文館 1968)
和名類聚抄など、12タイトルの資料に記載された藁筆について記載されている部分を翻刻してまとめてあります。
また、国立国会図書館所蔵資料のうち、インターネットで閲覧可能なデジタル化資料に次のものがありました。
【資料8】『万物製法秘術宝典』(弘報館,弘報館編輯部編 弘報館 1913)
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/907391)
19/33コマ目に、「藁筆を製する法」の項があり、「秋新藁を取り」「糠みそへ漬け置き」等、5行程度の説明があります。
【資料9】『高等起業書 : 一名・富貴の種』(福井滝三郎,福井滝三郎 (万城) 著 森田 1893)
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/802961)
39/52コマ目に、「藁筆の製法」の項があり、「秋新藁を取り」「糠味噌の中に入れ」等、【資料7】とほぼ同内容の説明が3行程度あります。
(インターネットの最終アクセス:2013年9月27日)
- 回答プロセス
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当館蔵書検索で件名「筆」で検索し、記述のあった資料の参考文献等を更に確認した。
また、リサーチナビ(http://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/)を「藁筆」で検索し、ヒットした文献の内容を確認した。
藁筆の使用者として狩野永徳の名前が挙がっていたため、画集等を確認したが、藁筆で描いた絵に関する記載はなかった。以下、藁筆関係の記載の無かった狩野永徳関係の資料。
・『水墨美術大系 第8巻 元信・永徳』(講談社 1974)
・『日本美術全集 第17巻 狩野派と風俗画』(講談社 1992)
・『日本の美 15 カセット 永徳と宗達』(ワコー美術出版 1983)
・『日本美術絵画全集 第9巻 狩野永徳 光信』(座右宝刊行会編 集英社 1981)
・『日本の名画 2 講談社版 狩野永徳』(講談社 1977)
なお、依頼者が事前調査事項に挙げられていた資料の内、当館所蔵資料で確認できた資料は下記の通りでした。
『夜鶴庭訓抄』(藤原伊行原著 日本習字普及協会 2007)
p.25 影印と翻刻、および「わら筆、こも筆は、書き方、作り方、執筆方法がそれぞれ違います。普通の執筆法とは違っています」との訳文が記載されています。
『古写本和名類聚抄集成 第2部(十巻本系古写本の影印対照)』(馬渕和夫編著 勉誠出版 2008)
p.122上段 藁筆について、1行半程度、漢文(影印)で記されています。
翻刻が【資料7】『古事類苑 29 文学部』に収録されています。
『天理図書館善本叢書 和書之部 第34巻(類聚名義抄)』(天理図書館善本叢書和書之部編集委員会編集 天理大学出版部 1976)
p.67 藁の異字体と棒線(筆の省略形)および「禾ラフミテ」とのみ記載されています(影印)。
翻刻が【資料7】『古事類苑 29 文学部』に収録されています。
- 事前調査事項
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[質問者による調査済資料]
・「広辞苑 第4版」 p2766
・「日本語大辞典(縮刷版) 第十巻 む~ん」 p1391
*夜鶴庭訓抄 *禅竹宛世阿彌書状 *十巻本和名抄‐五 *観智院本名義抄
広辞苑と日本語大辞典を調べてみると上記の史料が載っていました。
- NDC
- 参考資料
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- 【資料1】『筆』(木村陽山著 大学堂書店 1975) | 9102675085
- 【資料2】『筆談墨史』(李家正文著 學藝書林 1973) | 9102763769
- 【資料3】『日本画画材と技法の秘伝集 狩野派絵師から現代画家までに学ぶ』(小川幸治編著 日貿出版社 2008) | 2102178363
- 【資料4】『筆』(田淵実夫著 法政大学出版局 1978 ものと人間の文化史)| 2100166381
- 【資料5】『文房四宝 筆』(杉村勇造著 淡交社 1972) | 9102675030
- 【資料6】『日本随筆大成 第1期 14』(日本随筆大成編輯部編 吉川弘文館 1975)
- 【資料7】『古事類苑 29 文学部』(吉川弘文館 1968)|9102969988
- 【資料8】『万物製法秘術宝典』(弘報館,弘報館編輯部編 弘報館 1913)
- 【資料9】『高等起業書 : 一名・富貴の種』(福井滝三郎,福井滝三郎 (万城) 著 森田 1893)
- キーワード
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- 藁筆(ワラフデ)
- ワラ筆(ワラフデ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000140223