レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年10月01日
- 登録日時
- 2023/12/27 16:25
- 更新日時
- 2023/12/27 16:25
- 管理番号
- 市川20231001-01
- 質問
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解決
Webサイトで「戸籍に赤線が引かれると非国民扱いされる」という書き込みを見たが、それを裏付ける資料を探している。
- 回答
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当該Webサイトを確認したところ、書き込みは『男たちの大和 決定版 下』(辺見じゅん/著 角川春樹事務所2004) p.276「戦争を忌避したり、もし不始末でもしでかしたら、戸籍簿に赤線が引かれると教えられた」の部分に関するものと思われる。
「戸籍」「赤」「赤線」「非国民」「徴兵逃れ」「村八分」等をキーワードとして蔵書検索や戸籍法についての調査を行うが、当館では関連する資料が確認できなかった。
千葉県立図書館に調査を依頼した結果、戸籍に使用された記号(赤線)と「非国民」との関係を示す資料は確認できなかったが、調査の過程で、戸籍に引かれた赤線が部落問題や、朝鮮人戸籍に関係することをうかがわせる資料があったとのこと。
以下は千葉県立図書館からの回答を掲載。
①『近代大阪の社会史的研究』(北崎豊二/著 法律文化社 1994 )
p.68の「壬申戸籍と被差別部落」原田伴彦/著(資料⑥の別添冊子p2-3からの引用との記載あり)に「壬申戸籍編成中に、(中略)その改制の趣旨が徹底されないで、旧来の身分をうかがわせるような記載事項が残されることになった。」「部落住民は、その身分が平民であって、平民の部に編入されているのであるが、その一部には、関係部分に甚しきは 「元穢多」などの記述が行われ、あるいは明治になってつくられた「新平民」という新しい差別賤称語が記入されるケースもあり、また 「元穢多」「新平民」などの記述を赤線で抹殺しているが、赤線抹殺があるために結果においてかえって注視をひくような措置が行われた。」との記載がある。
②『壬申戸籍と近代部落問題の発生』(上杉聰/著 大坂歴史学会/編『ヒストリア』第117号所収 1987)
壬申戸籍の記載例や、問題記載、差別的記載に関する研究が記され、地域によって戸籍の編纂にバラツキがあったことをうかがわせる記載が見られる。p.132下段に「ある箇所には、「本帳朱書ノコト」」とあり、指摘箇所がいずれの指標なのか、不明ながら、特記をうかがわせる記述がある。
③『現代世界の差別問題』(磯村英一/編 明石書店 1985)
p.42に、「金龍基氏は、差別戸籍は日帝の総督が民族の分断を助長するために作成したもので、白丁の戸籍には赤線あるいは赤点を記したと」述べている。(『衡平社運動?発展』八一四頁)※引用元文献は、日本国内の出版物でない可能性がある。
④『昭和史三部作 日本がしたことされたこと』(上坂冬子/著 中央公論社 1995)
p.440に、「当時金有成と名乗ったのは、父親が抗日の志士として捕らえられた場合、戸籍に赤線が引かれて子息は就職もままならない風潮があったからである。」とある。赤線を引くことが、単純に死亡を意味するのか、それ以外を含意するのかは判断できない。
⑤『シーボルトの絵師 埋れていた三人の画業』(金子厚男/著 青潮社 1982)
p.211に、「倉場富三郎は、(中略)自殺であった。翌月20日付の長崎市発行による戸籍記載事項証明を見ると、戸主・倉場富三郎の摘要欄は『昭和貳拾年八月貳拾六日午前四時本籍ニ於テ死亡同居者深山氏届出今日受付』と記されていて、名前の上にはまっ消の赤線が引いてある。」と、死亡した人物の戸籍に赤線が引かれたとの記述があり。単純に死亡意味するのか、それ以外を含意するかは判断できない。
⑥『壬申戸籍成立に関する研究』(新見吉治/著 巌南堂書店 1959)
p.605-620「明治七年山梨県戸籍雛形」には、死亡や除籍以外に「朱引き」する事項として「終身懲役死刑」、行方知れずのまま80歳になった人、また、種痘を受けた人の名前の上に「朱の丸点」をつける、天然痘にかかった場合は「墨の丸点」をつけるとある。
⑦『最新届書式対照戸籍記載の実務 下』(村上惺/編著 日本加除出版 1977)
昭和50年代の戸籍事務に関する実務書。p.19「ちえぶくろ(1)朱線のほどこし方」には、戸籍法施行規則附録第8条・第9条に基づき、それぞれの場合に当てはめて施すしかないとしており、「非国民」や「差別問題」を扱った文脈は確認できない。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 近畿地方 (216 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000344101