レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/03/17
- 登録日時
- 2022/02/04 00:30
- 更新日時
- 2022/02/05 14:10
- 管理番号
- 所沢富岡-2021-010
- 質問
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解決
マリー・アントワネットが「パンがなければお菓子を食べればよい」と言ったというのは、どこから出た話なのか?出典があれば知りたい。
- 回答
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マリー・アントワネットの発言を裏付ける史料は確認できませんでした。
マリー・アントワネット以外が発言したとされるものを含め、関係がある資料は以下のとおりです。
〇『その一言が歴史を変えた』 ヘルゲ・ヘッセ/著 阪急コミュニケーションズ 2010年
〇『最新王妃マリー・アントワネット美の肖像』 世界文化社 2016年
〇『マリー・アントワネットは何を食べていたのか』 ピエール=イヴ・ボルペール/著 原書房 2019年
〇『マリー・アントワネット 上』 アントニア・フレイザー/著 早川書房 2006年
〇『フランス王妃列伝』 阿河雄二郎/編 昭和堂 2017年
〇『名言の真実』 出口汪/監修 小学館 2018年
〇『名言の正体』 山口智司/著 学研 2009年
- 回答プロセス
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1.市内所蔵資料の内容を確認する
〇『その一言が歴史を変えた』 ヘルゲ・ヘッセ/著 阪急コミュニケーションズ 2010年
p.221-232 「パンがなければ、お菓子を食べればよいものを【マリー・アントワネット】」の項目あり
p.226-227 「(前略)マリー・アントワネットの反応は「パンがなければ、お菓子を食べればよいものを(S'ils n'ont pas de pain, qu'ils mangent de la brioche)」だったという。しかし、これはどうやら実際の彼女の発言ではなさそうだ。ジャン=ジャック・ルソーの『告白』のなかの記述を、誰かがマリー・アントワネットの発言として拝借したと考えるほうが真実に近いように思われる。ルソーの著書は、フランス革命時のベストセラーだった。『告白』は一七六六年から一七七〇年のあいだに書かれたが、そのなかである王女が飢えている民衆を見てこう言ったとなっている。(中略)ルソーがこのエピソードを書いたとき、マリー・アントワネットはまだ子供で、オーストリアに住んでいた。(以下略)」との記載あり
〇『最新王妃マリー・アントワネット美の肖像』 世界文化社 2016年
p.121 「宮廷で好まれたお菓子」の項目あり
「マリー・アントワネットといえば「パンがないのならケーキをお食べなさい」と言ったという逸話があまりにも有名だが、実際この台詞はその百年も前から知られており、スペインの王女マリー・テレーズによる言葉と伝えられる。彼女はルイ十四世の妃で、言葉遣いは少し違っており「パンがないならパイ皮(クルート)を食べさせなさい」だったとか。一七五一年には内親王のマダム・ソフィーが同様の発言をしたという回想録も残っており、いずれにしても王族の間でよく言われた言葉のようだ」との記載あり
△『ヴァレンヌ逃亡』 中野京子/著 文藝春秋 2014年
p.202-203 「(前略)ではこれが王妃なのか?国庫が空になっても平気でプチ・トリアノンを建て、例の「首飾り事件」の後で図々しくもサン・クルー宮を購入した「赤字夫人」なのか?「パンがなければお菓子を食べればいい」という無神経な言葉を発した「オーストリア女」なのか?ドルーエは(多くの民衆と同じく)「首飾り事件」にアントワネットが関与していたと信じていたし、「パンがなければ」の言葉が、よし彼女のものではなかったとしても、パンの代わりにジャガイモを主食にさせようとしたのは事実だから、菓子よりなお悪いと憤激していた。(以下略)」との記載あり
×『世界人名辞典 西洋編』 河部利夫/編 東京堂出版 1993年
×『岩波西洋人名辞典』 岩波書店編集部/編 岩波書店 1981年
×『王妃たちの最期の日々 下』 ジャン・セヴィリア/編 原書房 2017年
2.後日調査事項
〇『マリー・アントワネットは何を食べていたのか』 ピエール=イヴ・ボルペール/著 原書房 2019年
p.8-9 「(前略)ヴェルサイユに恨めしげな視線を送り、パン屋とおかみさんと小僧(国王一家)に助けを乞う民衆を目のあたりにして言ったとされる「パンがなければブリオッシュを食べればいいのに」という有名な言葉で議論は打ち切りということになる。だが、本当にそうだろうか?この言葉自体、彼女のものではないことをご存知だろうか?ジャン=ジャック・ルソーは、『告白』の中で、「ある身分の高い姫君」がこの言葉を口にしたと書いているが、その名前は明かしていない。(以下略)」との記載あり
〇『マリー・アントワネット 上』 アントニア・フレイザー/著 早川書房 2006年
p.290-291 「さて、マリーアントワネットが本当にあの悪名高いセリフ-「パンがないのならケーキをお食べなさい」-をいったのなら、この小麦粉戦争のさなかだろう。ところが、この時期、彼女は母親に宛てて、王族の責任についての反省を書き送っている。それは、彼女がいったとされる非常で無知な言葉とは正反対だった。(中略)実際のところ、このセリフは少なくとも百年前から知られており、当時はスペインの王女マリー・テレーズによる発言とみなされていた。彼女はルイ十四世の妃で、言葉遣いは多少違っていた。「パンがないのなら、パイ皮(クルート)を食べさせなさい」。一七三七年にはルソーもこの言葉を知っていた。一七五一年には内親王のマダム・ソフィーの言葉として広まった。(中略)子供のころにマリー・アントワネットのいるヴェルサイユで遊んだボワイネ伯爵夫人は、これをもう一人の内親王マダム・ヴィクトワールの言葉だとしている。
だが、マリー・アントワネットの罪をはらすもっとも納得のいく証言は、一八二三年に出版されたプロヴァンス伯の回想録である。彼は義姉に対してけっして勇敢な擁護者ではなかったが、パテ皮(パテ・アン・クルート)を食べなさいというセリフを聞くと、自分の先祖であるマリー・テレーズ王妃を思い出すといっているのだ。(以下略)」との記載あり
〇『フランス王妃列伝』 阿河雄二郎/編 昭和堂 2017年
p.1-18 「フランス王妃論序説」の項目あり
p.17 「真偽はともかく、「パンがなければお菓子を食べればいいでしょう」といった類の彼女の言葉がまことしやかに世間に漏れてくるのはより政治的な意図をもっていて、彼女に「国民の敵」という烙印を刻みつけようとする悪意が感じられる。実際には、彼女のそのような失言は史料の上で確認されておらず、おそらくはルソー『エミール』に出てくる表現がそのまま彼女の言葉として流されたようである」との記載あり
〇『名言の真実』 出口汪/監修 小学館 2018年
p.56-58 「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない-マリー・アントワネット」の項目あり
〇『名言の正体』 山口智司/著 学研 2009年
p.163-166 「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない(マリー・アントワネット)」の項目あり
△『王妃マリー・アントワネット』 新人物往来社/編 新人物往来社 2010年
p.56 コラム「王妃の宮廷菓子」の項目あり
「アントワネットは「パンがなければお菓子を食べればいい」と言って、国民の反感を買ったとされているが、このお菓子とは現在のブリオッシュのことだったされている。(以下略)」との記載あり
×『ロイヤルカップルが変えた世界史 上』 ジャン=フランソワ・ソルノン/著 原書房 2021年
×『偉人名言迷言事典』 真山知幸/著 笠間書院 2021年
×『世界名言大辞典』 梶山健/編著 明治書院 2018年
×『ざんねんな名言集』 真山知幸/著 彩図社 2018年
×『マリー・アントワネットの最期の日々 上・下』 エマニュエル・ド・ヴァレスキエル/著 原書房 2018年
×『麗しのマリー・アントワネット』 エレーヌ・ドラレクス/著 グラフィック社 2016年
×『マリー・アントワネット』 エレーヌ・ドラレクス/著 原書房 2015年
×『マリー・アントワネット』 安達正勝/著 中央公論新社 2014年
×『お菓子でたどるフランス史』 池上俊一/著 岩波書店 2013年
×『マリー・アントワネット38年の生涯』 新人物往来社 2008年
×『マリー・アントワネット 上・下』 シュテファン・ツヴァイク/[著] 角川書店 2007年
×『ルイ十七世の謎と母マリー・アントワネット』 デボラ・キャドベリー/著 近代文芸社 2004年
×『世界名言集』 岩波文庫編集部/編 岩波書店 2002年
×『王妃マリー・アントワネット』 エヴリーヌ・ルヴェ/著 創元社 2001年
×『カンパン夫人』 イネス・ド・ケルタンギ/著 白水社 2016年
(前出資料に引用されているもの)
△『筑摩世界文学大系 22』 ルソー/[著] 桑原武夫/訳 筑摩書房 1974年
p.138-167 「第六巻」の収録あり
p.165 「ついにわたしは、「百姓どもにはパンがございません」といわれて、「では菓子パンを食べるがよい」と答えたという、さる大公夫人の苦しまぎれの文句を思いだした。」との記載あり
△『マリー・アントワネットとマリア・テレジア秘密の往復書簡』 マリー・アントワネット/[著] マリア・テレジア/[著] 岩波書店 2002年
p.180-183 「マリー・アントワネットからマリア・テレジアへ ヴェルサイユにて、一七七五年六月二二日」に以下の記載あり
p.181 「(前略)わずか二カ月前にはあのような騒動があり(4)、パンが値上がりして不幸にもいまだに高くなったままだというのに、私たちが国民からこのように暑い歓迎を受けたのは、まさに驚くべきことで、大いなる幸せです。(中略)このように不幸のさなかにあっても私たちを暖かく迎えてくれる、国民の姿を目の当たりにするにつけ、私たちはみずからの義務をいっそう重く受け止めねばならないことを、改めて肝に銘じているところです。(以下略)」
※p.183 「(4)穀物取引に関してテュルゴが出した布告をきっかけに、多くの地方で暴動がおこった。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 人生訓.教訓 (159 9版)
- 論文集.評論集.講演集 (204 9版)
- 個人伝記 (289 9版)
- 参考資料
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- その一言が歴史を変えた ヘルゲ・ヘッセ/著 阪急コミュニケーションズ 2010.8 204 978-4-484-10109-5
- 最新王妃マリー・アントワネット美の肖像 世界文化社 2016.11 289.3 978-4-418-16240-6
- マリー・アントワネットは何を食べていたのか ピエール=イヴ・ボルペール/著 原書房 2019.6 383.835 978-4-562-05665-1
- マリー・アントワネット 上 アントニア・フレイザー/著 早川書房 2006.12 289.3 4-15-050316-8
- フランス王妃列伝 阿河雄二郎/編 昭和堂 2017.7 288.4935 978-4-8122-1632-3
- 名言の真実 出口汪/監修 小学館 2018.4 159.8 978-4-09-388599-7
- 名言の正体 山口智司/著 学研 2009.8 159.8 978-4-05-404229-2
- キーワード
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- マリー・アントワネット
- フランス王妃
- 革命
- 名言
- パン
- お菓子
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000311796