レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年09月03日
- 登録日時
- 2024/01/13 11:32
- 更新日時
- 2024/01/26 22:07
- 管理番号
- 県立長野-23-166
- 質問
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解決
江戸時代の検地における「原畑」「山畑」はあまり一般的な項目ではないが、長野県ではあったのか。また、どんな畑かわかる資料はあるか。
- 回答
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「原畑」「山畑」は近世の検地において、畑の位付けで用いられた語。
・『高遠藩の基礎的研究』長谷川正次著 国書刊行会 1985【N242/104】
元禄3年に高遠藩領内で行われた元禄検地における田畑の位付けについて書かれているp.161-164「条目と検地の実態」の項目中のp.162に「「検地条目」に記載されない悪地下々田・川原田畑・原畑・山畑などが、特殊な耕地として見立てられている」とあり、検地において畑の位付けに使われた用語であることが確認できる。
なお、「高遠検地条目」は、次の資料で紹介されている。「検地条目」中に「山畑」の文言は確認できるが、「原畑」の文言は確認できない。
・『長野県上伊那誌 2』上伊那誌編纂会編 上伊那誌刊行会 1965【N242/32/2】
p.715-722「元禄検地」の項目中p.715-718に原文の翻刻あり。
・『高遠町誌 上巻 歴史 1』高遠町誌編纂委員会編 高遠町誌刊行会 1983【N242/79/1】
p.626-647「元禄検地」の項目中p.626-629に上記の現代語訳あり。
1 「原畑」について
・北原真人「元禄前後の畑作農業について 武朝覚書(五)」1957 『伊那路』1巻10号p.11-17
元禄頃の高遠藩領田畑村(現南箕輪村)の畑作に関する論考。
冒頭で同村について、享保五年の田畑村差出帳の「伊那郡ハ山寄ニ而赤土黒ぼい交じり、石原地も有、原畑は黒ぼいにて一毛作、駒ケ嶽下故寒は江戸より強く、暑は弱し」という記述を紹介している。
ただし、この「享保五年田畑村差出帳」の翻刻が記載されている資料や、現在の所蔵先は確認できなかった。
この「黒ぼい」についての解説などは確認できなかったが、『南箕輪村誌 上巻』南箕輪村志編纂委員会編 南箕輪村誌刊行委員会 1984【N242/100/1】の自然編第3章土壌のうち、p.54「黒ボク土」の項目があり、「施肥を適切に行い合理的な管理をすれば土壌の生産性を高めることができる」とある[最終確認日 2024.01.13]。また、同書p.55「多湿黒ボク土」の項目中、黒ボク土と比較する文脈で「畑土壌の黒ボク土」との記述があり、畑の土壌であることがわかる。
2 「山畑」について
・『日本国語大辞典 第13巻』小学館国語辞典編集部編 小学館 2002【813.1/シヨ/13】
p.234「やまはた【山畑・山畠】」の項目に「山または山手にある畑。山間の畑地。やまばたけ」とあり、長野県上伊那郡の方言として、「焼畑」と記載があります。また、同書同頁「やまばたけ【山畑・山畠】」の項目では、長野県ではないが、方言として、「椿の林」「砂地で赤土が多い最下等の畑」とある。
・『上伊那文化大事典』伊沢和馬編 信濃路出版 1990【N242/109】
p.599「やきはた 焼畑」の項目に「上伊那ではヤキバタ・ヤマハタの呼び方がみられた」とある。また、焼畑の作業の流れが記されており、1年目に蕎麦、2年目に粟、3年目に大豆・小豆等をまいたこと等が書かれている。
なお、同資料の索引を参照したが「山畑」および「山畠」の項目は確認できなかった。
ただし、『長野県上伊那誌2』[前掲]p.715-718に紹介されている「信州高遠御領御検地御条目」の中に「畑之儀上〃畑朝畑茶畑下〃畑山畑焼畑砂畑其外ニも所ニゟ見計段〃立之」とあり、元禄検地において、「山畑」と「焼畑」は区別されていることが確認できる。
- 回答プロセス
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1 用語の概要を調べる
・信濃毎日新聞社「信濃毎日新聞データベース」
・ネットアドバンス社「ジャパン・ナレッジLib」
・農山漁村文化協会「ルーラル電子図書館」
・『日本歴史地名大系 20』平凡社 1979【N290.3/54】
・『角川日本地名大辞典 20』「角川日本地名大辞典」編纂委員会編 角川書店 1990【N293/18】
・『国史大辞典 5』国史大辞典編集委員会編 吉川弘文館 1985【210.03/コク/5】
p.191-192「検地」の項目。
2 「検地」に関わる資料を探す
1の結果から、関連資料を参照した。
・『地方凡例録 上巻(日本史科選書)』大石久敬著 近藤出版 1983【322.15/オヒ/1】
p.95-103「田畑名目之事」及び、p.135-136「萱野・葭野・秣場・原地・野地之事」を参照したが、「原畑」に該当する記述は確認できなかった。
・『地方凡例録 下巻(日本史科選書)』大石久敬著 近藤出版 1983【322.15/オヒ/2】
索引の「ゲン」及び「ハラ」に該当する部分を参照したが、「原畑」の項目は確認できなかった。
・『近世初期農政史研究』中村吉治著 岩波書店 1970【国立国会図書館デジタルコレクション・図書館・個人送信限定】[最終確認日 2024.01.13]
3 高遠藩の検地に関わる資料を探す
・『上伊那文化大事典』伊沢和馬編 信濃路出版 1990【N242/109】
p.93-94「元禄検地」
・『近世の信州伊那・高遠』北原真人著 近世の信州伊那高遠刊行会 1977【N242/71】
回答中で紹介した北原真人氏の論文が掲載されている資料。
・『高遠藩の基礎的研究』長谷川正次著 国書刊行会 1985【N242/104】
4 方言について
・『長野県方言辞典』馬瀬良雄編集代表 信濃毎日新聞社 2013【N880/26a】
5 古語について調べる
・『江戸時代語辞典』潁原退蔵著 角川学芸出版 2008【813.6/エタ】
なお、『国史大辞典』はデータベース「ジャパンナレッジ」で項目中の全文検索も可能だが、「原畑」「原畠」「山畑」の具体的な説明にあたる記述は確認できなかった。
・『現代俳句古語逆引き辞典』 水庭進編 博友社 1992【911.3/ミス】
・『古文書用字用語大事典』池田正一郎著 新人物往来社 1995【210.02/イシ】
・『古文書文例大字典』岩沢愿彦[ほか]編集 柏書房 1980【210.02/イヨ】
・『古文書古記録難訓用例大辞典』柏書房 1989【210.02/コモ】
・『古文書用語辞典』荒居英次編 柏書房 1983【210.02/アエ】
- 事前調査事項
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元禄3年の「筑摩郡西洗馬村検地帳写」「伊奈郡平出村検地帳写」を古書店で入手した。
- NDC
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- 中部地方 (215)
- 日本史 (210)
- 農業史.事情 (612)
- 参考資料
- キーワード
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- 元禄検地
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000344584