レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年04月09日
- 登録日時
- 2016/01/21 17:05
- 更新日時
- 2016/03/11 17:36
- 管理番号
- 埼熊-2015-094
- 質問
-
解決
荻原重秀による「銀を退蔵、または規定の相場で取引しない者があれば自ら訴えでよとすすめ、訴え出た者は褒美を取らせ、その罪を許す」という言葉の出典を知りたい。
- 回答
-
荻原重秀が質問内容に該当する発言をしていたことが確認できた。また、該当すると思われる布告も『御触書寛保集成』に見つかったが、それが荻原重秀による布告であるかは確認できなかった。
記述のあった次の資料を紹介した。
『御触書寛保集成』(高柳真三[ほか]編 岩波書店 1976)
p895「元禄十四巳年八月 覚」(1769)が該当すると思われるが、重秀によるものかは不明。
「近年銀子賣買段々高直に成候、銀子貯置候者有之候(中略)、相場之通拂可申候、若買置いたし候者於有之(略)、訴人に出へし、縦同類たりという共、其科をゆるし、御褒美可被下之、且又あたをなさヽるようニ可申付候、隠置、脇よりあらはるヽにおゐて(略)當人は不及申、名主、五人組迄爲曲事者也、 八月」
『日本の歴史 20』(児玉幸多〔ほか〕編集 小学館 1981)
p134「重秀は銀を退蔵したり、規定の相場で取引しない者があれば訴えでることをすすめ、「万一同類であっても、訴えでた者はその罪をゆるし、そのうえで褒美をとらせ、かつ訴えられたものがしかえしをしないよう十分保護する」とまで触れをだして(後略)」との記述あり。本巻の執筆者は大石慎三郎氏。典拠史料の記述なし。
- 回答プロセス
-
1 御触書寛保集成を調査する。
『御触書寛保集成』(前掲資料)
2 《Googleブックス》(https://books.google.co.jp/ Google 2015/04/05最終確認)を〈重秀 & 銀 & 退蔵 & 相場〉で検索した結果次の資料に記述あり。
『日本の歴史 20』(前掲資料)
『大岡越前守忠相』(大石慎三郎著 岩波書店 1974)(上記『日本の歴史 20』と同著者) p134-135に上記とほぼ同内容の記述あり。
典拠史料の明示はないが、あとがき(p213)に使用史料の解題あり。このうち『享保撰要類集』は、「この法は誰と誰との発議で、誰々の案文で、また誰の責任で触れだされたかという、法と政治家個人のかかわりを、かなり明確に知ることができる。」との記述がある。
3 享保撰要類集の内容確認をする。
『撰要類集細目 1 享保撰要類集』(国立国会図書館参考書誌部編 国立国会図書館 1967)
元禄の規程の掲載はなし。
《国会図デジタルコレクション》(http://dl.ndl.go.jp/ 国会図 2015/04/05最終確認)
翻刻されている「享保撰要類集」は公開されていない。
4 『東京市史稿』を調査する。
『東京市史稿 産業篇 9』(東京都編 東京都 1964)
p479-480「銀貨時価売出奨励」(元禄14年8月19日の記事)に、『御触書寛保集成』と同じ記述あり。出典に「撰要永久録 大日本貨幣史 御触書寛保集成 徳川十五代史 常憲院殿御実紀」とあり。
5 『東京市史稿』の出典を確認する。
『徳川十五代史 3』(内藤耻叟著 新人物往来社 1985)
p1386(元禄14年8月)「二十八日、曽根五郎兵衛長賢、禁裏附になり、此の月令す。」として質問に該当すると思われる規程あり。
『国史大系 〔43〕 徳川実紀』(板勝美編輯 吉川弘文館 1991)
p449「常憲院殿御実紀 巻四十四 元禄十四年八月」に「廿九日(中略)この月令せらるヽは。近年銀價騰貴に及ぶによて。貯蓄せしものあらば。時價にしたがひ賣出すべし。もしひそかに買貯ふるものあらばうたへ出べし。たとひ黨與たりといふとも。その科ゆるし褒賜あるべし。(後略)」とあり。
6 《国会図サーチ》(http://iss.ndl.go.jp/ 国会図 2015/04/05最終確認)を〈荻原重秀〉で検索する。
『勘定奉行荻原重秀の生涯』(村井淳志著 集英社 2007)
p105-137「第五章 金銀改鋳」の項、p131-134「退蔵との闘い」には質問に該当する記述なし。p134-137「偽造との闘い、貿易決済問題」に彦次郎(重秀)の布告として掲載されているのは、通貨偽造に関する記述のため該当せず。
以下の資料には記述なし。
祖田浩一著「歴史を変えた英雄の独創力 政治家・経済人 政治家篇(江戸・近代) 萩原重秀」(『歴史読本 1998年3月号 43-3』p67 新人物往来社 1998.3)
秋月しのぶ著「日本史356日 7月9日 萩原重秀の貨幣改鋳」(『歴史と旅 1984年1月臨時増刊 11-2』p269-269 秋田書店 1984.1)
7 貨幣史から調査する。以下の資料には記述なし。
『江戸の貨幣物語』(三上隆三著 東洋経済新報社 1996)
『中近世日本貨幣流通史』(浦長瀬隆著 勁草書房 2001)
『貨幣の日本史』(東野治之著 朝日新聞社 1997)
『図説日本貨幣史』(日本学術協会編 展望社 1990)
『江戸の銭と庶民の暮らし』(吉原健一郎著 同成社 2003)
『日本の貨幣の歴史』(滝沢武雄著 吉川弘文館 1996)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 個人伝記 (289 9版)
- 法制史 (322 9版)
- 参考資料
-
- 『御触書寛保集成』(高柳真三[ほか]編 岩波書店 1976)
- 『日本の歴史 20』(児玉幸多[ほか]編集 小学館 1981)
- キーワード
-
- 荻原 重秀(オギハラ シゲヒデ)
- 御触書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000187317